城北法律事務所 ニュース No.56(2007.8.1)
目次
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- 1 憲法改正は最大の税金の無駄遣い一番の目的は戦争ができる国づくり
- 2 コラム刑事裁判はリンチの場ではない~刑事弁護人の役割とは~
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- 1 身近な法律相談
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- 1 Oさんの勝利的和解「遺憾の意」ではなく「謝罪」を
- 2 刑事実名報道は問題判決が下るまで実名報道は控えるべき
- 3 新支援策が実現!中国「残留孤児」 国家賠償訴訟終結へ
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- 1 加賀保育園裁判保護者の権利を守るために
- 2 東京大気汚染公害裁判ついにやった! 全面解決へ
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- 1 ライブドア株主被害・集団訴訟の展望1年後には被害者の全面救済が図れるように
- 2 光第八保育園裁判職員の退職ー最大の被害者は子どもたち
- 3 ただいま弁護修習中弁護修習ー 五感で学んだこと
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- 1 石川島播磨思想差別事件・和解調印石播が思想差別を反省 解決金10億
- 2 薬害イレッサ訴訟クスリの有効性なし 706人が副作用死
- 3 未払残業代請求裁判横浜地方裁判所 完全勝訴!
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- 1 弁護士在職40年若い弁護士に大きな刺激を受けて
- 2 グアムへ行ってきました
Oさんの勝利的和解
「遺憾の意」ではなく「謝罪」を
弁護士 津田二郎
「裁判所は、ノ被告が原告に謝罪する意味を込めて和解による解決をすることが最も適切であると考えノ」
松田耕平弁護士と受任したOさんの事件の和解条項の一節である。
Oさんは会社の非道な扱いに納得できず、助けを求めて労働組合、労働基準局などに相談し、ついに松田弁護士と出会い訴訟提起した(私は訴訟提起から参加)。この事件の争点は(1)退職勧奨があったのか、(2)いやがらせ的な職務変更があったか、であった。
裁判所は、和解案で(1)かなりの回数の面談を行ったこと、(2)職務を頻繁に変更したことを認めた。そして裁判官が提示した和解案には、会社が「遺憾の意を表する」との記載があった。
しかしOさんは、「遺憾の意では伝わらない。自分が分かる言葉で解決して欲しい」と裁判官に涙ながらに迫った。会社は、「謝罪」という文言は受け入れないという立場を変えなかったが、裁判官は、「自分が代わりに謝って済むならお詫びしたい気持ちだ」と述べ、Oさんの意を酌む形で冒頭の和解条項を作成し会社を説得した。ここに本件の本質が現れている。
Oさんは、「悔しくて眠れない日もあったけれど、いろいろな人に支えられてここまできた。悔しい気持ちは変わらないけど、頑張った甲斐が少しはあった」と少し涙を浮かべて笑う。
Oさんの、いわれない不当な扱いをされた怒りを背景にした、一歩も引かない強さと誠実さが、裁判官の心を動かし、解決に導いたものだと思う。
刑事実名報道は問題
判決が下るまで実名報道は控えるべき
弁護士 大山勇一
電車内で痴漢をしたという疑いで現行犯逮捕された被疑者の刑事弁護をしています。容疑の内容は、終電近くの混雑した車内で前に立っていた女性の体に触れたというものでした。留置所で接見をして本人から事情を聞いてみたところ、意図的に触ったのではないということが分かりました。意図的に触っていないのであれば犯罪は成立しません。勾留決定に際してこのことを裁判官に強く訴えたところ、幸い勾留請求が却下となり、3日で身柄解放され、会社に復帰することができました。
しかし、身柄解放された後になって、複数のマスメディアが被疑者の実名入りで事件を報道しました。実名で報道されると、多くの国民は被疑者が犯罪者であると信じてしまいます。また今ではインターネットで報道記録が半永久的に残ってしまうので、いつまでも汚名がそそげません。実名報道のために被疑者の社会的名誉が著しく傷つけられました。被疑者の家族も精神的に苦しめられています。
刑事裁判の大原則に「無罪推定の原則」があります。有罪であることが立証されるまでは被疑者・被告人は無罪であるとして扱わなければならないというものです。しかし、現実には社会的影響があるとは言えない一般市民でも、逮捕された段階で実名報道されています。そして、後に不起訴や無罪となっても報道がされることは少なく汚名はそそがれないのです。有罪との判決が下るまでは一般市民の犯罪については実名報道を控えるべきです。
新支援策が実現!
中国「残留孤児」 国家賠償訴訟終結へ
弁護士 松田耕平
2002(平成14)年12月に東京地裁に提訴して約4年半。今年1月30日にはひどい内容の東京地裁判決が下されたりもしましたが、安倍総理による「心から日本に帰ってきて良かった」「日本人として尊厳の持てる政策を」という指示の下、原告団・弁護団は一致団結して国会議員・厚労省官僚と協議を重ねた結果、7月9日、ついに中国残留邦人(中国「残留孤児」だけでなく、中国「残留婦人」も含む)に対する新支援策が決まり、原告団・弁権団はこれを受け入れることに決まりました。翌10日には原告約80名が安倍総理と面談し、一人一人握手を交わしました。新支援策の詳細については省略しますが、従来の生活保護制度の枠内での支援からは大きく脱却した内容となっており、原告団代表の池田澄江さんは、「今回の支援策は私たちの凍った心を溶かしてくれた。生まれて初めて祖国の温かさを感じている。日本人として生まれてよかった。日中友好の架け橋として、日本人としての誇りを持って生きていきます」と述べています。
原告が高齢であったため早期解決を目標に駆け抜けてきた4年半。これは私が弁護士になってからの年月とほぼ重なります。色々大変なことも多かったですが、原告の皆さんの笑顔で全てが報われました。ですが、新支援策が真に実効あるものとなるかどうかはまだ分かりません。今後も新支援策の検証と国との協議が不可欠です。これからも力を抜かず、原告のみなさんと一緒に頑張っていきたいと思います。