城北法律事務所 ニュース No.55(2007.2.15)
目次
- Page 2
- 1 佐々木芳男弁護士を偲んで
- 2 佐々木芳男さんのこと「きらめく日々」
- 3 佐々木さん、さようなら
- Page 3
- 1 法律相談 Part 1
- 2 法律相談 Part 2
- Page 4
- 1 「戦争のできる国」づくりにつながる改憲手続き法案(国民投票法案)を廃案に
- Page 5
- 1 一緒に「がんばろう」
- 2 さあ、全面解決へ!「東京大気汚染裁判」
- 3 高年齢者継続雇用制度の導入にあたって
- 4 生存権裁判- 生活保護老齢加算廃止の取り消しを求める
- Page 6
- 1 今年こそ大転換の年に
- 2 区民の財産を無償貸与 板橋・加賀保育園
- 3 「ザ・弁護士」
- 4 映画「それでもボクはやってない」
- Page 7
- 1 「第九」と憲法(9条)
- 2 空前絶後の薬害・イレッサ
- 3 ライブドア株主被害集団訴訟の現状
- 4 情も理もない判決 中国「残留孤児」国賠訴訟東京地裁判決
- Page 8
- 1 新しい所員を紹介します
- 2 最強の敗者 ~自由法曹団ソフトボール大会~
- 3 お知らせ
法律相談 Part 1
弁護士 武田志穂
【「後見制度」ってなんですか?】
成年後見、任意後見、こんな言葉を聞いたことがありますか? 一人暮らしのおじいちゃんがいるけど、最近少しぼけてきちゃったみたいだし、リフォーム詐欺にでも遭わないか心配だ、ということはありませんか? 今は自分は元気で何でもやっているけど、高齢になったとき、誰かに面倒をみてもらうことをちゃんと頼んでおかないと不安だということはありませんか?
【高齢者の生活を守るために】
そういった悩みを解決する制度として、成年後見や、任意後見の制度があります。
成年後見は、法定後見制度(法律の定めにより、事後的に、判断能力が欠如した人等に対して後見人等をつける制度)のひとつで、痴呆・知的障害などにより判断能力が失われている人に対して、後見人をつける制度です。成年後見人が何をするかというと、未成年の子供の両親と同じようなものだと考えてください。本人に判断能力が欠けているため、代わりに金銭の管理をし、本人がした不利益な法律行為を後から取り消すことができます。判断能力が全くないとは言えないけど、少し劣っている、不充分だという人のためには、保佐や補助などの制度があります。補佐人や補助人の同意なしでした特定の行為について、補佐人や補助人が取り消すことができるようになります。リフォーム詐欺などに引っかかってしまったとしても、補佐人や補助人の同意なしで契約した場合は、取り消すことができるのです。
また、任意後見制度とは、判断能力がしっかりしているうちに、あなたがこの人に自分の財産の管理を任せたいと思っている人と任意後見契約を締結しておく制度です。後に判断能力が不充分となったときに、親族等が家庭裁判所に、任意後見監督人の選任の申立てし、家庭裁判所は、本人の判断能力が不充分な状況にあると認めるときは、任意後見監督人を選任します。
この任意後見監督人の選任によって任意後見契約の効力が発生し、あなたの選んだ人があなたの任意後見人として就任することになるのです。
もし現在冒頭に示したようなお悩みをお持ちでしたら、是非お気軽にご相談ください。
法律相談 Part 2
弁護士 上野 格
【遺言はするべきか】
私名義の土地建物に、長男の家族と同居しています。妻は他界し、次男は別に所帯を持っています。長男に老後の面倒を見てもらう代わりに土地建物を相続させたいのですが、遺言を書くべきでしょうか。今から兄弟に差をつけるようで、気が進まないのですが。
【公正証書遺言を作成するのが適切です】
仲の良かった家族も、遺産分割に直面すると対立してしまうことがよくあります。次男に配偶者がいれば「貰えるものは貰ってくださいな。うちだって楽じゃないのよ」などと言われてしまいます。
また民法の規定や実務の取扱では介護の苦労は適切に評価されないので、「苦労ばかり負担した」と嘆く方が多いのが実情です。長男に不動産を相続させたいのであれば遺言をすべきです。次男が平等分割を主張すれば、長男が土地建物を明渡して売却するしかありません。
遺言を書く方法ですが、手軽さでいえば自筆遺言です。民法では、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならないとされています。ワープロ打ちでは無効です。封印されていなくても有効ですが、不正を防ぐ意味で封印すべきです。なお、封印されている遺言は家庭裁判所で開封・検認する必要があります。
遺言は偽造だと争われたり、遺言そのものが破棄されたり隠されたりすることがあります。遺言の確実な実現のためには、公証人が内容や成立を証明する公正証書遺言を作成すべきです。
遺言の中で、遺言執行者を指定しておくと、遺言執行者が銀行預金を解約したり、不動産の相続登記をすることができます。遺産分割協議書を作る必要がありませんので、相続人の反対意見にかかわらず速やかに遺言の内容を実現できます。遺言執行者は弁護士に依頼しておくのがよいでしょう。
なお、次男には「遺留分」として、本来の相続分の2分の1は、遺言の内容にかかわらず相続する権利があります。土地建物の4分の1を次男が相続する権利があるわけですが、長男は遺留分を時価に換算した価格で賠償することで、土地建物を全て相続できます。長男を受取人とする1千万円程度の生命保険をかけておくと万全でしょう。
長男が自分の介護をすることを相続の条件とすることもできます。その場合には、長男や次男に遺言を見せておくことも有効です。誰が介護すべきかでもめないでしょう。長男が守らなければ遺言を書き換えましょう。日付の新しい遺言が有効となります。