城北法律事務所 ニュース No.60(2009.8.1)

新しい所員を紹介します

はじめの一歩

弁護士 茨木智子

はじめまして。今年1月に城北法律事務所に入所した茨木智子と申します。弁護士になってちょうど半年が過ぎました。

【弁護士になって】
新人弁護士の毎日は、まるで生まれたての子どものように「新しいこと」の連続です。城北法律事務所は毎日たくさんの方が相談に来られ、それぞれが抱えていらっしゃるトラブルや悩みは千差万別です。たとえば、離婚問題だったり、借金の問題だったり、大きな枠でとらえれば同じ種類の問題であっても、ひとつひとつの事件はやはり他の事件とは異なります。

私はロースクールや司法修習を通じて、「弁護士は法律のプロフェッショナルであれ」と教わってきました。そして、現実に弁護士になり、相談者の方からそれぞれの事情や背景をうかがい、その思いに直接触れるようになって、はたして本当に「法律のプロ」というだけでいいのだろうかと悩むようになりました。

もちろん、法律に精通し、使いこなせなければ弁護士として失格です。私はまだまだ法律の知識が浅く、経験も乏しいので、研鑽を積まなければなりません。

【弁護士として】
私が弁護士を志したのは、社会人になったあとでした。身近にトラブルが起きて、頼りになる専門家が側にいてくれれば・・・という苦い経験をしたことがきっかけです。

今、実際に事件を引き受けるようになって、相談者の方とお会いする度に、自分がはじめて法律事務所を訪れた時のことを考えます。私はそれまで法律とはまったく無縁の生活を送っていたので、弁護士という人種がとても遠い存在に思えました。電話帳で調べて、最初に電話をかけた時も、予約をして相談に出かけた時も、とても緊張していました。

あの時の自分に対して声をかけるなら「そんなに緊張しないで、ありのままざっくばらんに相談すればいいんだよ」と言ってあげたいです。困り事がどんな状態にあるのか、どういう経緯があったのか、そして自分はどうしたいのか。これらを一番よくご存知なのはご本人です。相談は、すべてをありのままに伝えることから始まります。

【こんな弁護士に】
弁護士は敷居が高い(費用も)と思われがちですが、行動を起こさないと何も変わりません。社会的に取り上げられるような大きな問題でも、身近な事件でも、最初の一歩はみんな同じです。そこに大小はありません。

私は「法律家のプロフェッショナル」をめざすすとともに、その「一歩に込められた思い」を受け止めることができる弁護士になりたいと考えております。

まだまだ未熟者ですが、先生方や事務局のみなさんと一緒に、少しでもお役に立てるよう頑張りますので、どうかよろしくお願いいたします。


日弁連「韓国メディア調査団」に参加して

弁護士 加藤幸

日弁連では毎年秋に、人権問題の調査と人権思想の高揚に資することを目的とした、人権擁護大会という行事を開催しています。この人権擁護大会では、その時々の重要な人権課題を取り上げ、シンポジウムを行なったうえで、日弁連としての宣言・決議の採択を行ないます。今年は、人権課題の一つとして「表現の自由」が取り上げられており、その調査の一環として、6月1日から4日にかけて、市民メディアやインターネットメディアが発達している韓国の現状調査にいってきました。折しも盧武鉉(ノ・ムヒョン)前大統領死去の直後だったため、市庁舎の向かいには、市民の手によって盧武鉉前大統領の祭壇が設けられ多くの市民が弔問に訪れていました。

調査を行なったのは、テレビ局の労働組合、市民メディアの育成や研究を行っている団体、市民記者、ハンギョレ新聞、オーマイニュース、民弁(人権活動に取組む弁護士の団体)などです。

どの場所にいっても話題になったのは、去年のロウソク集会の話でした。この集会は、アメリカ産牛肉の輸入に反対する女子中高生が中心となって始めたもので、毎週末に市民が市庁舎前の広場や道路を占拠してロウソクを灯して座り込みを行ない、牛肉輸入中止を政府に対し要求するということが数か月間に渡って続きました。集会の情報はインターネットを通じて発信され、数十万規模の集会となった時もありました。

現在、韓国は李明博大統領のもとメディア規制が強化され、金大中・盧武鉉政権下で作られた表現の自由を守るためのさまざまな制度が破壊されつつあります。しかし、韓国の人々が持つ、「自分たちが情報を発信し、社会を良くしていくのだ」という力強さは衰えてはいませんでした。

韓国と日本では前提条件が違う点も多々ありますが、日本の社会も、さらに市民の活発な情報発信が行なわれ、表現の自由が保障される社会にしていきたいと感じました。