城北法律事務所 ニュース No.69(2014.1.1)

目次

ホワイト弁護団設立について

弁護士 大川原 栄

昨年9月下旬、当事務所に所属する弁護士を中心として「アンチ(脱)・ブラック」=ブラック企業からの脱却を図りたいと考える企業の経営改善を支援するための弁護団(ホワイト弁護団)を設立しました。

労働基準法等の法律を守らないブラック企業については、昨年、厚生労働省がブラック企業の実態調査に乗り出し、また、テレビでも労働基準監督官の業務に関するドラマが放映されるに至り、大きな社会問題となっています。

ブラック企業を故意にあるいは意図的に運営している経営者が法的に厳罰に処せられ、また、民事上の責任を負わされるべきことは当然ですが、ブラック的経営を法的知識が乏しいことからそれを行っている企業が少なくないという実態もあります。ホワイト弁護団は、そのような企業について単にその会社を訴えるだけでは逆効果の可能性もあるということから、ブラック企業から何とか脱却したいという経営者がいるようであれば、そのような会社の経営改善支援を行うという目的で設立したものです。

今のところ経営改善支援の要請はさほど多くありませんが、労基法等の法律を遵守する合理的経営こそが企業の中長期的発展をもたらすことは疑いのない事実であり、また、現在の混沌とした時代にあってはなおさら、法に反する「ずるい卑怯な経営」ではなく法を遵守した「信頼に基づく正義の経営」こそが光り輝くと強く確信しております。


ブラック企業対策に取り組んでいます

弁護士 田村優介

近年ブラック企業問題が急激に日本の社会問題として浮上しています。ブラック企業とは違法、過酷な労働を強いる企業であり、各政党も対策を掲げ、国会で議論されています。

一大社会問題といえるブラック企業問題に対応するため、2013年7月、弁護士有志により、ブラック企業の被害者を救済する弁護団が結成されました。弁護団は、被害者の権利を実現すると同時に、それらの被害を体系的に調査し、「社会問題」として日本社会に提起していくことを目指して、個別労働者救済はもちろん、研究、情報発信、政策提言等を行っています。

当事務所からも大山、種田、田村の各弁護士が弁護団に加入し、個別の事件において労働者の救済にあたるとともに、ブラック企業対策に取り組んでいます。

このたび弁護団から書籍「働く人のためのブラック企業被害対策Q&A」を発売し、私も一部執筆しました。一般の方にわかりやすくブラック企業問題とその解決策を解説していますので、よろしくお願いします。


婚外子相続分が平等に
不合理な差別的扱いの是正を求めて

弁護士 大八木葉子

民法には、法律上の結婚をしていない親から生まれた子(嫡出でない子)の相続分が法律上の結婚をした親から生まれた子(嫡出である子)の相続分の2分の1とするという規定がありました。法律上の結婚をしていない親から生まれた子としては、親が法律上の結婚をしているかどうかという自分では選択できない理由で不利益を受けていたのです。

しかし、皆様もニュース等でお聞きになっているとおり、この規定について、最高裁大法廷は、昨年9月4日、全員一致で、法の下の平等を保障した憲法に違反すると判断しました。結婚や家族のあり方に対する価値観が多様化したこと、現在、婚外子差別を設けている国は欧米諸国にないこと、国連の法改正勧告が繰り返されてきたこと等を踏まえ、子の方で選択・修正できない事柄(父母が法律上の婚姻関係にあるかどうか)を理由に不利益を及ぼすことは許されないとしたのです。

そして、昨年12月5日、上記の規定を削除する民法改正がなされました。その結果、法律上の結婚をしていない親から生まれた子と法律上の結婚をした親から生まれた子のそれぞれの相続分は等しくなりました。

もっとも、出生届に嫡出子かどうかを記載するように義務づけた戸籍法の規定を削除することは否決されてしまいました。また、今後も、不合理な差別的扱いの是正を求めていきましょう。


安倍「教育再生」の狙い
~もう一方での「戦争ができる国」づくり

弁護士 平松真二

安倍政権は、経済再生と並んで「教育再生」を重点政策に掲げ、そこでは、教職員の管理統制の強化、「教育行政」および「教育」に対する政治介入の合法化、教育内容の国家統制の強化が目指され、その実現のため、教員免許法等の見直し、教科書検定基準の見直し、さらに教科書法の制定などを進めていこうとしています。

検定基準の見直しでは、「政府見解や確定した判例があるものについてはそれらを取り上げさせる」としていますので、教科書がときの政府の見解を注入する道具として利用されることになると言わざるを得ません。また、教免法等については、1~2年程度の実務経験後、本採用となった際に「免許」を付与することが計画されています。採用権限ある者の意に反する人物は不採用となるでしょうから、「教育行政」の意に沿う人物だけが教員「免許」取得を認められる可能性が高いといってよいでしょう。さらに教員の任用者である教育長が首長による政治任命となりますので、「教育行政」は「教育」に奉仕するものではなく、首長(政治)に奉仕するものに変質することが予想されます。

これらは、いずれも「教育」を子どもの成長発達のための人格的営為ではなく、国民統制の手段として利用した戦前の教育を彷彿とさせるものです。すなわち、安倍「教育再生」の狙いは、物言わぬ、権力に従順な国民の育成、それは「戦争の担い手」の育成に他ならないのです。担い手がいなくては戦争もできないでしょう。安倍内閣は、「戦争ができる国」に向けた準備を着々と進めているのです。