城北法律事務所 ニュース No.70(2014.8.1)
目次
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- 1 (2014年1月30日 事務所セミナーから)ハラスメント対策と従業員の心の健康管理始末書・反省書の作成を命じられたら
- 2 (2014年2月3日 事務所セミナーから)成年後見活用法!―皆様の老後の財産管理に安心を―
- 3 住宅のトラブル敷金は取り戻せます
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- 1 残業代ゼロ問題「残業代ゼロ」法案の導入に反対します
- 2 子ども・子育て支援新制度「質」の問題が置き去りに
- 3 派遣法派遣法改悪は正社員削減法案
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- 1 立憲主義と法の支配閣議決定による解釈改憲は違憲無効である
- 2 集団的自衛権のキケンな内容集団的自衛権を行使させない取組みを
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- 1 国民投票法国民に知らせずに決めさせる法
- 2 憲法ってこんなにステキなルール世界に誇れる日本国憲法
- Page 6
- 1 アスベスト被害建設現場でのアスベスト被害の救済を
- 2 すべてのB型・C型肝炎患者救済をめざして飛躍的に運動が進んでいます
- 3 大飯原発運転差し止め判決司法は生きていた!
- 4 ノーモアミナマタ第二次訴訟いよいよ東京でも提訴へ
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- 1 近況報告耳をすませば
- 2 ホワイト弁護団「ホワイト認証」制度を開始します!
- 3 薬害根絶デー薬害の根絶に向けてさらなる活動を
- 4 谺<こだま>雄二さんの遺志を継いで悲惨な人権侵害を起こさないように
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- 1 新しい所員を紹介します
- 2 新しい所員を紹介します
国民投票法
国民に知らせずに決めさせる法
弁護士 種田和敏
安倍政権が憲法改正に突き進むなか、憲法改正手続きを確定させる国民投票法改正案が2014年6月13日の国会で可決、成立しました。改正法では、改憲の是非を決める国民投票の投票年齢を20歳以上とし、施行4年後に18歳以上へ自動的に引き下げるとしています。また、公務員が知人らに改憲の賛否を働きかける勧誘運動について、政治的中立性が求められる裁判官や検察官、警察官などを除き認めることとしています。
他方、組織的運動の規制については、官公労の護憲運動を懸念する自民党の主張を踏まえ、付則で改正法施行後、速やかに必要な法制上の措置を講じる旨の検討条項を明記しています。
安倍政権は憲法改正を目指していますが、憲法改正の手続きを定める国民投票法の問題点について、改めて確認してみましょう。
国民投票法の問題点を端的にいうと、「国民に知らせずに決めさせる法」だということです。すなわち、まず、国民投票における過半数が、賛成投票数と反対投票数の合計数を投票総数とし、無効票を除く有効投票総数の過半数を意味していることです。この場合、有権者総数の1割しか賛成していないのに関わらず。憲法が改正される事態が起きる可能性があります。
この点で、憲法改正という国民の権利に大きな影響を及ぼす重大事については、一定の投票率に達しない場合は無効とする最低投票率の導入をいま一度、議論すべきではないかという意見もあります。
また、国民投票の実施については、国会の発議から60日以降180日以内とされています。つまり、投票までの期間にしても、最短の60日間となれば、国民が憲法改正案を熟慮する時間が足りないといわざるをえません。この点についても、国民主権を体現する趣旨から国民的な議論をするためには、国会の発議から少なくとも2年以上を求める意見もあります。
さらに、憲法改正案に対する投票方式も問題だとされています。改正事項が複数の場合、一括して投票するのか、個別の事項ごとに投票するのか。運用の仕方によっては国民投票の結果を左右しかねない重要な手続き上の問題をはらんでいます。
憲法改正は、私たちの大切な権利にかかわることですから、その改正部分一つひとつをていねいに国民全体で議論して、国民の多数意思が反映できたといえる程度に投票率も一定数が必要です。
それにもかかわらず、都合の悪い事項は他の事項に忍ばせて投票にかけ、熟慮の期間も充分には与えず、国民の一部の賛成で憲法の改正が実現できてしまうという現実があるのです。
主権者は、私たち国民です。私たちの権利が日本の平和がこれからも維持されるよう、憲法改正の内容だけでなく、国民投票の手続きにも注目をしていく必要があるようです。
憲法ってこんなにステキなルール
世界に誇れる日本国憲法
弁護士 茨木智子
人々が集まり、寄り添って暮らすことで、社会が生まれます。
ここにひとつの国を作ると仮定してみましょう。たくさんの国民がいます。お互いを大切にし、永く安定して暮らしやすい国を作るにはどうしたらいいでしょうか。
国民にはいろいろな人がいて、それぞれがいろいろなことを言い、いろいろなことをします。なかにはろくでもないことも混じっているかもしれませんが、誰かの思いつきが世の中を便利にしたり、誰かのなにげない行動が他の誰かを助けたりすることがあります。それに、何か特別なことをしなくても、その人は大切な国民のひとりです。
すべての国民が等しく尊重され、自由であることを保障される。これが基本的人権を尊重するというルールにつながります。
では、たくさんの国民が、一緒に暮らしやすくするにはどうしたらいいでしょうか。国民にはいろいろな人がいますから、毎日たくさんの問題がおこります。意見や要望があがり、時間や事情の変化によってどんどん変わっていきます。ひとつの意見に対して賛成も反対もあるでしょう。多くの国民に広く共通する問題もあれば、少数の国民についての深刻な問題もあります。
これらの問題を放置していたら、暮らしやすい国にはなりません。しかし、誰かがあせって独断で決めたことに「従え」と言われたとき、それで納得できるでしょうか。国民がかかえた問題を解決するのは国民です。そのためには、国民すべてが問題を共有して、向き合わなければなりません。
自分たちの手で政治を行う。それが国民主権の統治のあり方です。
それでは、永く安定した国でありつづけるためにはどうしたらいいでしょうか。そもそも国は人々が寄り集まってできたものです。ひとりひとりの生活の場であり、それぞれのかけがえのない人生を支えるものです。すべての国民が平和に毎日を暮らし、生まれてから死ぬまでを謳歌できる国であれば、未来につながっていくのではないでしょうか。
他国と力でけん制しあって得られるものは緊張状態であり、平和ではありません。武力を持ち、殺すの殺されるのという状況の中で、真の意味での平和な暮らしができるでしょうか。
戦争の放棄によって、平和と安定が保たれます。
基本的人権の尊重、国民主権、平和主義…。こうして考えてみると、憲法は日本が世界に誇れるルールだと思うのですが、いかがでしょうか。