城北法律事務所 ニュース No.55(2007.2.15)
目次
- Page 2
- 1 佐々木芳男弁護士を偲んで
- 2 佐々木芳男さんのこと「きらめく日々」
- 3 佐々木さん、さようなら
- Page 3
- 1 法律相談 Part 1
- 2 法律相談 Part 2
- Page 4
- 1 「戦争のできる国」づくりにつながる改憲手続き法案(国民投票法案)を廃案に
- Page 5
- 1 一緒に「がんばろう」
- 2 さあ、全面解決へ!「東京大気汚染裁判」
- 3 高年齢者継続雇用制度の導入にあたって
- 4 生存権裁判- 生活保護老齢加算廃止の取り消しを求める
- Page 6
- 1 今年こそ大転換の年に
- 2 区民の財産を無償貸与 板橋・加賀保育園
- 3 「ザ・弁護士」
- 4 映画「それでもボクはやってない」
- Page 7
- 1 「第九」と憲法(9条)
- 2 空前絶後の薬害・イレッサ
- 3 ライブドア株主被害集団訴訟の現状
- 4 情も理もない判決 中国「残留孤児」国賠訴訟東京地裁判決
- Page 8
- 1 新しい所員を紹介します
- 2 最強の敗者 ~自由法曹団ソフトボール大会~
- 3 お知らせ
「第九」と憲法(9条)
弁護士 田場暁生
「第九」には「すべての人々は兄弟となる」「抱き合え、幾百万の人々よ!この口づけを全世界に与えよう!」(外山雄三訳)の歌詞があります。「第九」には、連帯して新しい時代を作り上げて行こうというベートーヴェンの思いが表れています。「第九」が作曲されたフランス革命直後の(貴族の特権を廃止して)、連帯して自由・平等な社会を作っていこうという理想は、簡単に社会に定着したわけではありません。しかし、その理念を歌いあげた「第九」は、歴史の試練に耐え、今、普遍性を持って世界で愛されています(「第九」は欧州連合の歌にもなっています)。
9条の理念も、「第九」が歌いあげた理念同様、その先進性故に簡単に世界に定着するものではないかもしれません。しかし、文化や宗教の違いからくる争い、「格差社会」と言われるように競争によって分断された社会、このような争い・分断を乗り越えて新しい社会・平和の形を作ろうとする憲法の理念が輝きを増すのはまさに21世紀のこれからです。
9条は、歴史に耐え、「第九」のような(普遍性を持った)名作と言われる日が必ず来ます。世界に誇れる憲法9条を、時の政府によって簡単に変えさせるわけにはいかない、強くそう思っています。
空前絶後の薬害・イレッサ
弁護士 阿部哲二
イレッサは、2002年7月に世界で最初に承認された肺ガン用抗ガン剤です。わずか4年余りで700人近い人が、その副作用で死亡しています。延命効果はありません。私たちは、このようなクスリを販売しているアストラゼネカ社、輸入承認を与えた国の責任を追及して裁判をしています。
昨年11月からは大阪地裁で証拠調べが始まりました。証人には京都大学医学部の福島雅典教授。教授は延命効果がなく副作用死を引き起こすイレッサの承認は間違いであり、これは空前絶後の薬害である、と証言しました。そして、EUでは販売されず、アメリカでは新規患者への投与が禁止されているイレッサが日本で引き続き売られていることは、日本人が巨大製薬資本のカモにされている、それを守るべき国が全く逆のことを行っている、と鋭く指摘されました。
ガン患者にとって残された半年、1年は大切な日々です。そして、ひと月でもふた月でも生命が延びるならと抗ガン剤治療に取り組むのです。その抗ガン剤が大切な半年、1年を逆に奪ってしまったらノ。ガン患者の生命の重さを問う、これがこの裁判の意義です。支援連絡会も結成され、厚生労働省、裁判所宛の署名にも取り組んでいます。ぜひ、ご支援下さい。
ライブドア株主被害集団訴訟の現状
弁護士 大川原栄
私が加わっている「ライブドア株主被害集団訴訟」には、3200名を超える原告が参加し総額約187億円を請求している。マスコミは、民事裁判提訴時においてはそれなりに報道をしたが、提訴後の訴訟には殆ど関心を持たなくなった。
そのような状況下で、刑事裁判の被告人になり同時に民事裁判の被告になった元役員あるいは公認会計士は、刑事裁判で争わなかったこと(反省しているということを言うため)を民事裁判では争うという対応を始めた。刑事裁判で争っては裁判所の「印象」(法律的には「情状」)が悪くなるということで争うことはしないが、民事裁判においては「印象」など関係ないということで露骨に対応しているということだ。
結局のところ、被告(人)は本気で反省してはいないということを露呈しているが、マスコミはほとんどといっていいほど報道していない。
このような状況において、何ら横の連絡網を持たず、組織的活動の経験などがない原告たちは、自らの被害を自らで回復するため、「原告連絡会」を結成して動き始めている。
「巨悪を眠らせるな」は、検察だけではなく、私たち弁護士、そして国民の責務でもあると実感している。
情も理もない判決 中国「残留孤児」国賠訴訟東京地裁判決
弁護士 松田耕平
今年1月30日に下された「情も利もない判決」。私自身、弁護士登録以来4年以上もこの裁判に関わってきたこともあり、「残留孤児」の惨状を理解した温かな判決が下されると確信していました。
ところが、東京地裁の加藤謙一裁判長は、「残留孤児」の切実な訴えをばっさりと切り捨て、請求棄却判決を下したのです。判決は、国には「残留孤児」を日本に帰国させる法的義務はなく、このような義務がない以上、帰国の遅れによるハンディを支援すべき義務もないと述べ、「残留孤児」が戦後、長期間日本に帰ることができず、ようやく帰国を果たした後も充分な支援もなく社会に放り出され、困難な生活を強いられているという、日本政府による戦後の「残留孤児」政策による被害について、戦争による被害だと切り捨てています。まさに一片の「情」もない無慈悲な判決というほかありません。
そればかりか、判決は論理構成も支離滅裂で、文章としても読めたものではありません。その意味で、情だけでなく「理」もない判決といえます。しかし、判決が酷ければ酷いほど、逆に闘志も湧いてきます。
「残留孤児」の方々が心から「日本に帰って良かった」と思える日が来るまで、更に頑張りますので、皆様もさらなるご理解とご支援をお願い致します。