城北法律事務所 ニュース No.61(2010.1.1)

目次

損害賠償請求訴訟
IHIの責任を明らかに

弁護士 深山麻美子

IHI(石川島播磨重工業)は、平成18年の決算で100億を超える損失を28億円の損失と記載し、平成19年の決算では45億の損失を逆に158億円の利益があると記載して、株価をつりあげ、多くの投資家から資金を得ました。その後、IHIは決算の虚偽を公表せざるをえなくなり、金融庁に対して多額の課徴金を支払いました。IHIの株価は急落し、大事な虎の子の資産や老後の資金をIHIの株につぎ込んだ個人投資家の方々も多大な損害を被りました。

当事務所では大川原弁護士を中心に、加藤、深山が参加して被害弁護団を結成し、平成20年にIHIに対して損害賠償請求訴訟を提訴。現在追加提訴も含めて原告190名、請求被害総額約1億8000万円の大型訴訟となっています。

ところが、IHIは金融庁に対しては約16億円もの課徴金を払っておきながら、本件裁判では一転して、平成18,19年の決算は虚偽ではなかった、課徴金を支払ったのは金融庁とのトラブルを避けるための経営判断だったと主張しています。当弁護団はこのような無責任なIHIの主張に反撃を加えるとともに、金融庁の調査資料の開示を求め、裁判の場でIHIの責任を明らかにしていきます。


無事に手術がすみました
仕事にも復帰します

弁護士 小林幹治

一昨年あたりからおかしいと感じていたのですが、昨年は歩行が困難になってしまい、家から駅まで歩き続けることにも難渋するようになりました。原因もわからず不安な思いでいたところ、たまたま私の歩行状態を見ていたお医者さんに勧められ、神経内科を受診しました。検査の結果、脳内で作られて循環する髄液の循環不良で脳内に髄液がたまりすぎてしまうことが原因であること、国内の統計ではないが、外国の統計では100万人に22人程度の割合で発症しているとのことでした。「早速手術したほうがよい」「薬物による治療法はない」ということでシャント手術という脳内から人為的に髄液を抜き取る手術を受けました。幸い手術も無事に済み、安心のため杖は持っていますが、歩行はできるようになりました。

この間ほとんど仕事ができず、みなさんにはご迷惑をおかけしてしまいました。事務所のみなさんにも応援していただき、今年は何とか仕事にも復帰したいと願っています。足が不自由になって日常生活で感じたことは、上り坂より下り坂の方がきついということです。最近家の近くの地下鉄の駅に地上への出口が増設されたのは良いのですが、作られたエスカレーターは上りだけ、全く利用できません。あせらずぼちぼちやっていきたいと思います。よろしくお願いいたします。


布川事件について
いよいよ最高裁の決定が

弁護士 上野 格

布川事件をご存じでしょうか。昭和42年に茨城県北相馬郡利根町布川で発生した強盗殺人事件について、犯人ではない桜井昌司さん、杉山卓男さんが無期懲役の有罪判決を受けた冤罪事件です。

平成17年9月21日、水戸地方裁判所土浦支部は、「有罪認定に合理的な疑いが生じ、無罪を言い渡すべき新規明白な証拠を発見したときに該当する」として、再審(裁判のやり直し)開始を決定しました。

検察はこの決定に異議申立をしましたが、平成20年7月14日に東京高等裁判所は抗告を棄却して再審決定を維持しました。さらに検察は最高裁に特別抗告をしましたので、抗告棄却決定が待たれているところです。

現在では、検察に不利な証拠を検察官が大量に隠していたことが判明しています。桜井さん・杉山さん・弁護団の請求により、事件後40年を経て隠されていた証拠の一部が開示されました。その新証拠も合わせて判断すると、有罪判決は維持できないというのが再審決定の理由です。現在、刑事事件における取調過程の可視化や証拠の全面開示が求められていますが、私も冤罪事件を防ぐため絶対に必要であると思います。
▼布川事件ホームページ


民法改正のおはなし 18をもって成人とす

弁護士 田見高秀

今かなり重要な民法改正が検討されています。

その一つは、たった1条ですが満20歳を成年とする現行民法第4条を「年齢18歳をもって成年とす」と改正し成人年齢の引き下げをするもの。今は未成年者の18歳、19歳が成人になります。是非を検討していた法制審議会が引き下げ適当との答申を昨年10月末に法務大臣に提出。時期はまだ不明ですが、いずれは法務省提出の法案として国会審議にかけられます。

満20歳成人は明治9年に太政官布告で決められたもので、当時の欧米諸国は21歳から25歳が成人でしたから、明治期の日本は他国より若い年齢を成人としたのです。今回の改正が成立すると、現在は未成年の18歳、19歳が、契約が独立してできるようになる(雇用契約、部屋の賃貸借契約、消費者として契約等々)ム親の同意がなくとも有効な契約が成立します。かなり社会的経済的な影響は大きいのです。

若者が不当な契約で消費者被害を受けないための条件制度の整備を進める一方、若者を社会の自立した一員として位置づけるものとして、有効な改正と思います。皆さんはどう思われますか。