城北法律事務所 ニュース No.70(2014.8.1)


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目次

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(2014年1月30日 事務所セミナーから)
ハラスメント対策と従業員の心の健康管理
始末書・反省書の作成を命じられたら

弁護士 松田耕平

「ハラスメント」とは「嫌がらせ、いじめ」のことをいいます。「セクハラ(セクシャル・ハラスメント)」とは性的な嫌がらせやいじめ、「パワハラ(パワー・ハラスメント)」とは、上司・部下など職場での力関係などを理由とした嫌がらせやいじめのことです。これらの言葉はすでに社会的に認知されて久しいですが、どのような行為が「セクハラ」「パワハラ」にあたるのかをはっきり理解していると言える方はそう多くはないと思われます。先日のセミナーでは、嶋田弁護士とともに裁判となった事例をもとにQ&A方式で解説しましたが、そこで取り上げた設問をご紹介します。

設問①「部下が上司の指示に従わなかった。上司は部下に指示違反を理由に反省書を提出させることはできるか」、設問②「部下が反省書の提出を拒んだ。上司は業務命令(反省書の提出)違反を理由に部下を(懲戒)処分することができるか」。

業務に関連して反省書や始末書などを作成することは、比較的日常的に行われていると思います。設問①では、上司が反省書の作成・提出を命じることが業務上許されるかどうかが問題となります。回答は、「作成を命じることはできるが、部下が作成に応じない場合、強制的に提出させることはできない」となります。つまり、部下は、反省書の提出を拒むことが可能です。

「でも、拒んだ場合、そのことを理由に上司から処分を受けないか心配」と考える方もいると思います。これが設問②ですが、「反省書の作成拒否を理由に処分をすることは許されない」が回答となります。また、始末書や反省書を作成したこと、あるいは作成しなかったことそれ自体を人事考課の資料とすることもできません。したがって、事業者・上司は、このことを踏まえて労働者を指導する必要がありますし、他方、労働者・部下は始末書や反省書の作成に納得がいかないような場合には、作成するかどうかはひとまず留保して、労働基準監督署や法律事務所などに相談されるのが良いでしょう。


(2014年2月3日 事務所セミナーから)
成年後見活用法!
―皆様の老後の財産管理に安心を―

弁護士 舩尾 遼

65歳以上の高齢者の総人口に占める割合は約25%、実に4人に1人が高齢者となり、誰もが長い「老後」を過ごす可能性のある時代になりました。長く務めてきた仕事を引退し、悠々自適な毎日を過ごしたり、新たな職業に就かれたりと様々な選択肢があるでしょう。

もっとも、長く生きることによって認知症等により判断能力が不充分になってしまうリスクは誰にでもあります。そんな時のために、財産を自分の代わりに管理してくれる人を選任するための「成年後見」という制度があります。

「成年後見」には①法定後見と②任意後見の2つの制度があります。法定後見制度は、既に判断能力が低下している方に援助者をつける制度、任意後見は、判断能力ある方が将来に備える制度です。

どちらも、判断能力が不充分になった方の財産管理のための制度ですが、任意後見は、ご自身で財産を管理する人を選任できる点に特徴があります。どちらの制度もご自身や親族が自分で行うことも可能ですが、誰を財産管理をする人にするか、また財産管理をする人がやってはいけないことは何か、報酬はどうしたらいいかなどで困る方も多いように見受けられます。

城北法律事務所では成年後見の申立から成年後見人選任後までご相談をお受けすることができます。長い「老後」の暮らしを支える財産の安全・安心な管理のために、事前に法律家にご相談いただくことをお勧めします。


住宅のトラブル
敷金は取り戻せます

弁護士 小薗江博之

問 マンションの1室を借りていましたが、契約時に説明のなかった特約の適用で、途中解約の場合2か月無条件償却され、入居時に預けた敷金を返還してくれません。さらに文書による解約通知日から別に違約金賃料1か月分、クロス貼替・クリーニングに必要と言って原状回復費用を請求されました。

答 都内に数か所大型マンションを所有する家主が、敷金を返還しないという相談が何回か来ています。

まず契約時に説明のなかった特約は、入居者に不利な条項を説明しなかったのであれば、消費者契約法により無効となる可能性があります(本文償却1か月・違約金なし→特約償却2か月・違約金賃料1か月)。

次に敷金は、住宅を借りて住むときに、賃料その他賃貸借契約上の債務担保・トラブルの保証をするために入居者が家主に退去のその日まで預けておく金銭です。したがって、仮に2か月分を償却するとしても、原状回復費用に充ててなお不足の時に請求できるものです。

賃借人が原状回復義務を負うのは、「居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損」(国交省ガイドライン)であり、いわゆる経年変化、通常の使用による損耗などの修繕費用は、賃料に含まれるものとして、原状回復義務を負いません。

クロスが日焼けして変色しても、家主が修繕義務を負います。反対にタバコの焼け焦げは、賃借人が原状回復義務を負います。

迷ったら法律事務所や消費者センターにご相談ください。