外国人の権利を守ることは国際貢献の一つ
~移住労働者の権利擁護に取り組んで~
弁護士 田場暁生
私は、阿部弁護士と共に、移住労働者の権利を擁護し向上させる活動をしている移住労働者ユニオンの顧問弁護士として、多くの外国人の労働相談を受け、裁判などをやっています。相談に来る彼らの多くは日本人以下の低賃金でこき使われ、不当に搾取されています。夜から翌日の昼まで働き、又その夜に出勤させられるなどの長時間労働も少なくありません。中には、「いじめられ、日本という国に絶望していたのに、一生懸命やってくれるユニオンの方や弁護士さんに出会って、日本にもいい人がいるんだと思った」という感想を漏らす人もいます。そんな話を聞いたときは、本当に頑張って良かったと思い、そして、「日本という国に絶望しないで良かった」と、ほっとします。
もし、自分が外国に働きに行って、その国の人と差別的な取り扱いを受け、ひどい(労働)状況におかれたらどう思うでしょうか。もしかしたら、その国自体を嫌いになってしまうかもしれません。そう考えていると、弁護士として、虐げられている外国人の権利を実現することは、ささやかな国際貢献の一つにもなることに気付きました。国籍、人種、性別など問わず、すべての人に優しい社会になるために力を注ぎたい、そう思っています。今年もよろしくお願い致します。
薬害イレッサ訴訟 ~がん患者の生命の重さを問う~
弁護士 阿部哲二
イレッサは、イギリスに本拠を置くアストラゼネカ社が肺がん用の抗がん剤として開発したものです。2002年に、日本が世界で最初にこれを承認しました。しかし、イギリスを含むEUでは、延命効果が確認できないことから、アストラゼネカ社は承認申請を取り下げています。アメリカでは、一旦は承認されたものの効果がなく害がありそうとのことで、新規患者への投与は禁止されました。カナダでも、オーストラリアでも同様です。
にもかかわらず、日本では今もなお使用され続け、2007年3月末までに706人もの副作用死が報告されています。
劇的に効いた人がいる、との報告もあります。しかし、706人というのは抗がん剤にあっても突出した死亡数ですし、そもそも、人の生命の侵害を、数の比較で許すようなことがあってはなりません。
薬害イレッサ訴訟は、がん患者の生命の重さ、ひいては、全ての人の生命の重さを問う訴訟です。
今年も、引続き頑張ります。
よろしくお願い致します。
司法研修所教官になって ~2年間を振り返って~
弁護士 工藤裕之
私が司法研修所の刑事弁護教官に就任して2年が過ぎ、任期はあと1年となりました。この間、旧司法試験合格者を対象とする現行修習、新司法試験合格者(法科大学院修了者)を対象とする新修習が並行実施されています。このような事態は、当然のことながら過去に前例もなく、また、数年後には新修習に一本化されますので、現在の教官しか経験しない過渡的なものです。
私が心配しているのは、新修習は、期間がわずか1年しかなく、このような中で司法修習生の誰もが実務家としての最低限の能力を身に付けることができるのかということです。現行修習では、司法修習の最初に前期修習があり、そこで、実務の基本を学んだ上で実務修習に入りますが、新修習ではこの前期修習がなく(法科大学院で学ぶという建前になっています)、いきなり実務修習に入ってしまいます。新修習が今後どう推移していくのか不確定要素も多いですが、あと1年の教官生活、何とか頑張って行きたいと思っています。
ぜんそく患者医療費助成制度がいよいよスタートします!
弁護士 小沢年樹
東京大気汚染裁判の全面解決
昨年8月8日、11年続いた東京大気汚染公害裁判は、(1)東京都によるぜんそく患者医療費助成制度の創設、(2)自動車メーカーによる解決金12億円の支払い、(3)各種の自動車公害防止対策の実施、(4)継続的協議機関の設置を内容とする全面解決で和解しました。(1)のぜんそく医療費助成制度は、都内に住む全てのぜんそく患者に対して、医療費自己負担分を東京都が助成するもので、裁判の被告だった国、首都高、都、自動車メーカーが費用を拠出しています。裁判の原告だけでなく、一般の患者さんが利用できるものです。
*助成制度をぜひご利用ください!
これまで東京では、18歳未満のぜんそく患者には医療費を助成してきましたが、今回の制度は(1)年齢制限なし、(2)所得制限なしの文字どおり全ての患者を対象にしています。制度のスタートは今年夏ころが予定されていますが、助成を受けるには保健所に患者としての申請をして認定を受ける必要があります。こうした手続きは、裁判でも中心になって活動してきた東京公害患者会のスタッフが詳しいので、関心のある方は患者会事務局(電話03-5802-2366)へご連絡ください。