城北法律事務所 ニュース No.57(2008.1.1)

身近な法律相談

弁護士 大川原栄

Q 老後が心配です。

Q1 私は現在60歳を過ぎておりますが、配偶者は数年前に死亡し子供はありません。これからある程度の長さの老後が予想されますが、身体が弱った後あるいは呆けてしまった後の介護等に不安があります。遠い親戚はおりますが、その方々の世話になるつもりはありません。どのように準備したらよいでしょうか。また、私の死後に残された財産をお世話になっている医療機関に寄付したいと思っておりますが、そのためにはどのように準備をすればよいでしょうか。

Q2 私ども夫婦は二人とも70歳を越えております。3名いる子供達は既に別に家庭を持ち私たちとは別世帯となっております。私どもは、今後、子供達の世話になるつもりはなく、ぎりぎりまでお互いに支え合っていくつもりです。そのための準備はどうしたらよいでしょうか。また、一方が先に逝ってしまい一人になってしまった場合の準備はどうしたらよいでしょうか。

A 憂いのない老後を過ごすための方法とは

(1) これからの日本は益々高齢化社会が加速すると言われており、同時に、核家族社会の影響もあって子供あるいは親戚等の世話になりたくないという方が増えております。老後、健康に不安が生じた場合に誰に面倒見てもらうかを予め決めておくことは、老後を安定して生きていく上で相当程度重要なことです。

(2) 自分の身体が動かなくなった時には、介護や看護が不可欠です。その場合に、まだ判断能力がある状況であれば、当然のことながら、自分の意思に基づき介護や看護の方向(施設・病院の選択等)を決めることができます。

(3) 問題は、歳を重ねる過程で判断能力が低下した場合です。このような場合、つい最近までは家族や親戚(身寄りのない方は役所の民生委員等)が本人の意向とは別にそれぞれの判断でそれなりの選択をして介護や看護をするということになっていました。しかし、それでは本人に酷であることが少なくないということで、成年後見制度が法律上確立しました。

(4) 成年後見制度とは、本人の判断能力が精神上の障害により不十分な場合に、本人を法律的に保護し支えるための制度です。本人の判断能力が全くない場合には、成年後見人が選任され、その成年後見人が本人の財産管理・生活支援等を行うことになります(本人の判断能力の程度により他に保佐・補助という制度もあります)。

(5) 成年後見人の選任手続には2種類あり、一つは本人がまだ元気な時に、本人自ら後見人の候補者を指定するもの―任意後見制度、もう一つは本人の判断能力がなくなった後に、関係者が家庭裁判所に後見人選任の申立を行い、裁判所が適当と思われる方を後見人として指定するものです。

(6) 今回の質問は、いずれも自分の老後に不安をお持ちの方の質問ですが、任意後見制度を利用するのが最も適切だと思われます。現在単身の方の場合、周りに信頼できる方がいるようであればその方を予め後見人候補者とする方法があり、また、ご夫婦の場合、配偶者を予め後見人候補者とする方法があります。周りに信頼できる方がいない場合には、専門の法律家(弁護士等)に相談する方法、あるいは複数の公的・準公的機関における斡旋等を受ける方法があります。ただし、いずれの場合も、公証役場で「任意後見契約」を作成しておく必要がありますので、公証役場でその手続等を確認して下さい。

(7) 今回の質問は、いずれも自分の老後に不安をお持ちの方の質問ですが、任意後見制度を利用するのが最も適切だと思われます。現在単身の方の場合、周りに信頼できる方がいるようであればその方を予め後見人候補者とする方法があり、また、ご夫婦の場合、配偶者を予め後見人候補者とする方法があります。周りに信頼できる方がいない場合には、専門の法律家(弁護士等)に相談する方法、あるいは複数の公的・準公的機関における斡旋等を受ける方法があります。ただし、いずれの場合も、公証役場で「任意後見契約」を作成しておく必要がありますので、公証役場でその手続等を確認して下さい。

(8) 最後に、自分の死亡後における財産の処分については、予め遺言書を作成しておく必要があります。遺言作成方法は複数の方法があります。簡明な方法は自筆証書遺言というものですが、確実な方法は公正証書遺言です。どちらの方法をとるにしても、財産を寄付したい相手方の名称・住所等を遺言書内に記入することが必要になります。