城北法律事務所 ニュース No.66(2012.8.1)

民法改正 親権停止・離婚時の取り決め

弁護士 茨木智子

昨今、増加している児童虐待の防止を図り、児童の権利利益を保護するために民法等の一部が改正されました。(平成23年6月公布、平成24年4月施行)

主な改正点は、①親権制度の見直し、②離婚における子の養育費や面会交流に関する取り扱い、③未成年後見人制度の見直し、④子の監護・教育の権利義務が「子の利益のためであること」の明文化などです。

[児童を保護する必要性]
親などの虐待により児童が死傷する事件がよく取り上げられますが、児童虐待には、身体的虐待のほかに、性的虐待、ネグレクト(育児放棄)、心理的虐待などが含まれます。平成12年公布施行の児童虐待防止法により、これらの虐待を禁止し、早期に発見して児童を保護する措置が講じられてきました。

[親権の壁]
家庭内での虐待から児童を保護しようとするとき、『親権』が壁になることがありました。例えば、親権者が児童の治療を拒む(医療ネグレクト)などです。親権者の同意がないため、児童は必要な治療を受けることができません。

このように不当な親権の行使を制限する方法は、これまで親権喪失制度しかなく、期限を設けずに親権全部を喪失させるため、要件が厳しく、また、申立が躊躇されるといった問題点が指摘されていました。

[親権停止・親権喪失制度]
今回新設された親権停止制度(民法834条の2)により、「親権の行使が困難又は不適当であることにより子の利益を害するとき」に、2年以内の範囲で親権停止の申立ができるようになりました。

また、親権喪失の要件は、民法834条が改正で明確化され「虐待又は悪意の遺棄があるとき」その他親権の行使により「子の利益を『著しく』害するとき」となりました。

これらの申立ができるのは、子本人、子の親族、検察官、児童相談所所長、未成年後見人、未成年後見監督人です。

今回の改正により、虐待された子本人も申立できることになりましたが、子を守るためには、子の親族や児童相談所が適切に対応することが求められています。

[面会交流と養育費の取り決め]
また、今回の改正で、離婚の際に定める必要な事項の例示として「面会交流」「養育費」が加えられました。役所におかれている『離婚届』にもこれらの取り決めをしたかどうかをチェックする欄が設けられています。

決めないと離婚ができないというような強制力はありませんが、離婚をしようとする当事者間での取り決めを促し、自覚を求める効果が期待されます。 

親としてすべきこと、してはならないことの判断は、子が健やかに成長できるよう『子の利益』を基準として考えなければなりません。


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