城北法律事務所 ニュース No.54(2006.8.1)
目次
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- 1 板橋高校卒業式事件で不当判決保護者に呼びかけただけで罰金20万円!?
- 2 刑事弁護教官に就任修習生とともに刑事司法の在り方を学ぶ
- 3 罰金10万円に執行猶予の異例の判断社会保険事務所職員の政党機関紙配布に「有罪」
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- 1 身近な法律相談
- 2 サラ金・個人再生奮闘記おびえているのは取立屋です
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- 1 特集 戦争をする国にしないために 国際貢献なら9条が1番!
- 2 - 教育基本法「改正」問題 - 子どもたちのココロを縛らないで
- 3 国民の目・耳・口を塞ぐ共謀罪 共謀罪ってなに?
- 4 「戦争する国」にするための国民投票法案憲法改正手続法案(国民投票法案)って必要なの?
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- 1 靖国神社参拝問題今こそ信頼関係を築く外交努力をすべき
- 2 残留孤児問題中国「残留孤児」国家賠償訴訟(関東)結審、来春判決へ
- 3 会社法の改正各種制度が大幅に変更されました
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- 1 薬害イレッサ事件東京支援連絡会を結成
- 2 ライブドア問題「ライブドア株主被害集団訴訟」について
- 3 本多事件1カ月平均85時間のサービス残業なんて許せない!
- 4 新人紹介よろしくおねがいします
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- 1 薬害C型肝炎裁かれた国の責任 大阪地裁で勝訴判決
- 2 スペインと私と…結婚しました
- 3 城北法律事務所40周年憲法集会パンフレット発行
目次
板橋高校卒業式事件で不当判決
保護者に呼びかけただけで罰金20万円!?
弁護士 小沢年樹
2004年3月、都立板橋高校卒業式の来賓だった教員OBの藤田勝久さんは、教職員に君が代斉唱が強制されている現状を、開式前に保護者らに説明したところ、学校当局から退出を要求され、抗議しつつも会場を出て結局卒業式に参加できませんでした。ところが、開式後の君が代斉唱時には強制推進派の都議の目前で、ほとんどの卒業生が着席したため、その「犯人探し」末に、すでに会場にいなかった藤田さんが「威力業務妨害」罪として起訴されてしまいました。
約1年間の審理を経て、弁護団は「藤田さんの保護者への呼びかけは平穏で、卒業式を妨害する内容ではない」から無罪であると主張し、多くの保護者らも「藤田さんの行動で混乱はなかった」と裁判で証言しました。検察官は「懲役8月」を求刑しましたが、今年5月30日の判決は、「罰金20万円」の不当な有罪判決でした。
判決は、保護者らが誰も目撃していない「藤田さんの資料配布に対する学校管理者による制止行為」を認定するなど、証拠を無視した事実誤認をしています。さらに、学校管理者が保護者も含めて式参加者全員に君が代の起立・斉唱を求めていた以上、これに反する言動は「威力業務妨害」にあたるというとんでもない判断を示しました。
これでは、例えば薬害事件の相手企業に対する抗議行動すら「犯罪」とされてしまいかねません。弁護団と藤田さんは、憲法の保障する良心の自由・表現の自由を守るため、控訴審での無罪判決を全力でかちとる決意です。
刑事弁護教官に就任
修習生とともに刑事司法の在り方を学ぶ
弁護士 工藤裕之
私は、今年の1月から最高裁判所に設置されている司法研修所の刑事弁護教官に就任しました。
刑事弁護教官とは、司法試験に合格した後、法曹(裁判官、検察官、弁護士)の資格を取得するために司法修習生に採用された人たちに対して、刑事弁護科目の講義等を行う教官のことです。
かく言う私も、1989年から1991年までの2年間、司法修習生として教官から教わっていました。
今度は私が、若い司法修習生に対し、教官として、刑事弁護の実務や現在の刑事司法の問題(人質司法、調書裁判等の弊害)について、自分自身の刑事弁護の経験を踏まえて、講義ができる機会を与えられたわけですが、非常に幸運なことだと思います。法曹になる人たちに、日本の刑事司法の問題を理解してもらい、少しでも改善につなげられたらと考えています。
このように考えてはいるものの、1クラスの修習生が70人以上いますので、起案の添削、採点で多くの時間がとられてしまうことや修習期間が短縮されたことで、カリキュラムが非常に詰まってしまい、修習生にも余裕がなくなっている現状からすると、どこまでできるか不安もありますが、3年間修習生とともに、被疑者、被告人の人権ないし利益の擁護とは何かを具体的に勉強したいと思っています。
今後ともよろしくお願いします。
罰金10万円に執行猶予の異例の判断
社会保険事務所職員の政党機関紙配布に「有罪」
弁護士 菊池 紘
休日に自宅付近で「しんぶん赤旗」号外などのビラを配り、国家公務員法違反(政治的行為の禁止)に問われた目黒社会保険事務所職員の堀越明男さんにたいし、東京地裁は6月29日、有罪判決を下しました。罰金10万円、しかし執行猶予2年でした。罰金に執行猶予をつけるのは、極めて稀なことで、ここに裁判官の自信のなさがあらわになっています。
私たち弁護団は、公務員の政治的行為を一律全面的に禁止する国公法と人事院規則の定めは、表現の自由を保障した憲法21条に違反すると主張し、これを合憲とした猿払事件最高裁判決(1974年)の変更を求めてきました。1、2審の無罪を覆した猿払事件判決は憲法学会やマスコミから嵐のような批判をあび、それ以来ほぼ30年間にわたり国公法違反での起訴はないまま経過し、この規制はなかば死文化してきていました。
今回の判決は、猿払事件最高裁の判断をそのまま引用した何の創造性もない味気ないものでした。「反戦ビラ」を配っただけで住居侵入に問われた人に、昨年暮れに逆転有罪とした東京高裁判決、さらに直前の板橋高校事件・有罪判決に続く、今回の判断でした。
翌日の東京新聞の社説は「自由が萎縮せぬように」と題し、「問題のビラには『憲法を守ろう』という趣旨が書かれてあった。表現の自由が安易に損なわれてはいけない。民主主義で最も大切なものとは何かを問い直すきっかけにしたい」とまとめています。