城北法律事務所 ニュース No.56(2007.8.1)


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身近な法律相談

弁護士 田見高秀

Q 会社を買取したら、店舗貸主から店舗 賃借貸契約を解除された! 店舗を明け渡さなければならないか?

T弁護士 Aさん、おひさしぶりです。先月、西口にもお店を開かれたそうですね。ご盛況ですなー。

Aさん いや、先生。今日は、その店の相談なんです。
実は、あのお店はB会社が以前からやっていて、私が全株式を買い受けて、同じ中華料理のお店ですが、会社の商号を新しくして役員も全部交替しました。お店はビルオーナーのCさんの持ち物で、B会社がCさんから店舗を賃借する契約をしていて残りの期間がまだあったんです。会社は同じだから、当然、契約を引き継げますよね。

T弁護士 何か問題が起きたんですか。

Aさん 今月、オーナーのCさんから、B会社との契約書の中に「B会社が株式を譲渡したり、役員を変更した場合も、契約解除できる」という特約があるので、契約違反で契約を解除する、明け渡せという通知が来たんです。どう対処すればいいでしょうか。

T弁護士 民法612条に「賃借人が賃貸人の承諾なく賃借物を第三者に譲渡したときは、賃貸人は賃貸借契約を解除することができる」とあります。しかし最高裁判所平成8年10月14日判決で「賃借人が法人である場合、その法人の構成員や機関に変動が生じても、法人格の同一性が失われないから、賃借権の譲渡には当たらない。契約解除はできない」とされました。ただ、この判例は「賃貸人は、会社との間で賃貸借契約を締結する際、賃借人が賃貸人の承諾を得ずに役員や資本構成を変動させたときは契約を解除することができる旨の特約をすることができる」から賃貸人に不利益はないと続けていて、特約があれば解除できるとも読めるものだったんですね。

Aさん うちの場合は、特約があるから・・・。ダメですか。

T弁護士 いや、脱法的な無断譲渡と評価されなければ、特約があっても、解除できないという判例が、昨年、東京地方裁判所で出されています。東京地裁の平成18年5月15日の判例ですね。妙な偶然ですが、これも中華料理チェーン店の判例ですね。この二つの判例の立場なら、Cさんの主張に対抗できますよ。コピーを差し上げますから、これを示して交渉されたら良いと思います。

Aさん 分かりました。勇気が出ました。よく話しあってみます。いざとなったら代理をお願いしますよ。

T弁護士 分かりました。

Aさんは、意気揚々と事務所を後にされた。再見。