城北法律事務所 ニュース No.57(2008.1.1)


Notice: Array to string conversion in /home/users/web03/1/1/0150011/www.jyohoku-law.com/wp/wp-content/themes/jyohoku-law.com/functions.php on line 75
Array

戦争被害は終わっていません
~中国遺棄化学兵器被害者訴訟~

弁護士 平松真二郎

2004年7月23日、敦化市郊外の蓮花泡馬鹿溝林場の小川で遊んでいた少年二人が毒ガス弾から漏れ出した毒ガス液に触れ、皮膚のびらん、炎症などの傷害を受けました。

同様の被害は、最近でも、チチハル市など中国各地で多数起きています。

この毒ガス弾は旧日本軍が敗戦時に中国国内に遺棄してきたものです。敦化市やチチハル市での被害に際して、旧日本軍の毒ガス兵器によって被害が発生したことは日本政府も認めているところです。

戦後すぐから90年代までの被害者を中心に既に日本で裁判が行われてきましたが、日本政府に直接の救済を命じた判決はまだありません。

被害者たちへの救済は、いっこうに進んでいないのが現状です。

毒ガスによる被害には、まだまだ不明な点が多く残されています。急性の症状(皮膚のびらん、炎症、免疫力低下等)以外にどのような後遺障害があるのかもよく分かっていません。

化学兵器は、敵を殺傷し、戦闘力を減殺する兵器ですから、どのような後遺症が残されるのか、その治療方法についての研究は公表されにくい性質があります。

昨年夏、中国吉林省敦化市へ行ってきました。被害に遭った少年に会い、被害の状況、現在の生活、将来への思いなど聞いてきました。

そこでは、将来に対する不安、どのような後遺障害が生じるのかに対する不安が大きいことを感じました。特に、中国では健康保険制度がなく、医療費は全額自己負担ですので、風邪ひとつとっても、免疫力が低下している被害者にとっては重い負担となってきます。

弁護団では、裁判外での救済を求めて活動してきましたが、本年1月に日本政府を相手に被害回復を求めて提訴することになりました。少年たちの未来を勝ち取る闘いです。ご支援いただきますようお願い致します。


黒目川と鮎

弁護士 上野格

あるお客さんから黒目川の鮎の話を聞きました。私が以前、朝霞市の黒目川の近くに住んでいたことを話すと、「あの川では、今は鮎が釣れますよ。黒目川はこの頃はずいぶんきれいになったのです」と教えていただきました。

黒目川は、東久留米市に源流があり、新座市、朝霞市を経て新河岸川・荒川に合流する川です。東武東上線で池袋方面へ向かうときに朝霞台駅を出るとすぐに両側の視界が開け、黒目川を見ることができます。私は2000年まで朝霞市に居ましたが、その後は岸辺の桜を電車からみるくらいでした。

そんなにきれいだったかなと半信半疑で、休日に家族で遊びに行きました。

行ってみると本当にきれいな流れになっていて、子どもらも大喜びでした。鮎かどうかわかりませんが、魚影もあちこちに見えました。感心して見ていると、岸辺にゴミがほとんど見えないことに気づきました。きっと地域の皆さんが大変な努力をされて、きれいな黒目川を取り戻したのでしょう。

思えば、あちこちの川で鮭や鮎の稚魚を放流していると耳にしたことがありました。その時は「汚い川に帰ってこさせるのも可哀想な気がするな」などと考えたのですが、きっと川もきれいにしていこうという努力とセットの取り組みに違いないことに思い至りました。お恥ずかしい限りです。

今年の春には外国で澄んだ海に出会い、昔は日本中の海がこんなにきれいだったに違いないと残念に思いました。私も含め日本人はずいぶんと海や川を汚してしまったのです。

しかし黒目川を見ていると美しい自然を取り戻すことは不可能ではないようです。これからは近所の川の清掃活動や稚魚の放流に参加してみようと思いました。川に魚が戻ったのを見ると、なんだかとてもうれしく感じられたのです。


不当解雇事件を労働審判で解決
泣き寝入りしない強さ

弁護士 津田二郎

昨年、実質的店長として勤務していたパチンコ店に解雇された青年の事件を担当した。

彼は、忠誠心も高く、職場環境にも意を用いる職務熱心な正社員だったが、会社は、売上金の紛失について、不当にも彼が盗んだとの濡れ衣を着せ解雇した。

彼は、泣き寝入りすることなく、たたかう仲間を求めて首都圏青年ユニオンを探し当て加入し、団体交渉を行った。ユニオンは、その状況かららちがあかないと判断し、事件を笹山尚人弁護士に相談。笹山弁護士は私に応援を依頼し、私たちは短期で解決を図る方針の下、労働審判を申し立てることに。

労働審判では、彼の不当な解雇の撤回と謝罪、合意退職、金銭による賠償を求めた。彼の事実に基づく、熱意のこもった思いが審判員らを動かし、私たちの要求をほぼ全面的に認めた形で1回で調停が成立。

労働審判は、短期間で紛争解決を図る制度として近年導入された制度。文字通り短期間で不当解雇事件を解決できたのは、この制度を適切に活用したことと、なによりも彼の泣き寝入りしない強い気持ちだった。彼の気持ちに添った解決ができたことが私としても嬉しく、また彼の力になれたことが誇らしかった。