城北法律事務所 ニュース No.53(2006.1.1)

目次

【平和を考える】改憲論の危険性
〜「立憲主義」を崩す自民党の憲法案は許されない 居酒屋で使える「北朝鮮の恐怖」への反論〜

【大盛況だった40周年憲法集会】

2005年11月28日、当事務所の創立40周年記念集会が豊島公会堂(池袋)にて行われました。おりから自民党新憲法案が発表されるなど、改憲が議論されている中で、地域(特に豊島、練馬、板橋)に根ざして人権を守るコンセプトのもと創立された当事務所は、憲法問題を依頼者ほか関係諸団体、一般市民に対して考えてもらうために憲法を正面から見据えた集会を企画しました。

基調講演を小森陽一東大教授(9条の会事務局長)、時事を扱ったコントを元「ザ・ニュースペーパー」の松元ヒロさんにお願いしました。また、平和の活動に取り組んでおられる市民の方にご発言をお願いし、最後に憲法アピールを採択しました。参加者は会場一杯の約800人でした。宣伝活動や当日の準備、事前の打ち合わせ等に力をお貸しいただいた皆様に、紙面をお借りして厚く御礼を申し上げたいと思います。

小森陽一さんは、「憲法をめぐる今日の状況」と題して、改憲勢力の真の狙いを明らかにされました。

そもそも、憲法とは「国民の権利を守るために、国家権力を制限する、国内で一番強い効力を持った法」であると定義することができます。このように権力者の権力の濫用を抑制して国民の権利を保障する考え方は「立憲主義」と呼ばれ、国際社会に普遍的な概念です。ところが、自民党から出された改憲案は、国民が国家を縛る立憲主義の概念を180度転換して、「国家が国民を縛るもの」に変容させるものであって、国民生活が破壊されかねないこと。

また、憲法9条は1項(戦争放棄)と2項(戦力の不保持、交戦権の否認)の2つで構成されていますが、自民党改憲案は2項を削除し、新たに「自衛軍」を創設するという内容になっています。これは、一見すると1項の戦争放棄が残るからそれほど悪くないのではないかと考える人もいるかも知れません。しかし、2項を削除するということは、単に今ある自衛隊やその専守防衛任務を認めるということにとどまらず、「集団的自衛権」(同盟国が攻撃されたから同盟国を守るために相手国を攻撃するという権利)の名の下にアメリカと軍事一体化が進められ、アメリカとイギリスとの関係のように海外でいくらでも戦争を行うことに繋がっていくこと。

小森さんが紹介された「居酒屋で話す北朝鮮の恐怖に対する3つの反論」をご紹介します。

問1 「北朝鮮は核兵器で日本を攻撃しようとしているのではないか?」 
答1 「いいえ。北朝鮮に近い日本海側は「原発銀座」と呼ばれています。核兵器を保持しなくても、通常兵器で核兵器同様の効果をあげることができるので核攻撃は必要ありません」

問2 「それでも北朝鮮は日本を核兵器で攻撃するのではないか」 
答2 「いいえ。チェルノブイリ原発事故を見ても分かるとおり、放射能汚染は大変な広がりを持ちます。近隣の国で核爆発が起きたら、朝鮮半島がまるまる放射能によって汚染されてしまいます。そこまでして北朝鮮が日本を攻撃しなければならない理由はありません」

問3 「でもテポドン・ノドンが日本に向かって打たれたではないか」 
答3 「北朝鮮が日本を攻撃しようと思ったら日本海側に着弾させるはずです。太平洋側に着弾したのは、平和協定が結べていない国アメリカのグァム基地を意識したからです。日本への攻撃の意図はありません」

改憲作業のための具体的な日程が取りざたされている今、集会当日採択された「憲法アピール」に従って、当事務所も所員一体となって、より一層憲法の価値を実現するため、努力していきます。