城北法律事務所 ニュース No.71(2015.1.1)


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【法律問題時事】
泉南アスベスト最高裁判決
国の責任は明確に! あとは建材企業の責任を!!

弁護士 松田耕平

ご存知の方も多いと思いますが、2014年10月9日、「大阪泉南アスベスト国賠訴訟」で、最高裁が国の責任(国がアスベスト対策を怠った責任)を認めました。アスベスト被害を巡る裁判は全国各地で起こされていますが、国の責任を認めた最高裁判決はこれが初めてです。

泉南アスベスト訴訟では、2006年の提訴以降、「国は、知ってた! できた! でもやらなかった!」という言葉をスローガンに掲げ、原告団・弁護団そして支援の方々が一丸となって、最高裁判決まで約8年の間全力で戦ってきました。二つの高裁判決で判断が分かれるなど紆余曲折がありましたが、その成果が最高裁判決に繋がったのだと思います。

泉南アスベスト訴訟は主にアスベスト製品の紡織工場で働いていた方々のアスベスト被害が問題となっていましたが、私が弁護団の一員となっている建設アスベスト訴訟で問題となっているのは建築現場の方々のアスベスト被害です。工場で働く方々と建築現場で働く方々とでは、国が行うべきとされる規制内容や危険性の認識時期などが異なるため、泉南アスベスト訴訟の最高裁判決が直ちに建設アスベスト訴訟に当てはまるものとは言えません。ですが、国の責任を判断する枠組みなど共通する争点もあるため、最高裁判決は建設アスベスト訴訟にも大きな追い風となります。

実際に、泉南アスベスト訴訟の最高裁判決から約1ヶ月後の11月7日、九州の建設アスベスト訴訟で、福岡地裁は国の責任を認める判決を下しました。建築作業従事者との関係で国の責任を認めたのは2012年の東京地裁判決に続いて2例目ですが、泉南アスベスト訴訟の最高裁判決に追随するもので、これら一連の判決によって、アスベスト被害に対する国の責任は明確になったのではないかと思います。

建設アスベスト訴訟では、泉南アスベスト訴訟とは異なり、国だけではなく建材メーカーも被告となっていて、ここが大きな違いの一つです。建材メーカーの責任については最高裁もまだ判断しておらず、横浜地裁・東京地裁・そして福岡地裁と3つの建設アスベスト訴訟の判決でも、責任は否定されています。その理由を説明するにはかなりの字数を要するので簡単に説明すると、裁判所は、被害者(建築作業従事者)が、たくさんある建材のうち、どの建材メーカーの商品(建材)を使ってアスベストに曝露(ばくろ)したのかわからない(=被害者の方で具体的な企業や商品を特定しなさい)という理由から責任を否定したのです。しかし、建材メーカーも、アスベストの危険性を「知ってた! できた! でもやらなかった!」ことにかわりありません。

加害者であることが明らかな建材メーカーの責任をこのまま放置しておくことはできません。建設アスベスト訴訟は今年が正念場です。引き続きがんばりますのでぜひご支援をお願いいたします。


労働法制改悪
「アベノミクス」は、ダメよ~ダメ、ダメ

弁護士 大山勇一

「アベノミクスは失敗だった」―― このように断言できる経済指標が次々と発表されています。昨年7月~9月期の国内総生産速報値はマイナス1.6%、実質賃金は15か月連続マイナス、子どもの6人に1人は貧困、預貯金ゼロの世帯は3割を維持したままです。「世界で一番企業が活躍しやすい国」づくりの号令のもと、「富める者が増えればいずれ貧しい層にも経済全体の規模が拡大した恩恵の滴がもたらされる」という「トリクルダウン」が盛んに吹聴されてきましたが、このような宣伝がまやかしであることははっきりしました。このまま「アベノミクス」を続けていけば国民経済が破たんするからこそ、安倍晋三首相は消費増税の延期を宣言せざるをえなかったのです。安倍さん、今年はもう「アベノミクス」の幻想には騙されませんよ。

【経済再生はまずブラック企業規制から】

日本経済の再生を言うなら、大企業優遇政策ではなく、日本共産党が提案している「ブラック企業規制法」を制定して若者の心と体をむしばむ「ブラック企業」を撲滅することこそ先決です。「サービス残業」が発覚すれば残業代を2倍にする、残業時間の上限を法律でしっかりと定めるなどの内容を盛り込んだこの法案に私は期待しています。2009年から続けている「池袋派遣村・無料相談活動」では、働いても働いても貯金できず、路上生活やネットカフェ暮らしを続けている若者の相談もありました。東京の最低賃金は現在888円ですが、これを全国一律1000円に引き上げることで若者の貧困状況も緩和されるに違いありません。また、サービス残業を一掃するだけで310万人の雇用が生まれるとの試算もあります。経済の立て直しのためには、まずは企業に労働法と憲法を遵守させることが重要です。

【派遣法案を廃案に追い込んだ勢いをこれからも】

昨年の臨時国会では、安倍政権が重要法案と位置づけた「労働者派遣法」の改悪案が廃案になりました。この法案は、派遣労働は臨時的業務に限定するという大原則を投げ捨て、派遣受入れ期間制限(最長3年)を撤廃するというものでした。これは、正社員の派遣労働者への置き換えを際限なく広げ、「生涯ハケン」「正社員ゼロ」を作り出すものでした。この法案は昨年の通常国会でも提出されましたが、多くの労働者の粘り強い取り組みなどにより、2度にわたって廃案に追い込むことができました。

一方で、2013年4月から施行されている労働契約法18条は、契約社員などの契約期間が更新されて5年を超えた場合には期間の定めのない契約に転換できると定めていますが、昨年の臨時国会では、「専門職」や「再雇用」労働者にはこの規定を適用しないという特別法が制定されてしまいました。

今後、政府は、上記のほかにも「残業代ゼロ法案」「限定正社員制度=解雇自由化法案」などの提出をもくろんでいます。こうした動きに対しては、法案の矛盾や欠陥を指摘するとともに、反対の世論のうねりを作り上げていきましょう。