城北法律事務所 ニュース No.59(2009.1.1)

実在の弁護士を装った請求

弁護士 小薗江博之

昨年は、振り込め詐欺、架空請求などの相談が増加しました。郵便であるいは携帯電話に突然請求が来るなどの相談は以前からありましたが、地方在住の方から、東京の実在する弁護士名でインターネットの利用に関する請求があり、3日以内に弁護士の預金口座に送金をしなければ、東京の裁判所で裁判するとの請求書が届いたとの相談がありました。

請求書は、実に丹念に作成されていて、実在の事務所所在地も記載されていました。裁判する、訴訟費用まで請求すると書いてあると、ネットの利用で多少でも身に覚えがあれば、驚いて送金しそうです。
唯一、電話番号は、弁護士名簿に掲載されている番号と違いました。預金口座は、同姓同名の口座を手に入れていたのでしょう。

以前、実在する弁護士を装って、息子が横領したと言って電話があった、という相談もありました。

だます側のテクニックは、年々巧妙になっています。振り込め詐欺、架空請求に限らず、先物取引、未公開株、信用取引に至るまで、お金を払うときには、弁護士でなくてもよいので、周囲の方に相談することも対処法のひとつとして、覚えておいて下さい。


IHI粉飾決算被害弁護団結成

弁護士 加藤 幸

一昨年9月28日、株式会社IHI(旧石川島播磨重工)は、平成18年度(第190期)決算に関し半期報告書及び有価証券報告書において粉飾決算した旨を自ら公表し、昨年6月には、金融庁の決定に従い約16億円の課徴金を支払いました。同社株価は9月28日の上記事実の公表により一気に下落しました。

IHIが上記粉飾決算を隠蔽している間に、多くの一般投資家が不正に歪められた高値で同社株式を取得し、その後の株価下落により損害を被りました。

IHIは上記課徴金の支払により一定の法的措置を受けているとしても、損害を被った一般投資家の被害補填は実施されていません。粉飾決算に基づく投資家の被害はいわゆる自己責任論の範囲外であり、法はその被害補填を予定しています。

そこで、金融商品取引法等に基づく損害賠償による被害者救済を図るべく弁護団を結成し、昨年9月29日に東京地方裁判所に損害賠償請求訴訟を提起しました。11月5日には追加提訴を行い、現在の原告総数は150名になっています。当事務所からは大川原、深山、加藤の3名が弁護団に参加しています。

今後は裁判を通じて被害を受けた投資家の被害回復とIHIの民事責任を徹底して追及していく所存です。


おまかせ借地法

弁護士 田見高秀

昨年12月に、東京借地借家人組合連合会主催の研修会で、借地の法律問題の講義をしました。ここで、自分がこの間扱った訴訟・交渉の紛争事案を素材に、「借地の更新料は支払い義務があるか?」「無断増改築したから契約解除・期間が来たから更新しないと言われたら?」「借地上の建物が自分の名義でないと何が問題か?」「隣地からの延焼で借地の建物が焼けてしまった。どうしたらよいのか?」という事例で、法律解釈・紛争の解決策を説明しました。

質問時間に、「適正な地代の額を計算する色々な方式があるけれど、どれが科学的に正しいのか?」との質問がありました。利回り方式、スライド方式、配分方式、割合方式、収益還元方式、公租公課倍率方式とか沢山の方式があり、たしかに結構複雑です。

各方式には、土地所有者と借地人という経済的に対立する当事者のそれぞれの利益への配慮という価値判断が反映していて、単純に公正な唯一の方式という割り切りはしにくいものがあります。

さてさて、いつか、城北法律セミナーで、借地借家問題も取り上げる必要があるかもしれませんね。

では、続きは、またその折りに。


パソコン苦闘中

弁護士 小林幹治

長年使い慣れてきたワープロの印字が次第に薄くなっていき、果てはかすれて読みとれない状態になってしまった。インクが切れたのかと新しいインクに代えてみたが、それも最初のうちだけで、すぐ印字がかすれてしまう。修理に出してみたが、もう部品の保存期間も終了しており、修理不能で返されてきた。

世はとっくにパソコン時代に入っているようだった。パソコンは機能も多く便利なのだが、そういう機能を必要としない人種もいるのだと言いたくなる。

一昨年、新潟の三条の裁判所へ行ったとき、公衆電話がない。書記官に聞いたら、今は公衆電話を使う人がいないとのこと。タクシーを呼ぶ人は書記官に申し出るようにとの張り紙がしてあった。携帯を持つことが当然という時代になり、どこまで抵抗できるかと思っていたが、パソコンはやらないと拙い字で書面を書かなければならず、一念発起してパソコンに取り組むことにしたが、どうにも億劫で、パソコンを買って半年にもなるのに、さっぱり触れる気にならない。事務所の人たちが見るに見かねて教えに来てくれるという話もあり、いよいよ本気で取り組まなければならないところへきています。

今年は何とか自力で書面を作れるようがんばってみます。