城北法律事務所 ニュース No.65(2012.1.1)
目次
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- 1 薬害イレッサ訴訟 高裁で不当判決
- 2 B型肝炎訴訟 和解手続が始まりました
- 3 ライブドア集団訴訟 東京高裁で逆転全面勝訴
- 4 薬害イレッサ事件を通して がん患者が大切にされる医療を願って
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- 1 弁護士登録30年 まだまだ大変です
- 2 ラリパレに参加して 反原発の思いあらたに
- 3 原発再稼働の何が問題か 巨大地震とストレステスト
- 4 はじめての2つ MRI検査とハワイ
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- 1 本場中国の味をご賞味ください
- 2 大きくなったら
- 3 自由法曹団記念映像を制作して
- 4 弁護士との信頼関係
- 5 1日1日を大事に
- 6 弁護士岡村香里退所挨拶 お世話になりました
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- 1 離婚問題〜親権者の争いがある場合
- 2 明渡し問題賃借人が賃料を払ってくれない、どうしたら?
- 3 借地での建替承諾料を払えば可能です
- 4 ある少年事件から失敗してもやり直すことの大切さ
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- 1 さよなら原発東京北部ラリー&パレード原発をなくそう
- 2 原発事故と自然エネルギー
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- 1 2011年9月16日の事務所セミナーから法律相談 ◆ 相続
- 2 2011年7月12日の事務所セミナーから 法律相談 ◆ 債権回収
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- 1 震災ボランティアはまだまだ必要です〜石巻・女川の状況〜
- 2 「流れを変えよう 9.11と3.11 そして—」自由法曹団が90周年
- 3 事務局長退任 飯田良哉
- 4 事務局長就任 宮脇秀行
- 5 署名協力のお礼
さよなら原発東京北部ラリー&パレード
原発をなくそう
弁護士 田村優介
昨年11月27日、文京区後楽園で「さよなら原発 東京北部ラリー&パレード」を開催しました。
この催しは、約6万人以上が参加した9月19日の「さようなら原発1000万人アクション」に呼応して、城北法律事務所と東京北部5区(豊島、板橋、練馬、文京、北)の労働組合、女性団体、市民団体など東京北部にゆかりのあるメンバーを中心に実行委員会を結成して開いたものです。
エッセイストの海老名香葉子さん、ボクシング元日本ウエルター級チャンピオンの小林秀一さん、俳優の宝田明さん、漫画家のちばてつやさん、菊池弁護士、北部春闘共闘会議議長の広瀬さん、北部労協議長の小泉さんを呼びかけ人として、賛同人には1000万人アクションの落合恵子さん、鎌田慧さん、高畑勲さんが並びました。
オープニングは荒馬座の勇壮な太鼓ではじまり、呼びかけ人を代表して小林さんが「原発は『安全、クリーンなエネルギー、コストが安い』と言われてきたが、いったん事故が起これば人が住めなくなるし、事故処理にとてつもないお金が掛る。いまこそ原発をなくすべき」と挨拶。佐藤栄佐久前福島県知事も駆けつけ、「経産省が安全神話を振りまいて原発を推進した。プルサーマルやもんじゅをやめさせよう」、福島農民連亀田会長は「収穫の秋なのに今年は充実感を味わうことができません。私たち農民に責任はありません」、練馬区の2児の母親宮崎さん、日本原水禁練馬の横山さん、郡山から避難してきた母親、ピースボート代表で脱原発世界会議(1月14、15日)実行委員長の吉岡さんらが次々と原発廃止を訴えました。
会場では大山弁護士が「ガンジー大山」としてバルーンアート教室を開催。風船もたくさん用意し、子供たちにとても好評でした。
集会は、既存の原発の計画的廃炉と新規計画の中止、高速増殖炉「もんじゅ」廃炉、青森県六ケ所村の使用済み核燃料再処理工場建設停止、自然エネルギー政策への転換を求める決議を採択しました。
上野の不忍池までのパレードは、「放射能から子どもを守ろう」のプラカードやうちわに風船、ペットボトルを再利用したマラカス、荒馬座の太鼓、トランペット、小沢弁護士が本パレードのために考案した「げげげげ原子力、ほほほほ放射能いらない」といったリズミカルなコールもあり、大変にぎやかで楽しいものとなりました。沿道の反応もとてもよかったと思います。
当日の様子は東京新聞などで報道されただけでなく、ユーストリーム等でインターネット中継されたことも、これからの新しい取り組み方として注目に値すると思います。
今、原発をなくそうという運動は本当に活発になっています。ひき続き運動を進め、原発に頼らない社会を作るべく、がんばりたいと思います。
原発事故と自然エネルギー
弁護士 小沢年樹
【人類のエネルギー利用と原子力発電の特異性】
中沢新一氏の「日本の大転換」(集英社新書)によれば、原子力発電が利用する核分裂エネルギーは、地球上の生態系領域には属さない、太陽の「内部」レベルの核融合エネルギーと同列にある現象です。これに対して、これまで人類が利用してきた農工業など産業活動のエネルギーの根源は、太陽表面から「外部」に向かって放射され、大気圏を通して地球に到達した光と熱のエネルギーです。太陽の光と熱は、植物の光合成によって農業の対象である動植物の食物連鎖の出発点となり、また近代産業を支えてきたエネルギー源である石油等の化石燃料は、太古に太陽光のもとで生活していた動植物の名残です。
つまり原子力発電は、これまで人類が利用してきたエネルギーの諸形態−究極的には太陽光エネルギー−とは本質的に異なる次元のエネルギーだといえます。
【原子力発電の致命的欠陥】
ところが、人類にとって異次元のエネルギーを利用する原子力発電は、どんな安全技術を採用しても、短い半減期で大量の放射線を出すか、長期間(種類によっては数十万年)の半減期で放射線を出し続ける放射性物質を核分裂反応によって必然的に生成します。
今回の事故は、この放射性物質が無秩序に漏れ出すという最悪のケースですが、事故がなくても通常運転に伴って発生する大量の放射性物質は、いかなる処理をしても消滅することはなく、放射線を出し続けながら隔離保存するしかありません。そして、どれだけ少量の放射線であっても、人体にあたればDNAを傷つけるなどの影響を及ぼします。
【脱原発−自然エネルギーへの転換の意味】
いま、原発事故によって自然エネルギーが急速に注目されていますが、たとえば太陽光発電は、太陽光エネルギーを植物の光合成(光→電気の転換を伴う)のように直接利用し、風力・水力発電は、太陽光エネルギーによって地球の大気圏に発生する気象現象を利用する技術です。
多くの人が求めはじめた「脱原発」や自然エネルギーへの転換とは、人類には制御できない太陽「内部」レベルの物理現象である核反応を利用する冒険をやめ、地球生態系と人類の活動の根底にある太陽「外部」エネルギーへの依存に立ち返ることではないか、と思われます。そうした課題が、現在を生きる私たちと未来の子どもたちのために投げかけられているのではないでしょうか。