新貸金業法について
弁護士 大八木葉子
2006年12月に貸金業法・利息制限法等が改正されました。バブル崩壊後の金融機関の貸し渋りが多重債務という社会問題を生じさせたからです。
これら改正の目的は、貸金業者の業務を適正に行わせること、借り過ぎ・貸し過ぎを防ぐこと、金利を引き下げること等にあります。
以下、改正内容についてご説明します(なお、これらの規定は、段階的に施行されることになっており、以下でご説明する規定が施行されるのは、来年6月の予定です)。
(1)過剰貸付の抑制について
貸金業者から金銭を借り入れている方は、借り過ぎにより収支のバランスが崩れていることも多く、これを防止するための規定ができました。貸金業者は、個人に貸付をする際、指定信用情報機関の信用情報を使用し、一定の場合には顧客から源泉徴収票等の書面の提供を受け、顧客の返済能力を調査しなければなりません(複数の指定信用情報機関は相互に情報を共有しあいます)。
この調査の結果、住宅ローン等を除き、他の業者からの借入を含めた総借入残高が年収の3分の1を超える場合は、返済能力を超えた貸付となり、原則として貸付できません(もっとも、売却可能な資産があるなど例外の場合は貸付が認められます)。
(2)金利の引き下げについて
従前、利息制限法による利率を超える金利も一定の場合には有効な利息の弁済とみなされるという「みなし弁済」規定(グレーゾーン金利)があり、利息制限法の利率を超える貸付が多々行われていました。
しかし、実際に上記の「みなし弁済」規定の要件が満たされることは少なく、最高裁は、利息制限法の利率で計算をし直し、元本を減額したり、支払いすぎた利息の返還を認めていました。今回の改正では、このような「みなし弁済」規定(グレーゾーン金利)が廃止されました。
また、従前、罰則の対象となる金利は貸金業者も一般人も109.5%でしたが、今回の改正で、貸金業者の貸付に関し、金利を段階的に引き下げ、20%とされました(出資取締法)。貸金業者は、20%を超える利息の契約をした場合、5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金に処し、またはこれが併科されることになりました。
このように、法改正により貸金業に対する規制が強化されました。
今まで借りていた方は、利息制限法の利率で計算し直し、元本を減額させる、払いすぎた利息の返還を受けるという方法があります。
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住宅瑕疵担保法
住宅購入者保護の一方、建設業者には重い負担が
弁護士 津田二郎
来る2009年9月から、「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律」が施行されます。
2005年11月に発生したいわゆる「構造計算書偽装事件」によって、ある建築士がかかわったマンション等が、法で定められた耐震基準等を大きく下回ることが判明しました。その結果、それらのマンション等では、多額の費用をかけて建て替えを含む大規模補修等が必要になりました。このような構造計算書の偽装に伴う建て替えや大規模補修を行うために必要な費用は、本来瑕疵担保責任を負っている売主が負担すべきです。
しかしこの事件では、マンションを分譲した会社や設計・施工に関与した建築士や建設会社に建て替えや修繕費用を負担する資力がないことがわかり、結局マンション購入者が新たに多額の負担を背負わされることになりました。
この事件の当時、すでに2000年4月に施行された住宅品質確保法があり、新築住宅については引渡時から10年間の瑕疵担保責任が全ての住宅供給業者に法律上義務づけられていましたが、この事件で住宅供給業者に責任を全うする資力がなければ意味がないことが明らかになりました。
そこで、住宅品質確保法に定められた瑕疵担保責任の履行を実現するために、2007年、「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律」(住宅瑕疵担保法)が制定されました。
この法律は、住宅品質確保法に定められた住宅瑕疵担保責任を負う売主のうち、特に新築住宅の請負人が建設業者(建設業法の許可を受けた建設業者)である場合または売主が宅地建物取引業者(宅地建物取引業法の免許を受けた宅地建物取引業者)である場合に、消費者保護の観点から、特に瑕疵担保保証金の供託義務を課しました。
供託の金額は、建設業者が過去10年の引渡戸数に応じて2000万円から120億円の範囲で具体的には政令によって定められることになっています。
なお住宅瑕疵担保法では、上記のように建設業者等に新築住宅の引渡戸数に応じた瑕疵担保保証金供託の供託のほか、同法に基づく国土交通大臣の指定を受けた住宅瑕疵担保責任保険法人と住宅瑕疵担保責任保険契約を締結した住宅については、瑕疵担保保証金の算定の対象となる新築住宅から除くこととされています。
これは、保険があることによって瑕疵担保保証金を供託したのと同様に瑕疵担保責任の履行が確保されていると考えられるからです。
また保険金の支払いに関するトラブルが発生した場合には、紛争処理機関によって適正に解決されることが期待されています。
この法律の施行によって、先の事件のように新築物件に瑕疵が発見された場合に、その負担をすべて消費者が負うというリスクは回避されることになります。
一方で、特に小規模の建築業者等にとっては新築物件を販売するためにあらたな負担を強いられることになるので、その影響は大きいものがあります。