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城北法律事務所 ニュース No.59(2009.1.1) | 城北法律事務所

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城北法律事務所 ニュース No.59(2009.1.1)

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5月21日スタート
「裁判員裁判」が始まります!

弁護士 大川原 栄

1  昨年11月末頃、全国有権者中約30万名に対し、本年5月21日から実施される裁判員裁判において裁判員となる可能性のある裁判員候補者名簿に記載された旨が通知されました。このニュースを読まれている方の中にも、その通知が送られてきたという方が当然いらしゃると思います。裁判員候補者名簿は、今後、毎年更新されることになっており、今回通知がなかった方も今後裁判員候補者になることは充分にあり得ることです。

2  裁判員裁判とは、一定の重大事件(殺人、強盗致死傷、危険運転致死、現住建造物放火等)の刑事裁判について、国民から選ばれた6名の裁判員と3名の裁判官が一緒に裁判手続に関与し、被告人の有罪・無罪の判断、そして有罪の場合にどのような刑にするのかの判断を行うという制度です。
この制度は、従来の職業裁判官だけによる刑事裁判に主権者である国民が積極的に関わっていくという裁判であり、画期的意味を有しています。この裁判員裁判という制度は、「司法改革」の一環として導入されたものであり、その背景事情として職業裁判官の常識・感性と国民の常識・感性との乖離が指摘されています。「裁判官の常識は国民の非常識」「絶望的な刑事司法」といった指摘もあり、刑事裁判に国民の常識、視点、感性を直接反映させる制度といえるのです。

3  この裁判員裁判に対しては、いやがる国民を強制的に刑事裁判に参加させるものだ、マスコミ報道に流されやすい国民に裁判をさせるのは無茶だといった批判、あるいは刑事被告人にとって不利益になる、刑事弁護に支障が生じるといった批判が多数寄せられており、裁判員裁判実施の延期・中止を求める動きもあります。
確かに、現状の裁判員裁判制度に全く問題がないとはいえない側面もあります。たとえば、被告人に裁判員裁判と通常裁判の選択権がない、あるいは裁判開始前における準備手続の内容により被告人の弁護が充分に行えなくなるおそれがあるといったことです。
しかし、これらの問題は、今後における制度の現実的運用の中で具体的問題が生じた段階で、弁護人がその運用段階で力を尽くし、同時に、今後の制度に反映させるということで解決すべき問題だと思っております。

4  そして、多くの国民が、「仕事で忙しいのに裁判なんかに関わりたくない」「自分は感情に流されずに裁判に関われるのか不安だ」「マスコミ報道を鵜呑みにする国民に裁判を委ねるのは危険すぎる」といった意識を持っているのも事実です。
しかし、裁判員裁判とは、特別な知識・能力を持った方が関わるということではなく、そもそもそのような意識を持ったままの方が裁判に関わるというものだということです。
裁判員になる段階で、刑事裁判についての「ルール」( (1)無罪推定原則、(2)証拠による事実認定、(3)合理的疑いを超える証明等)の説明があります。裁判員は、それまで有していた自分の意識・常識でその「ルール」を受け止めることが大事です。そこで、職業裁判官に合わせる必要は全くないのです。「マスコミに流される自分」「裁判なんかしたくない自分」を前提にして構わないのです。
おそらくそのような方でも、生の犯罪事実を目の前にして、そして生の刑事被告人を目の前にすれば、刑事裁判の「ルール」をそれぞれが自分のものにしてきちんと刑事裁判に関われるはずです。自分の意識・常識を前提に、「本当に有罪なのか」「もっと別の証拠はないのか」「そんな証拠の見方はおかしいんじゃないのか」といった意見・疑問をオープンにして審理に加わるのであれば、最終的には適正な刑事裁判が実現されると確信しています。

日本国憲法が施行されて60年以上が経過し、国内政治に幾多の問題があることは否定できない事実です。しかし、日本国民は、絶妙に政治に関わりつつ平和憲法を維持してきたのであり、今回の裁判員裁判についても同様に関われると思っているからです。


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