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城北法律事務所 ニュース No.64(2011.8.1) | 城北法律事務所

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城北法律事務所 ニュース No.64(2011.8.1)

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民意を反映しない比例定数削減にNO!を

弁護士 大山勇一

衆議院の定数480議席のうち、比例選挙区の定数は180、小選挙区の定数は300となっていますが、民主党は、このうち比例定数を80削減しようと狙っています。

■議員が削減されると・・・
国会議員は、国民の声を受け止めて国政に反映させるとともに、行政を監視する役割を担っています。国会議員が少なくなれば、その分、国の政策に国民の声が届きにくくなるのは明らかです。
2009年総選挙の結果で試算すると、衆議院の比例定数が80削減されると、それだけ小選挙区の割合が高まり、結果として6割近い国民の声が無視されてしまうことになります。
これまで死票の多い小選挙区制が導入されてきたことにより、歴代の政権は得票率よりも多くの議席を獲得してきました。この「虚構の多数」の力で、原子力発電所の「安全神話」が振りまかれ、またアメリカ追随の自衛隊の海外派兵が推し進められてきました。比例定数が削減されると、自民・民主の2大政党だけで9割を越す議席となり、ますます多様な民意が切り捨てられることになります。

■国会議員はムダに多い?
一部のテレビ報道などでは、国会議員が「ムダ」で多すぎるかのような説明をしていますが、本当にそうでしょうか。人口10万人あたりの国会議員数をみると、日本は0.57人であるのに対し、スウェーデン3.38人、イギリス2.28人、ドイツ0.81人、韓国0.62人などとなっており、日本の国会議員数は諸外国にくらべてむしろ少ないといえます。
衆議院議員を80人削減することによるコスト削減は54億円ですが、政党助成金として毎年320億円、米軍への「思いやり予算」として毎年2000億円が支払われていることと比較すれば、「ムダ」削減のために国会議員の定数を削減する意味は薄いといえます。

■「脱原発」は民意を反映する国会で
城北法律事務所は、4月27日に開催された「衆議院比例定数削減反対!4.27学習懇談のつどい」(講師菊池紘弁護士)に実行委員のメンバーとして参加しました。80名を超える市民が学習会に参加してくださいました。
原発依存をはじめとする国民いじめの国づくりを許してきた大本は、歪められた選挙制度にあります。いま必要なのは、議員の数を減らすことではなく、国民のために尽くす国会議員を国民の声に比例して公正に国会に送り届けることです。
震災からの復興、脱原発化は、少数意見を含む多様な民意が反映された国会で審議すべきです。比例定数削減という民主主義に逆行する動きに、ともに反対の声をあげていきましょう。


大阪府 君が代起立条例と定数削減条例
〜成立経過にみる定数削減のねらい

弁護士 津田二郎

新聞報道によれば、大阪府議会では、6月3日夜、過半数を握る地域政党「大阪維新の会」が提案した全国初の「君が代起立条例」を可決しました。
その内容は、府内の公立学校の教職員に対し、国歌斉唱時の起立を義務づけるもので。現時点で罰則規定は設けられていませんが、橋下知事は秋までに免職を含む罰則を規定した条例を提案する意向と伝えられています。この条例案については公明、自民、民主などは「条例化までは必要ない」と反対し、維新による事実上の単独可決となりました。
またさらに大阪府議会は、6月4日未明、大阪維新の会が提案した、現行109の議員定数を88に大幅削減する条例を可決しました。公明、自民、民主、共産各会派が欠席する中で、過半数を握る維新が「強行採決」に踏み切ったとのことです。

もともとこの議員定数の条例改正案は「人口10万人あたり議員1人」を適数として定数を割り出し、現行の選挙区に割り振ったもので、定数が21減となる一方で、「一票の格差」は現在の2・2倍から2・88倍に拡大するのだそうです。これらの一連の条例成立過程は、今国政でも盛んに主張されている「定数削減」の本質が先取りされているような気がしてなりません。
つまり、少数意見の無視と多数派の強引な議会運営です。

国民の間でも意見が分かれている「君が代」斉唱の強制問題については選挙の公約にもなっていませんでした。しかし選挙で多数をとった政党が一気呵成に議決してしまいました。仮にその主張が正しいとしても、いや正しいならなおさら反対する者に道理を尽くして説明し、納得を得ることが必要でしょう。
また定数削減についても、そもそも議席の削減が必要か、必要としても何議席削減するのが適切か、削減する議席をどのように特定するのかなど、多面的に検討すべき課題は数多くあったはずです。慎重に検討すべきとする会派があり、審議を欠席する中で採決が強行されたことも重大です。

定数削減は基本的に得票数の少ない議席が対象となること、得票数と議員のやる気、能力が必ずしも関連しない現実からすると、定数削減によってもたらされるのは、やる気のない、仕事のできない議員の排除ではなく、少数政党の排除ということになります。
今回は少数派も含めて多くの会派が反対、欠席したために報道されましたが、定数が削減された議会では少数派の割合がさらに低下すると予想されるので、反対意見の存在自体が議会に現れることなく採決が淡々となされる可能性もあります。
福島の原発事故をとってみても、少数派が告発した事実が東電の責任の所在を明確にするのに役立ちました。少数派からの問題提起を真摯に検討し施策に生かすことは民主主義の基本です。
今回の大阪府議会の一連の条例制定過程は、定数削減とそこから生じる議会多数派の横暴の先どりとして教訓化する必要があるように思います。


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