城北法律事務所 ニュース No.54(2006.8.1)

目次

薬害C型肝炎
裁かれた国の責任 大阪地裁で勝訴判決

弁護士 武田志穂

現在、日本には約350万人のウィルス性肝炎の患者がいると言われています。肝炎ウィルスは血液を通じてしか感染することはありません。なぜ、こんなにも多くの肝炎ウィルスの感染者が存在するのでしょうか。

近時、肝炎の感染に絡み、ふたつの判決がでました。ひとつは平成18年6月16日の札幌B型肝炎訴訟最高裁判決です。この裁判の原告は、予防接種時の注射針の連続使用によりB型肝炎ウィルスに感染させられた患者たちでした。最高裁は、国の集団予防接種における肝炎の感染予防対策に関する責任を断罪し、原告らの請求を認める判決を下しました。遅くとも昭和26年には、肝炎が血液を通じて感染する病気であることを知りながら、国は昭和63年頃まで集団予防接種における注射針の連続使用を続け、感染者の拡大を放置していたのです。

そしてもうひとつの判決は、平成18年6月21日に言い渡された薬害C型肝炎の大阪訴訟の判決です。この訴訟では、血液製剤であるフィブリノゲン製剤、第9因子製剤により肝炎ウィルスに感染させられた患者らが原告となっています。これらの製剤は、有効性や安全性がまともに検討されることなく承認された製剤でした。判決は、上記血液製剤の承認手続を「粗雑な資料」に基づき「杜撰と評価すべき」と断じています。

また、承認後の国の対応についても、「医薬品の安全性を確保するという立場からは、ほど遠い、お粗末な面が認められ、その意識の欠如ぶりは非難されるべきである」とまで断罪しています。そして、かかる国の対応の無責任さは許されるべきではないとして、大阪地裁は原告勝訴の判決を言い渡しました。

肝臓は沈黙の臓器と言われ、異常が生じてもなかなか自覚症状が出ないことがあります。肝臓に入り込んだウィルスに対して、身体の免疫機構は何とかウィルスを排除しようとウィルスと闘い続け、慢性的に炎症を起こすことになります。それが5年、10年と長い間続くと、肝臓が不可逆的なダメージを負ってしまい、肝硬変や肝ガンとなってしまうのです。

肝炎を国民病としてしまった国の責任は極めて重いにもかかわらず、上記大阪判決に対し、国は不当にも控訴しました。今年の8月30日には、薬害肝炎の福岡訴訟の判決が言い渡される予定です。福岡判決にもご注目ください。


スペインと私と…
結婚しました

弁護士 松田耕平

オーレ! スペインに行って来ました。スペインといえば情熱の国。フラメンコやサッカーなども盛んです。訪れた都市は、バルセロナ、グラナダ、ロンダ、マドリード、トレドの5都市。バルセロナのサグラダ・ファミリアやグエル公園などガウディが遺した建築物、グラナダのアルハンブラ宮殿をはじめとする精緻で華美なイスラム様式の遺跡、深い谷を繋ぐ大きな石造りの橋が印象的なロンダ、首都らしく都会的だけれどもプラド美術館やソフィア王立美術館など芸術も盛んなマドリード、美しい街並みを誇る世界遺産都市トレド。どの都市も情熱の国の名に負けない、すばらしい都市ばかりでした。

このように書くと仕事で行ったんじゃないの? と思われるかも知れませんが、その通りです。今回はプライベートで行ってきました。ただ、単なる旅行で行ったのではなく、挙式と新婚旅行をかねたものです。

ということで、ご報告が遅れましたが、今年、結婚しました。

私も今年で30歳を迎えます。昨年作成した当事務所の40周年記念パンフレットにも書きましたが、私の目標とするダンディー弁護士となるには大きな節目といえます。この大切な時期に、大切な人を見つけることができたのは望外の喜びです。とはいえ弁護士5年目、夫としては1年目ということでまだまだひよっこです。

守るべき人が増えたことに伴う責任の重さを自覚して、今まで以上に業務に邁進していく所存です。


城北法律事務所40周年憲法集会
パンフレット発行

小森陽一東大教授の講演
・改憲論の危険性
・「立憲主義」を崩す自民党の憲法案は許されない
・居酒屋で使える「北朝鮮の恐怖」への反論