法律相談 契約 (2012年11月16日事務所セミナーから)
事業者が抱えがちなトラブルから
弁護士 津田 二郎
1 事業所のリース物件のトラブル
「電話回線が『光回線』になったので、お宅の電話機も対応機にした方がいい」などを口実に、電話機のリース契約を迫る訪問業者がいます。事業者は、消費者契約法にいう「消費者」としての保護を受けられない場合がありますから、充分に気をつけてください。
また「リース契約を締結すれば一度に支出するお金を少なくできる」などといってパソコン、電話機、コピー機など様々な事務機器のリース契約を半ば押しつけられて契約させられた事業者がいます。必要ない場合には毅然と対応しましょう。その場で契約してしまわずに、身近な誰かや弁護士に相談しましょう。新品価格とリース期間の合計支払額とをよく見くらべてみることも騙されないようにするポイントです。
2 取引先との契約上のトラブル
信頼している取引先などとの間では口約束ですませてしまいがちです。また「契約書を」などとは言いにくいこともあるかもしれません。契約書そのものがなくても、交渉経過が明らかにできる文書が残っていれば紛争になったときに役立ちます。見積書を出す、見積もり額に同意しないときはファックスを送っておく(送信記録が残っていればなおよい)などでも、ないよりましです。
3 退職する社員との関係
雇用していた社員に顧客や技術等を根こそぎもっていかれる、ということがあります。そのような心配がある事業者の場合には、あらかじめ対策が必要です。
入社の際に、1~3年程度の期間を定めて「退職後は同業他社に就職しない」などの競業避止契約を締結しておくとよいでしょう。顧客データ等の電子データの管理については、持ち出しに許可制をとるなどして持ち出しを原則的に禁止しておくことも重要です。
また退職時に、会社の情報等について「一切持ち出しておりません」などの念書の提出も抑止効果が期待できます。
法律相談 遺言 (2012年9月6日事務所セミナーから)
どのように相続するかを考えて作りましょう
弁護士 茨木 智子
Q 子どもが巣立ち、今は妻と2人で、私の持ち家に暮らしています。自分が死んだ後のことが気がかりです。どんな遺言書を作ったらいいでしょうか?
A 自宅や預貯金のほとんどが夫名義の場合、もし夫に先立たれてしまうと妻の生活が心配ですね。立派に独立して家庭を持った子どもたちは、もちろん頼りになる存在ですが、将来、しっかり面倒をみてくれるのだろうかと不安になることもあるでしょう。こういう場合は、「妻に全財産を相続させる」という遺言書を作るのがいいでしょう。
相続人として妻と子どもがいる場合は、妻に2分の1、子どもに2分の1の法定相続分があります。
遺言があれば、妻に全財産を相続させることができますが、子どもには遺留分があります。遺留分というのは、法定相続人に認められた最低限の取り分です。遺言で自分の財産を処分するのは原則として自由であり、遺留分を侵害する内容の遺言でも、遺言自体は有効です。しかし、遺留分を侵害された相続人は、自分の最低限の取り分を取り戻す請求(遺留分減殺請求)をすることができます。請求するかどうかはその相続人次第です。
もし子どもから遺留分減殺請求をされたら、遺言によって全財産を相続した妻は、請求をした子どもにその分を返さなければなりません。
しかし、夫から妻が相続した財産は、いずれはその子どもに相続されるものです。ですから、夫の死後、妻に全財産を相続させるのは、妻の安定した生活を守るためであり、また、それが子どものためでもあることを、事前に家族とよく話して理解してもらい、遺言書にも書き添えておくといいでしょう。
遺言書の書き方や内容はいろいろと工夫することができます。ひとりで悩みを抱え込まず、お気軽にご相談ください。
法律相談 不動産 (2012年9月24日事務所セミナーから)
更新料は支払わなければならないのか?
弁護士 深山麻美子
地主(大家)さんから更新料を請求された場合、当然支払わなければならないものと思い込んでいませんか?
首都圏等を除けば全国的には更新料は請求されないのがむしろ多数ですし、賃貸借契約書に更新料支払特約がなければ、更新料を支払う義務はありません。更新料を請求されたら、支払ってしまう前に契約書に支払特約があるかをぜひ確認しましょう(一旦支払ってしまうと、支払った更新料を返してもらうのは困難です)。
では逆に契約書に支払特約があれば、必ず更新料を支払わなければならないのでしょうか。
まず、支払特約が合意更新についての規定の場合(「賃貸人と賃借人は協議のうえ、更新料を支払って更新できる」等)、合意更新ではなく自動更新(法定更新)すれば、更新料を支払う義務はありません。
次に最高裁判所は、支払特約は更新料の支払額が一義的かつ具体的に決まるものでなければならないし、諸般の事情から支払額が高すぎる場合は消費者契約法に反し無効となる可能性があるとしています。
ですから、たとえば「更新料を支払う」とだけの支払特約の場合は、更新料の具体的金額が決まらないので更新料を支払う義務はありません。
また、支払特約から更新料額が明確に算出される場合であっても、更新期間や賃料の額等の諸事情から高すぎる場合、支払い義務が否定される可能性があります。高すぎるか否かの判断は最終的には裁判所に委ねられますが、地主(大家)さんと金額について交渉する余地はあります。
更新料は賃借人に大変重い負担になるものです。更新料を請求されたら、支払ってしまう前に、支払特約があるのか、どのように規定されているのか確認し、弁護士や借地借家人組合等に一度相談することをお勧めします。」