城北法律事務所 ニュース No.57(2008.1.1)
目次
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- 1 薬害肝炎訴訟大阪高裁より和解勧告される!
- 2 若者の貧困と労働問題に立ち向かう「首都圏青年ユニオン」「私たちはモノではない。人間らしく生きたい」
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- 1 身近な法律相談
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- 1 外国人の権利を守ることは国際貢献の一つ~移住労働者の権利擁護に取り組んで~
- 2 薬害イレッサ訴訟 ~がん患者の生命の重さを問う~
- 3 司法研修所教官になって ~2年間を振り返って~
- 4 ぜんそく患者医療費助成制度がいよいよスタートします!
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- 1 救急車を呼ぶことに躊躇しないで下さい。ー子どもの命を大事にして下さいー
- 2 区民相談に携わって ~初心に立ち返って~
- 3 加賀保育園の裁判、いよいよ正念場へ
- 4 在職40年を過ぎて
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- 1 時の足音 ~生存権裁判東京訴訟~
- 2 アスベスト訴訟、いよいよ提訴-100名以上の原告が着々と訴訟準備中-
- 3 緊急命令5本を受けて郵便局にあいついで組合事務室!
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- 1 戦争被害は終わっていません~中国遺棄化学兵器被害者訴訟~
- 2 黒目川と鮎
- 3 不当解雇事件を労働審判で解決泣き寝入りしない強さ
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- 1 平和の大切さを実感して
- 2 スタートライン
薬害肝炎訴訟
大阪高裁より和解勧告される!
弁護士 武田志穂
事務所ニュースを通じて何度か皆様にお伝えして参りました薬害肝炎訴訟も、遂に大阪高等裁判所より和解勧告がなされるに至りました
今までの経過等、ご報告させていただきます。 薬害肝炎訴訟は、フィブリノゲン製剤や第9因子製剤といった血液製剤の投与を受け、C型肝炎ウイルスに感染してしまった患者が原告となり、国及び血液製剤を製造販売した製薬会社を被告として提訴した損害賠償請求訴訟です。
私が弁護士登録をした2002年10月に東京・大阪で提訴され、その後福岡・名古屋・仙台でも提訴されました。
そして一昨年2006年6月21日、薬害肝炎訴訟で初めて判決が言い渡されました。大阪地裁判決は、フィブリノゲン製剤の投与を受けた原告に対して国及び製薬会社の責任を認める勝訴判決でした。その後同年8月30日福岡地裁では、大阪地裁判決よりさらに救済範囲を拡張した判決が言い渡されました。そして昨年2007年3月23日の東京地裁判決では、第9因子製剤について製薬会社に対してだけですが、初めて責任を認める勝訴判決が言い渡されました。そして2007年7月31日の名古屋地裁では、フィブリノゲン製剤・第9因子製剤ともに国及び製薬会社に対して責任を認める画期的判決が言い渡されました。しかし、その後2007年9月7日仙台地裁では、原告全面敗訴という不当判決が言い渡されてしまいました。
5地裁判決が出揃った時点で、全国原告団・弁護団は一致団結して薬害肝炎問題の全面解決を求め、日比谷公園で座り込みを開始しました。しかしながら、皆さんご承知のとおり私たちの座り込みの最中安倍首相が辞任してしまい、私たちは座り込みを解除せざるを得ませんでした。
その後皆様もニュース等でご存じの418人の命のリスト問題が発覚し、世論の後押しもある中、11月7日遂に大阪高等裁判所より和解勧告がなされました。それに対して、国は和解のテーブルに着くことを明らかにしました。しかし、原被告間の和解条件が折り合わなければ和解決裂という事態も充分あり得ることですから、まだまだ予断を許さない状況です。
現在日本には300万人以上のウイルス性肝炎患者がいると言われています。そのほとんどが、輸血や血液製剤、注射針の連用などの医療行為により感染したと考えられています。薬害肝炎訴訟は原告のためだけの訴訟と理解されがちですが、原告団・弁護団は血液製剤以外の原因で感染した患者さんの中にも国の適切な感染症対策で感染を免れることができたはずの方が多数おられるはずだと考え、全肝炎患者の救済を求めています。その一つとして、原告団・弁護団が民主党に強く働きかけて提出されるに至った肝炎対策法案があげられます。与党も肝炎対策については協調の構えを見せていますが、これもまだ法案成立には至っておらず、やはり予断を許さない状況です。
今後も薬害肝炎問題について、ご支援・ご協力をお願い致します。
若者の貧困と労働問題に立ち向かう「首都圏青年ユニオン」
「私たちはモノではない。人間らしく生きたい」
弁護士 大山勇一
今、日本社会で貧困が拡大しています。パートやアルバイトといった非正規労働者が3人に1人にまで増加し、特に青年層で見ると半数は非正規です。年収200万円以下の人は全国で1000万人を突破し、貯金がゼロという世帯も22%で高止まりの状態が続いています。生活への不安が広がる中で自殺者は9年連続で3万人を超えました。
戦後最長の好景気といわれながらも、人件費を切り詰める企業は、社会保障や教育費のかかる正社員を減らし、非正規労働者を増加させ、政府も派遣法改悪などでこれを後押ししています。アパートの家賃を払えず住居を失った労働者たち数千人が、インターネットカフェで生活を送っているとも報じられています。
2001年に結成された「首都圏青年ユニオン」(東京公務公共一般労働組合青年一般支部)は、パートやアルバイト、派遣労働者、正規労働者が集まって作られた若者のための労働組合です。誰でもどんな職種でも一人でも加入できるのが特徴で、組合員の6割が非正規労働者です。この青年ユニオンは、「パートやアルバイトだって有給休暇はもらえる」「サービス残業は違法、きちんと残業代を払って」「一方的なアルバイトの首切りは許さない」という労働問題の基本を訴え、団体交渉を通じてこれまで数多くの紛争を自主的に解決してきました。
私は、牛丼チェーン店「すき家」(本社株式会社ゼンショー)事件の代理人を務めています。「すき家」は残業代を支払わず、団体交渉にも応じようとしないため、現在、東京都労働委員会へ救済申立を行っています。このように弁護士が関わって事件解決を図る事案も増えてきたことから、昨年12月には首都圏の弁護士10数名で「首都圏青年ユニオン弁護団」を結成しバックアップしていく体制を強化しました。
青年ユニオンは、労働問題だけではなく、まさに貧困にあえぐ若年労働者の生活全般の相談にも積極的に乗り出しています。「働いても働いても生きづらいのは労働者のせいではない、人間らしく生きていくための社会に変えていこう」というテーマで、「反貧困たすけあいネットワーク」を立ち上げ、若年労働者どうしの情報交流と互助制度の確立を目指しています。
組合員は訴えます「私たちはモノではない。人間らしく生きたい」と。貧困は若者から自信と誇りを奪っています。貧困に抗する力をさらに広げていくためにぜひ青年ユニオンの活動にご協力をお願いします。現在、青年ユニオンを支える会の会員も募集しております。詳しくは、青年ユニオンのホームページをご覧ください。