残業代がもらえない
ご相談ください!
弁護士 田村優介
最近、残業代についてのご相談が多くなっています。よくある疑問についてまとめました。
1 入社するとき、社長に「ウチは残業代ないから」と言われたんだけど…
残業代は、労働基準法という法律によって支払が義務付けられています。「ウチは法律守らないから」なんて勝手な宣言は通用しません。入社の時に事前に説明されていても同じです。「年俸制だから」残業代がない、という理屈も通用しません。
他には「裁量労働制だから」という説明がされている場合がありますが、裁量労働制の採用には厳しい要件があり、これを満たしていないのにただ言葉だけ「裁量労働制」といっているケースが多く見られます。まずはご相談ください。
2 退職した後でも請求できる?
退職後であっても残業代を請求することは可能です。むしろ、多くの方が退職後に請求しています。
残業代は2年で消滅時効にかかってしまいます。この時効は毎月の給料日を基準に計算しますので、毎月毎月、時効にかかって1か月分の残業代が消えてしまうといえます。
会社に内容証明郵便を送るなどして支払請求の意思表示(「催告」といいます)をすれば、半年以内に裁判を起こすことによって時効中断をすることも可能ですので、できるだけ早めに弁護士にご相談されることをおすすめします。
3 タイムカードとかないんだけど…
会社にタイムカードなどの時間を記録するものがない、あるいは事実と異なった時間が記録されている(定時にタイムカードを押してからサービス残業……)場合、自ら労働時間を記録しておく工夫が必要です。
毎日の退社時に会社のPCの時計をカメラで撮影する、などの方法で請求している例があります。
タイムカードがある場合でも、退職してしまった後ですと、証拠が入手できない、ということもありがちです。この場合も在職中に写真撮影するなどして証拠を確保しておくことをおすすめします。
4 具体的にどのように進むの?
弁護士に依頼した場合の残業代請求の流れは、①まず会社に対して内容証明郵便によって残業代を直ちに支払うよう請求します。会社と代理人弁護士で協議をし、任意での支払がまとまればここで解決です。②協議がまとまらない場合には、労働審判や正式裁判など、裁判所を活用した請求を行うことになります。
学校での事故と損害賠償
子どもが体育の授業中に大怪我
弁護士 大八木葉子
Q 小学生の子どもが体育の授業中に大怪我をしました。どんな請求ができるのでしょうか。
1 まずは、日本スポーツ振興センターの災害共済給付の請求を検討して下さい(多くの学校でこの災害共済給付契約を締結しており、利用が可能です)。
これは、「学校の管理下」の災害に給付されるもので、学校側に安全配慮義務違反が認められなくても給付を受けることができます。この「学校の管理下」とは、授業中だけでなく、部活動中、休憩時間(始業前、昼休み等)、登下校中等も含まれます。
受けられる給付金は、①医療費(初診から最長10年間)、②障害が残った場合の障害見舞金、③死亡した場合の死亡見舞金です。
この給付は、必要書類を学校の設置者(教育委員会や学校法人等)を通してスポーツ振興センターに提出して請求します。ですから、この給付を受ける際には学校に相談してください。
この給付を受ける際の注意点は時効が2年ということです。
この給付の内容や請求方法等は、独立行政法人日本スポーツ振興センターのホームページに詳しく記載されていますので、参考になさってください。
2 次に、上記のセンター給付を受けても補われない損害(例えば慰謝料等)については、学校設置者(公立学校の場合は市町村等、私立学校の場合は学校法人)への損害賠償請求を検討します。
しかし、損害賠償請求をするには、上記のセンター給付の場合とは異なり、教師等に安全配慮義務違反が認められる必要があります。単に学校の授業中に事故があったということでは足りず、過失、すなわち、事故について予見可能性があり、その結果回避可能性があるにもかかわらず、結果回避措置をとらず事故が起こってしまったこと(わざと行った故意はもちろんです)が認められなければなりません。
この安全配慮義務違反が認められるかどうかについては、事故状況等を詳しくお聞きしながら検討していくことになります。
3 学校によっては民間の保険会社との保険契約を締結している場合もありますから、学校に確かめてください。
4 文部科学省は、今年の3月31日に「学校事故対応に関する指針」を出しました。
事故発生の未然防止や事故発生に備えた事前の取り組み、事故発生後の取り組み、事故に関する調査、被害児童生徒等の保護者への支援等が記載されています。
これらのうち、被害児童生徒等の保護者への支援ですが、支援に当たっては、被害児童生徒等の保護者の心情に配慮した対応を行うこと、段階に応じた継続的な支援を行うこと、児童生徒等の心のケアをはかること、前述した日本スポーツ振興センターの災害共済給付の説明をすること、コーディネーターによる事故対応支援等が記載されています。