城北法律事務所 ニュース No.62(2010.8.1)

目次

労 働

大量解雇を許さない取り組みを
労働者派遣法を抜本改正しよう!

1 構造改革がもたらした大量解雇問題
2008年秋に始まったアメリカ発の世界同時不況により、世界の経済成長はマイナス0.9パーセントを記録しましたが、特に日本はマイナス10.1パーセント(08年10月〜12月期。年率換算)もの記録的な打撃を受けました。その原因は、製造業大企業を頂点とした外需依存型経済構造を日本がとっていたことにありました。

この経済不況を受けて、自動車や電器産業などの大企業は、「生産調整」を理由とする数万人規模の期間工・派遣工切りを強行しました。これにより、好況時には安価に労働力を確保しつつ、いったん不況となると生産の調整弁として安易に非正規労働者を切り捨てる経済構造が「小泉構造改革」の名の下に推し進められてきたことに国民の多くが気付きました。こうした労働者の構造改革への怒りが2009年8月の衆議院総選挙に示され、自民党中心の政治体制に変革をもたらしたのです。

2 「池袋派遣村」の取り組み
派遣工、期間工は、解雇されると寮も追い出され、貯金もなく、路上生活に追い込まれてしまいます。このような事態が進む中で、2008年年末から2009年初頭にかけて、日比谷公園で年越し派遣村が行なわれ、500人以上が入村し、そのうち300人が生活保護の申請を行ないました。年越し派遣村の活動は、マスメディアで広く報道され、生活保護行政を大きく変える端緒となりました。

私たち城北法律事務所の弁護士・事務局員も「池袋派遣村」に取り組んでいます。都内有数のターミナル駅である池袋駅のそばに位置していることもあり、豊島区の労働組合や民主団体、区議、有志らに呼びかけて、「池袋派遣村」実行委員会を立ち上げ、派遣村活動を定期的に実施してきました。第1回目は2009年5月に実施し、相談場所である中池袋公園には多くの方が相談に来られました。「3か月前に仕事を求めて福島から上京してきた。しかし仕事が見つからず、今はマクドナルドで夜を過ごしている」という40代の女性、「建築会社の寮に住んでいたが、一部屋に10人詰め込まれ、嫌になって友人宅に居候している。仕事が見つからない」という30代の男性、「日雇いの仕事をしながらアパート暮らし。最近仕事がなくなり、家賃を滞納している」など困窮した生活を訴える相談が数多く寄せられました。多くの方が生活保護の申請を行い、受給に結びつきました。

その後、今年2月、5月にも相談活動を実施してきましたが、住まいがない、仕事がないという訴えはやみません。また生活困窮者を標的にした「貧困ビジネス」の被害も増えています。私たちは、池袋派遣村の相談内容を踏まえ、政府や自治体に対して、具体的な雇用創出策を進めるとともに、生活保護制度の運用改善を図り、路上生活者が利用できるアパートの確保などセーフティネットの拡充を強く求めていきます。

3 労働者派遣法を抜本改正しよう
大量解雇を阻止するたたかいが全国で行なわれています。多くの非正規切りに合った労働者が労働組合に加入し、また裁判闘争に立ち上がっており、私たち城北法律事務所の弁護士もたたかいの一翼を担い、復職あるいは派遣先への直接雇用をめざして奮闘しています。

このような裁判闘争と同時に、派遣労働者を痛めつける労働者派遣法を抜本改正する運動をさらに強めていく必要があります。今年の通常国会で派遣法の改正案が上程されましたが、これは製造業派遣が一部残存し、派遣先労働者との均等待遇が認められないなど不充分な内容のものにとどまっています。裁判で次々明らかにされている派遣労働者の過酷な労働・生活実態を国会に届け、現在継続審議とされているこの法案を真の派遣労働者保護のための法律に改正するよう、多くの国民とともに運動を強めていきたいと考えています。