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城北法律事務所 ニュース No.69(2014.1.1) | 城北法律事務所

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城北法律事務所 ニュース No.69(2014.1.1)

城北法律事務所 ニュース No.69(2014.1.1)

「秘密保護法」廃止に向けて
秘密保護法とは

弁護士 加藤 幸

 2013年12月6日、国会で特定秘密保護法が成立しました。審議期間はわずか40日余り、その間に多くの国民が反対の声を上げましたが、与党は国民の声に耳を貸さず、数の力で強引に国会審議を進め、強行採決で押し切りました。

 特定秘密保護法は、①防衛②外交③スパイ活動の防止④テロの防止に関する情報のうち、国の安全保障に著しい支障を与える恐れのある情報を、行政機関の長が特定秘密に指定し、国民から完全に隠してしまおうという法律です。 

 ①から④の項目の定義は曖昧で、特定秘密に指定できる情報の範囲を拡大解釈することが可能になっています。このため、原発の情報や自衛隊の活動に関する情報、TPPや日米の軍事協定などの外交に関する情報が特定秘密に指定され、私たちが知り得なくなる危険性があります。

 また、特定秘密保護法の成立経過を見ると、この法律が日本を戦争ができる国に変えることを重要な目的として作られたことは明らかです。国民から反対されないよう情報を隠したまま、日本を戦争ができる国に変えてしまおうとしているのです。

 憲法が「知る権利」を保障しているのは、私たちが政府や国会議員の行動の是非を判断するためには、様々な情報が提供されていることが必要だからです。しかし今後は、私たちが政治的判断をするために必要な情報が官僚の都合で隠されてしまう可能性があります。

 特定秘密保護法は成立してしまいましたが、これからは廃止に向けた運動を展開することが可能です。法律を廃止に追い込むまで粘り強く反対の声を上げていきましょう。


刑事事件はどうなるか

弁護士 工藤裕之

 秘密保護法違反の刑事事件は,暗黒捜査,暗黒裁判となる危険が大です。

 たとえば,ある「特定秘密」の取扱者である公務員に対し,漏えいするように唆(そそのか)したとして,警察がAさんを逮捕状により逮捕する場合,逮捕状には犯罪を構成する具体的な事実(これを「被疑事実」といいます)を記載しなければなりません。

 また,検察官が同様のケースでAさんを起訴して刑事裁判にかける場合,起訴状には犯罪を構成する具体的な事実(これを「公訴事実」といいます)の記載も不可欠です。

 秘密保護法では,何が「特定秘密」かも秘密ですが,警察官,検察官には「特定秘密」が提供されます。しかし,裁判官には一定の非公開手続でのみ提供されるにすぎず,被疑者,被告人,弁護人に「特定秘密」を提供する明文規定は一切ありません。

 そうなると,被疑者,被告人,弁護人は防御のためにどうすればいいのでしょうか。先ほどの被疑事実や公訴事実には「特定秘密」が具体的に記載されない危険があります。被疑者らは,何が「特定秘密」か分からず,具体的な防御対象も不明なまま,捜査,公判を闘わなければなりません。その結果,被告人は不充分な防御しかできず,有罪になってしまう重大な危険があります。これは,防御対象の明示・特定等を要求して,被疑者,被告人の権利を保障する憲法31条以下の規定に違反する重大問題です。

 さらに,「特定秘密」を漏えいするように唆したり,漏えいさせる相談をしただけで,当該公務員がまったく漏えいに着手しなくても,独立に教唆罪,共謀罪が成立するという恐るべき内容になっています。何としても,秘密保護法を廃止しなくてはなりません。


あなたのプライバシーも暴かれる

弁護士 嶋田彰浩

 特定秘密保護法には,「特定秘密」を取り扱う人が,情報漏えいをする恐れがないかを判断するために,プライバシーを調査し、管理する「適性評価制度」が規定されています。

 まず,秘密を取り扱う人というのは、公務員だけではありません。国との契約関係にある民間会社や大学,研究機関職員等で働く人も含まれます。しかも,調査対象となるのは,評価対象者本人だけではありません。家族や配偶者の親族,さらには同居人と広範囲に及びます。

 次に,調査項目は,特定有害活動(スパイ活動)やテロ活動に関する事項,さらには外国への渡航歴や、犯罪歴,薬物乱用歴,精神疾患歴,飲酒癖,借金情報等,重要なプライバシーに関わる事項が多数含まれます。しかも,テロは定義上,「政治上その他の主義主張に基づき,国家若しくは他人にこれを強要」することまで含まれます。

 そのため,たとえば,反原発や反消費税などを他人に主張するといった,私たちが普段イメージするような「テロ」とはかけ離れた,ありとあらゆる言論活動,政治活動などまで徹底的に調査されることになりかねません。

 ちなみに,適正評価は,評価対象者の同意を得て行うことになっていますが,同意しなければ,「特定秘密の取り扱いの業務」を行うことができないのですから,事実上拒否することなどできないでしょう。

 結局,情報漏えいをする恐れがないかを判断するという名目のもと,誰もが調査対象となる可能性があり,ありとあらゆるプライバシーを侵害することになりかねないのです。


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