アスベスト問題
メーカーの責任はきわめて重い
弁護士 松田耕平
これまで度々ニュースでお伝えしてきましたが、去る5月16日、建設作業従事者の方々とその遺族約180人が原告となって、東京地方裁判所に損害賠償請求訴訟を提訴しました。被告は、国とアスベストを含んだ建設材料を製造したメーカー46社です。
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今回の裁判のように、被告が合計して47もいるという訴訟は極めて希なケースです。このように被告が多数にのぼる裁判では、被告ごとに対応が異なって判決までの年月が長くなったり、最終的に解決する際にも、足並みが揃わないなどのデメリットが考えられます。このため、多数のメーカーを被告とすることが果たして良いのかどうか、本当に悩みました。
しかし、弁護団で議論を重ねた結果、現在多くの方々が抱えるアスベスト問題については、長らく規制措置等を怠ってきた国の責任はもちろんのこと、アスベストの危険性を充分に知りながら、会社の利益追及を優先させて、アスベスト含有建材を販売し続けてきたメーカーの責任も極めて重く、決して放置することができないと考え、被告とすることに決めたのです。
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この結果、これまでに類を見ない大型訴訟となりました。その解決までの道のりは決して平坦ではありません。ですが、原告の中には、肺がんや悪性中皮腫など、命に関わる重大な病気を抱えながら裁判に立ち上がった方々がたくさんいて、長期間の裁判闘争を続けることが困難な状況にあります。
このため、私たち弁護団は、原告の方々はもちろん、東京土建をはじめとする支援団体の方々、そして皆さんと一致団結して早期解決が実現できるよう、全力で頑張りますので、ご支援をよろしくお願いいたします。
板橋高校威力業務妨害事件
キャリア裁判官によって事実が歪められている
弁護士 平松真二郎
2004年3月、元都立板橋高校の教員であったF氏は、卒業式に来賓として招待されました。F氏は開式前に保護者に対し週刊誌のコピーを配布し、その直後、数10秒間、保護者に「君が代」強制の問題の説明を行いました。すると校長は、F氏に対して会場から退去するよう求め、F氏は抗議をしましたが、結局開式前には退去しました。これが威力業務妨害罪にあたるとして2006年5月の東京地裁で有罪判決が言い渡されました。F氏は不服として直ちに控訴していました。
2008年5月29日、東京高等裁判所はF氏の控訴を棄却する判決を言い渡しました。判決はF氏の有罪を維持するため、恣意的かつ政治的な事実認定をしたといわざるを得ません。
判決では、まず教頭が校長室を出発した時間を9時40分と認定し、校長室から会場の体育館までの距離150メートルを移動したことを認定しています。にもかかわらず、体育館でFさんの週刊誌コピー配布を制止したと認定し、その時間が9時40分であるとも認定しているのです。
さて、9時40分に教頭はどこにいたのでしょうか。事実認定に矛盾があるのです。判決は、時速何キロメートルで校長室から会場の体育館まで移動したかなど、資料をあげて説示していますが、その内容は空疎なものと言わざるを得ません。このような判断は、キャリア裁判官が、F氏の有罪を維持するために、多数の証拠を黙殺して、教頭らの虚偽証言によりかかって、恣意的かつ政治的な判断をした結果にほかなりません。裁判官が、近代刑事司法の核心である「証拠裁判主義」「公平な裁判所」に反する認定を行っているのです。
上告審において真実が解明され、F氏の無罪が勝ち取れるよう、今後も弁護団員一同努力していく決意です。ご支援よろしくお願いいたします。
佐々木芳男弁護士を偲ぶつどい
「お久しぶり、元気だった」
さる3月22日(土)豊島区内のホテル・ベルクラツシック東京にて、生前にかかわりのあった約120人が集まり、2006年11月20日に亡くなった当事務所の「佐々木芳男弁護士を偲ぶつどい」が行われました。
つどいは中也寸子さんら制作の佐々木弁護士の足跡をたどるスライド上映、大峰順二さんの朗読、松本克巳さんのヴァイオリン演奏などが行われました。 「お久しぶり、○○さん元気だった」「おーい、このテーブル、ビールが足りないよ、あそこは焼酎」という佐々木弁護士の声が聞こえてきそうだねと語り、佐々木弁護士の人柄と、人と平和と正義を愛した佐々木弁護士の思いを共感したつどいでした。
【呼びかけ人】池田梅夫(前都議会議員)、植田喜久子(元都議選公選法弾圧事件)、大木博(元冤罪大木事件)、樫山富次(元国労池袋提訴団)、作本幸秋(坂本弁護士一家をさがす豊島の会)、佐藤むつみ(弁護士・32期同期)、佐藤幸一(豊島区労協)、須永勇(元戦犯記念碑違憲訴訟)、渡辺善一郎(日本国民救援会)、菊池紘(弁護士・当事務所)
* 佐々木芳男弁護士追悼集「あなたとともに あらゆる人々との心のふれあいを」を作成しました。ご希望の方はご連絡ください。