労働事件のイロハ〜労働者側の観点から 弁護士 久保木 太一
城北法律事務所では、労働事件を多く扱っています。労働事件の知識や経験は、この地域でも随一だと思います。
事務所として扱う労働事件として多いのは、労働者側です(なお、使用者側もよく扱いますし、私個人でいえば顧問先との関係もあり、使用者側の方の事件もかなり多く扱っています)。
このコラムでは、労働者側の労働事件をどのように戦い、解決していくかについて、おおまかなイメージが伝わるように簡潔に述べます。
まず、大前提として知っておいていただきたいのは、労働法制は、基本的に労働者側に有利にできているということです。
それはなぜかというと、使用者と労働者との間には、現実的な力の差があります。目の前の生活や良好な職場関係のために、労働者は、多少の理不尽に耐えながら、使用者の顔色を窺い、命令に諾々と応じてしまう現実があります。
ですから、法律は、使用者と労働者との関係を対等にするために、労働者に「下駄」を履かせてくれるのです。別の言い方をすれば、労働法制は、労働者保護を目的とした法律になっています。
このことを知らず、使用者の言うことを絶対視してしまい、自ら権利を放棄してしまっている労働者が多いと感じます。この国では、労働者の泣き寝入りにより顕在化していない「潜在的労働事件」が多いのではないかと思います。
では、労働者は、この労働法をどのように使っていけば良いのでしょうか。解雇の場面を例に挙げて紹介します。
当事務所でもっとも多い相談ケースが、解雇に関する相談です。言うまでもなく、解雇は労働者の今後の生活に直結する死活問題ですので、弁護士に相談すべき場合が多いと思います。
ここでまず知っておかねばならないことは、労働法上、解雇は厳格に制限されているということです。解雇は労働者の生活を根こそぎ奪うものですから、そう簡単にすることはできません。
私が過去に見知ったケースですと、たとえば、上司にタメ口きいたから、とか、上司の呼び出しに数分遅刻したから、という理由で解雇をされたケースがありました。このような些細な理由で解雇は正当化されません。
また、能力不足を理由とした解雇もよくあります。このようなケースだと、使用者から言い詰められ、労働者は自信を喪失してしまい、解雇に応じてしまうこともままあるのですが、能力不足を理由とした解雇も、そう簡単には認められません。
能力不足の社員がいる場合、会社は、その社員に適切な指導・教育を施すなどし、能力を改善する努力をしなければなりません。十分な改善努力を行なってもなお能力が改善しない、といった事情がない限り、解雇はなかなか正当化されません。
加えて、就業規則などのルール違反を理由とした解雇(懲戒解雇)も、使用者が思っているほどには簡単に行えないものです。
イメージとしては、解雇とは、サッカーでいうところの「レッドカード」です。
会社のお金を横領した、とかそういう故意犯的な事情がない限り、一発レッドカードは行き過ぎているという場合が多いでしょう。
ルール違反に関しては、まずは注意、次に指導、それでも改善しなければイエローカード、それでも改善の見込みがない場合に、やむなくレッドカードという順序になるはずです。
具体的には、懲戒処分には、解雇のほかに、それよりも軽微な処分として、譴責(始末書)、出勤停止、減給などがあります。懲戒解雇をする前にこうした処分が打たれていない場合には、懲戒解雇は違法と判断される場合が少なくありません。
このように、労働者は労働法によって保護されて、解雇は厳しく制限されています。
生活に関わる重要な問題ですので、解雇をされた、もしくは、解雇をされそう、という方は、早めに弁護士に相談した方が良いでしょう。当事務所の弁護士であれば、労働事件に関する豊富な経験と知識によって、大きな手助けとなれるはずです。
まずは直接弁護士に会って相談するだけでも、視界が晴れる場合が多いと思います。ぜひ当ホームページの相談フォームをご活用ください。