城北法律事務所 ニュース No.70(2014.8.1)

目次

近況報告
耳をすませば

弁護士 深山麻美子

最近、親の一言に、息子がやたらと反抗してくる。どうしたものかと悩んでいたら、某教育家が、子どもに何か言う前に、子どもが心の中で何をしゃべっているかを考えましょう、子どもの心の声に耳を澄ませば、どういう言葉をかけるべきかも自ずと分かってきます、と言っているのを聞いた。要は親の方の問題ということになり、何だかやぶ蛇だが、親心と言いながら、実は無神経に自分の考えや気持ちを吐き散らかしていただけかもしれない、と反省した。

さきごろ都議会や国会で女性議員に対するヤジがセクハラではないかと大問題になった。ヤジを飛ばした当人達は、女性がさっさと結婚し、子供をどんどん産みさえすれば、少子化・不妊問題も解決と思っているらしく、反省の色はあまりない。しかし、女性が自分らしく働き、結婚し、子を産み育てていくには、今の日本にはたくさんの障害がある。日頃から女性の心の声をよく聞いていれば、真剣に議論をするべき場で、まず自分が結婚しろ、産めないのかなどと無神経なヤジを飛ばすことなどありえないはずである。

親だろうが、議員だろうが、自分の考えだけで、相手の心の声を聞かなければ、ただ傲慢に言葉を吐き散らかしているだけになる。わが身もふりかえりつつ、この問題が、うやむやにならないように、今後も注意深く見守りたい。


ホワイト弁護団
「ホワイト認証」制度を開始します!

弁護士 大川原 栄

昨年の9月末に、「アンチ ブラック」をめざす企業の経営改善を支援する弁護団=ホワイト弁護団を設立し、マスコミなどの注目をあびました。

ホワイト弁護団は、企業の労務管理等についての改善支援を行うと同時に、すでに法に適った労務管理を行っている企業について、第三者的立場からその審査を行い、内外に「この企業はホワイトである」、あるいは「この企業はホワイトめざしてがんばっている」旨を宣言する「ホワイト認証」制度の運用を開始しました。

このホワイト認証により、対象企業は「ブラック」ではないという消極的評価を超え、より積極的に「ホワイト」であることが認証・確認されることになりますので、たとえば、求人募集において積極的に企業をアピールすることができ、また、消費者・利用者に対する企業ブランド力のアップにもつながります。

ホワイト弁護団、ホワイト認証というフレーズはまだまだマイナーなものです。しかし、ホワイト弁護団は、ホワイト認証という「企業評価基準」を就労者、消費者を含む広範な国民のなかでのスタンダードにしていくことこそが、「ブラック企業」を社会から駆逐し、より健全な社会を実現していくための王道であると強く確信しております。


薬害根絶デー
薬害の根絶に向けてさらなる活動を

弁護士 阿部哲二

薬害根絶を求め、2000年から毎年8月24日に合わせて、厚生労働省前でのリレートーク、厚労大臣への要望書提出、パレード、集会、有楽町マリオン前での宣伝などを行っています。

この「薬害根絶デー」は、薬害エイズが解決した後の1999年8月24日に厚労省の前庭に薬害根絶に向けた「誓いの碑」が建てられたことから、これをきっかけに被害者、支援、弁護団が一体となって1年に1回続けているものです。根絶デーの訴えのなかから、薬害肝炎の闘いが始まり、薬害ヤコブの解決が導かれるなどしてきました。今年で、15回目となります。

残念ながら薬害は終わることなく、今新たに子宮頸がんワクチンによる被害なども出ています。インターネットによる薬の販売が解禁されました。製薬メーカーと大学の研究者が癒着し、臨床試験データを書き換えるなどして薬の効果を偽り、誇大に広告したディオバン事件などの問題も出ています。

薬害根絶に向けてさらなる活動が必要です。ぜひ、関心のある方、ご参加ください。今年は8月25日11時45分、厚生労働省前のリレートークから始まります。

詳しくは「薬害根絶デー 書庫」で検索。
または、HP [ http://www.gaiki.net/yakugai/ykd/ ] へ


谺<こだま>雄二さんの遺志を継いで
悲惨な人権侵害を起こさないように

弁護士 嶋田彰浩

元ハンセン病患者である谺(こだま)雄二さんが、5月11日、群馬・草津の国立ハンセン病療養所「栗生楽泉(くりうらくせん)園」で、82歳で亡くなりました。

ハンセン病患者に対しては、長年に渡り「終身強制隔離・患者断絶政策」が継続されるなど、日本最悪とも言える人権侵害が行われました。このような悲惨な人権侵害が長年にわたり放置されたのは、私も含め日本人全体の責任といっても過言ではありません。谺さんは、「ハンセン病違憲・国賠訴訟・全国原告団協議会」の会長を長くつとめるなどされ、2001年の熊本地裁勝訴判決と政府による謝罪後も、元患者の名誉回復や療養所の職員削減による窮状などを社会に訴え続けました。また、楽泉園にあった患者の監禁施設「重監房」の復元を国に求める運動にも取り組み、今年4月に重監房資料館開館を実現したばかりでした。

私は、訴訟に関わってはいませんが、2007年の弁護士登録後、たびたび、学生を連れて楽泉園を訪問して、谺さんに、ハンセン病被害のお話を伺ったり、施設の案内をしていただいたりと大変お世話になりました。今後も、谺さんの遺志を継いで、特に若い方に、ハンセン病の被害を知ってもらい、二度とこのような悲惨な人権侵害を起こさないよう、微力ながら活動していきたいと思います。