城北法律事務所 ニュース No.59(2009.1.1)


Notice: Array to string conversion in /home/users/web03/1/1/0150011/www.jyohoku-law.com/wp/wp-content/themes/jyohoku-law.com/functions.php on line 75
Array

法律相談

「自宅を失わないで債務の整理はできますか?」

Q 私は、自宅兼店舗で、個人で商売をしています。自宅のローン以外に、運転資金のための借入が約800万円ありますが、昨今の不況で売上げが落ち込み、返済が大変きつい状況です。

いよいよとなれば自己破産をするしかないかと思いますが、自宅を失わないで債務を整理する方法はないでしょうか。

また、父が亡くなって2年たった今になって、債権者から父の借金を支払えと言ってきました。相続放棄期間も過ぎており、父の借金まで支払わなければならないのでしょうか。

「債務整理には3つの方法があります」

弁護士 深山麻美子

A 1、債務整理には、大きく(1)任意整理、(2)個人再生手続、(3)自己破産の3つの方法があります。

自己破産も考えているとのことですが、利息制限法による再計算をすると、負債額が減額する可能性がありますし、更には過払いになっている場合もあります。

ですから債権者の請求額をそのまま鵜呑みにしないで、まずは債権調査を行い、正確な負債額を算出し、その上で、どういう方法をとるかを検討するのがよいと思います。

2、再計算で正確な負債残額を算出したら、(1)の任意整理の可能性をさぐります。東京三弁護士会統一基準では、それまでの遅延損害金や将来利息は付さない方向での分割案を提示し、各債権者と和解交渉を行うとなっています。遅延損害金や将来利息を付さないことにより、和解契約に従ってきちんと支払っていけば、早期に確実に返済を完了できるという大きなメリットがあります。ただ、あくまで債権者の同意が必要ですので、非協力的債権者がいたり、3年以上の長期分割案には債権者がなかなか同意しないため、和解がスムーズに進まないという問題点はあります。

3、(2)の個人再生手続は、住宅ローンや有担保分以外の負債については、一定額を原則3年(最長5年)で分割弁済し、残債務については免除を受けるというものです。住宅ローンは減額されませんが、支払金額や期間のリスケジュールの可能性があります。

個人再生手続には、小規模個人再生と、給与所得者等再生があり、要件が異なりますが、いずれにせよ分割金を支払い続けられる将来収入を得る見込があること、住宅ローン以外の負債が5000万円を超えないことが必要です。

個人再生手続の最大のメリットは、自己破産と違って、住宅ローン特則によって住宅を残す可能性がある点です。ただ、住宅ローン以外の抵当権が設定されている場合、同特則の適用は受けられません。なお、ご質問では自宅兼店舗ということですが、建物全体の床面積の2分の1以上が居住用であれば、住宅ローンの特則の適用が受けられます。

(3)個人再生手続が利用できない場合は、自己破産手続を考慮することになります。自己破産の場合、すべての財産は原則として換価処分しなければなりませんので、自宅を残すことは困難です。

相続放棄の手続で解決を

お父さんの負債ですが、すでに消滅時効にかかっている可能性があります(債権者が会社の場合やお父さんが商人だった場合は5年、その他は原則10年)。また、相続する財産や負債がないと信じて限定承認や放棄の手続きをとらず、債権者から請求で初めてお父さんに負債があったことを知ったような場合、知ったときから3か月以内に相続放棄の手続きを行なえば、相続放棄が認められる可能性がありますので、早急に家庭裁判所に対して手続きを行なって下さい。