城北法律事務所 ニュース No.56(2007.8.1)
目次
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- 1 憲法改正は最大の税金の無駄遣い一番の目的は戦争ができる国づくり
- 2 コラム刑事裁判はリンチの場ではない~刑事弁護人の役割とは~
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- 1 身近な法律相談
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- 1 Oさんの勝利的和解「遺憾の意」ではなく「謝罪」を
- 2 刑事実名報道は問題判決が下るまで実名報道は控えるべき
- 3 新支援策が実現!中国「残留孤児」 国家賠償訴訟終結へ
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- 1 加賀保育園裁判保護者の権利を守るために
- 2 東京大気汚染公害裁判ついにやった! 全面解決へ
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- 1 ライブドア株主被害・集団訴訟の展望1年後には被害者の全面救済が図れるように
- 2 光第八保育園裁判職員の退職ー最大の被害者は子どもたち
- 3 ただいま弁護修習中弁護修習ー 五感で学んだこと
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- 1 石川島播磨思想差別事件・和解調印石播が思想差別を反省 解決金10億
- 2 薬害イレッサ訴訟クスリの有効性なし 706人が副作用死
- 3 未払残業代請求裁判横浜地方裁判所 完全勝訴!
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- 1 弁護士在職40年若い弁護士に大きな刺激を受けて
- 2 グアムへ行ってきました
石川島播磨思想差別事件・和解調印
石播が思想差別を反省 解決金10億
弁護士 菊池紘
1月20日の朝日新聞は「思想差別に10億円 石川島播磨、解決金168人に」との見出しで「労働組合活動や特定政党への支持を理由に昇進などの差別を受けたとして、差額賃金などを求めていたのは、東京、神奈川、愛知、兵庫、広島の6事業所で造船や設計などに携わる現職44人とOB従業員124人。・・・」と報じています。
造船重機械の大企業・石播は、日産と並んで、徹底した反共差別で労働者を分断してきたことで有名でした。今回の和解の内容を知るなら、少しでも会社の所業を知っている人は、これがあの石播の態度表明かと驚かずにはいないでしょう。
会社は「賃金・資格、仕事、行事参加などで差別的な人事管理が行なわれたと受け止められてもやむを得ない状況があったことを認め」それにより当事者が「癒しがたい苦痛を感じたことを重く受け止め、反省の意を表明」しました。そして「今後、労務政策として再発防止を徹底することを確約」しました。
そして再発防止のため、会社は「教育訓練を受けさせないこと」「ビラの配布などの活動を不当に妨害すること」など細かい禁止事項を明らかにした資料を全従業員に配布するとともに、ホームページに掲載しました。
こうして、労使はあたらしい石播へむけ、再出発することになりました。70年代から石播の活動家とともに数多くの権利のたたかいにかかわってきた私にとっても、おおきな決着となりました。
薬害イレッサ訴訟
クスリの有効性なし 706人が副作用死
弁護士 阿部哲二
肺がん用抗がん剤イレッサの副作用死について、企業と国の責任を問う薬害イレッサ訴訟は、提訴から2年半が経ちました。この2年間でイレッサをめぐる状況には大きな変化があります。
世界で行われたイレッサの有効性をめぐる試験では、イレッサに延命効果が認められないことがはっきりしました。その結果、EUでは承認申請が取り下げられ、アメリカでは新規患者への投与が禁止されました。
日本で行われたドセタキセルという既存薬との比較試験でもイレッサの有用性を示すことは出来ませんでした。
もはや、イレッサにクスリとしての有効性がないことはハッキリしたのです。一方、この2年余でも変わらないのは企業と厚労省の態度です。企業は世界で売れないイレッサを日本で売り続け莫大な利益をあげています。厚労省はいったん承認したものを取り消そうとはしません。その結果、承認から5年弱で706人もの副作用死が報告されているのです。
裁判は原告側の証人尋問を終了し、企業と国が申請する学者証人が登場します。この学者の方々と企業との間に研究協力費などの名目でのお金のやりとりはないのか、など徹底して監視の目を光らせ、その証言の問題点、矛盾点を浮かび上がらせていきたいと思っています。来年には証拠調べも終了し解決に向かって大きなヤマ場を迎えます。薬害イレッサ問題をわかりやすく解説したパンフレットも作りました。ご希望の方、ご連絡ください。
未払残業代請求裁判
横浜地方裁判所 完全勝訴!
事務局 本多史和
現在の日本社会ではいわゆる「サービス残業」が横行しています。
サービスと名前が付くと耳あたりよく聞こえがちですが、要は「賃金未払強制残業」に過ぎません。
もしみなさんが、1年半で計1628時間、1カ月の平均で約85時間の残業を強要され、一切残業代が出ないとしたらどうされるでしょうか。
私が以前に勤めていた会社では正にこのような状況で、従業員全員が我慢を強いられていました。
そこで私は原告となり「働いた分の給料をもらう」という労働者の当然の権利を守る為に、そして今も続いている未払残業を止めさせるために、会社と裁判所の法廷でたたかうことにしました。
現在は高等裁判所で審議中ですが、横浜地方裁判所では私側の完全勝訴を勝ち取っています。判決は、一向に従業員のことを顧みない会社の態度を「悪質」と断じ、未払賃金の他に罰金の支払を命じました。それだけひどい会社だったのです。
しかし、残念ながら、従業員に負担を強いて自らは不当な利益を得ている会社はまだまだたくさんあります。そのような現状を変えるためにも、私の裁判で勝つことが小さな一歩だと考えています。
早ければ今年中に高裁の判決が出るので、年始の事務所ニュースでは、続報の勝利報告ができることを目ざしてがんばっています。