城北法律事務所 ニュース No.54(2006.8.1)

目次

靖国神社参拝問題
今こそ信頼関係を築く外交努力をすべき

弁護士 大山勇一

1 靖国神社は平和日本建設のために犠牲になった人を祀っているのだから、首相が参拝するのは当然だという意見があります。

しかし、靖国神社に祀られているのは、戦死した軍人・軍属に限られています。広島・長崎の原爆被害者、沖縄地上戦の被害者、東京などの空襲被害者などの一般市民や外国人は含まれていません。そもそも、靖国神社に祀られている戦死者と「平和日本建設」は結びつくのでしょうか。仮に先の大戦に日本が勝利していたとしたら、悪夢のような軍国主義がその後も継続していたことでしょう。戦争に負けて初めて不充分ながらも自由や民主主義が日本にもたらされました。このように考えると、戦死者は、決して平和国家建設には結びつかない侵略戦争に荷担させられ、国に命を奪われたと言うべきではないでしょうか。

2 首相は、平和のために参拝をしているのだから、参拝が戦争につながると考えるのは的はずれだという意見もあります。

しかし、靖国神社は、先の大戦を、他国への侵略だとは認めておらず、国のために命を投げ出すことを奨励しています。アジアの民衆の悲惨な死については一顧だにしません。このような歴史認識を持つ靖国神社に首相が参拝することで、アジア諸国は「日本は再び戦争を始めるのではないか」と警戒心を強めています。平和のためになすべきことは、隣国との信頼関係を築いていく外交努力なのです。


残留孤児問題
中国「残留孤児」国家賠償訴訟(関東)結審、来春判決へ

弁護士 田見高秀

今年5月24日、東京地方裁判所で中国「残留孤児」国家賠償請求事件の関東訴訟が結審した。判決は2007年1月30日である。結審の日、関東訴訟池田原告団長は、裁判官に陳述した。 「東京地裁には、全国の原告2192名のうち1092名が参加しています。子供がすこやかに成長するうえで、親の愛は不可欠です。私たちは、最も親の愛を必要とするときに、親と生き別れ、親の保護を受けることなく、中国の地で、不安と傷だらけの中で成長することを余儀なくされました。

自分が日本人であることを知ってからは、私たち孤児が、どれ程親と会いたい、どれ程自分の本当のことを知りたい、どれ程祖国に帰りたいと思ったことか、判っていただけますか。国は、長い年月、人のこころ、孤児たちのおもいを受けとめようとしなかったのです。

裁判官の先生。政治を動かし、孤児問題の全面解決をはかるには、私たちが、どうしても東京地裁で勝訴しなければならないのです。
私たちは、みんな高齢です。せめて、これからの残された人生だけでも、普通の日本人として人間らしく生きられるようにして欲しいのです。ぜひとも、この私たちの思いを受けとめてください」。

7月24日神戸地裁でも結審し、判決日が本年12月1日(東京地裁に先行する)と決まった。真の意味で、正念場の年である。ご支援をお願いします。


会社法の改正
各種制度が大幅に変更されました

弁護士 小薗江博之

今年の5月から会社法が改正されました。カタカナ表記(文語体)であったのが、今回ひらがな(口語体)になり、読みやすくなりました。

改正の第1に、今まで株式会社を設立する場合、資本金は最低1000万円必要でしたが1円から株式会社を設立できるようになりました。そのため設立費用を削減することができます。

第2に、有限会社の規定の多くが、株式会社で適用されることになりました。たとえば取締役は1名でも認められる(以前は最低3名必要でした)ので、経営に関与しない名目上の取締役は設置しなくてよくなりました。

第3に、5月以降新規に有限会社を設立することができなくなりました。 ただし、いま存在する有限会社はそのまま存続します。株式会社への組織変更も簡単にできます。

一方、従来の会社法にはなかった合同会社が新設されました。出資者の責任は有限責任ですが、組織運営を自由にできる会社です。利益の分配や議決権を出資の比率以外の独自基準(商品開発の貢献度など)で決めることができます。

その他、一部の株式の譲渡制限、取締役会での書面決議、取締役の任期、取締役の無過失責任、株主代表訴訟の制限、同一市町村での類似商号登記規制の撤廃、会計参与の設置など、各種制度が大幅に変更されました。

詳しい説明書・パンフレットは、いろいろなところから発行されていますので、それぞれご参照下さい。