城北法律事務所 ニュース No.64(2011.8.1)
目次
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- 1 薬害イレッサ訴訟 −企業と国に勝訴
- 2 ライブドア事件と IHI粉飾決算事件
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- 1 B型肝炎訴訟全面解決へ
- 2 国との基本合意成立、菅首相が被害者へ謝罪
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- 1 東日本大震災
- 2 震災からの復興をめぐる二つの道
- 3 建設的な原発の議論を
- Page 5
- 1 震災法律相談大震災と事業再建
- 2 くらしと生活保護震災と生活保護
- 3 震災と子どもの問題子どもを 被ばくから救おう
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- 1 民意を反映しない比例定数削減にNO!を
- 2 大阪府 君が代起立条例と定数削減条例〜成立経過にみる定数削減のねらい
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- 1 大入り 大好評企画 セミナーレポート
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- 1 精いっぱいがんばります
- 2 池袋派遣村継続しています!
震災法律相談
大震災と事業再建
弁護士 小薗江博之
Q ホテル(工場)を経営していましたが、大震災で、一部が使用できなくなりました。幸い一部を利用して営業はできますが、金融機関から融資を受けていましたが、使用できなくなった箇所を再建しないと返済ができそうもありません。
A 再建の枠組みとして、個人営業または従来の会社を存続するのであれば、金融機関など債権者個別に交渉して、債務の支払いを延長してもらい、新たに資金を借りて(援助を受けて)ホテル(工場)を再建することが基本になります。
金融機関が再建計画に同意してもらえるのであれば、裁判所を利用する民事再生手続きにより、設備や資産を引き継いで、再建にあたることが可能でしょう。従業員の継続雇用もできます。この場合、大幅に免除を受けた再生計画にしたがって、債務の支払をしてゆくことになります。
従来の会社を残さないのであれば、旧会社は整理し、新会社を設立して経営にあたる方がよいかもしれません。罹災した土地建物には、通常抵当権が設定されているので、援助を受けることが可能であれば、新会社による買い取りと担保権消滅請求により抵当権を消滅させ、事業譲渡などを組み合わせて、再建にあたっている例もあります。新会社は債務がない状態で経営にあたります。この方法を選択する場合、通常、旧会社や旧経営者個人の金融機関からの債務は相当残りますので、別途何らかの整理は必要になります。
また最近、全国銀行協会は、他の団体と協力の上、(1)住宅ローンや個人事業に関連する既存債務の返済が困難(2)財産の状況を適正に開示(3)債権者にとっても法的整理と同等額以上の債権回収が見込まれる場合は、新設の第三者機関の支援などにより、「弁済計画案」(原則5年以内)の作成の取り組み(ガイドライン)を進めることを発表しました。債務者を信用情報(ブラックリスト)に登録しない特例措置を講じるので、新たな融資も受けやすいのが特徴です。
しかし一部債権者の同意が得られなければ自己破産や民事再生などの法的整理の手続きに移行することになります。
どの方法が適切かは、ケースによって異なりますので、専門家に相談することをお勧めします。
くらしと生活保護
震災と生活保護
弁護士 田見高秀
福島県南相馬市での200世帯以上をはじめ、東日本大震災の義援金や東京電力の原発事故仮払金が収入とみなされ、被災者の生活保護が打ち切られる事態が相次ぎ、全国生活と健康を守る会連合会は6月24日、被災者と共に厚生労働省と交渉しました。
原町区生活と健康を守る会のYさん(64歳男性)は4月、新潟県上越市の避難先で南相馬市役所からの電話を受けました。10年前に脳こうそくで倒れたYさんは生活保護を受け、60歳からは年金と月5万円の保護費で暮らしていました。
役所は義援金が振り込まれたことを確認すると、「生活保護は止める。国民健康保険証を送る」と一方的に打ち切りました。5月に南相馬市に戻ったYさんが役所に行くと、「義援金40万円入ったから、1年くらいは大丈夫でしょう」と言われました。『自立更生計画書』の説明は「まったくなかった」とYさんは訴えます。
生活と健康を守る会の交渉や要請の成果で、福島県は「第一次義援金は収入認定をしない」と通知。この日厚労省保護課の課長補佐は、「福祉事務所はきちんと話を聞いて対応することが大事。実態を把握して、適切でない取り扱いは指導する」と回答しました(生活と健康を守る会ニュース7月10日号から)。
義援金や東電仮払金が出たら生活保護を打ち切り、それを生活費に使ってなくなったらまた生活保護では、その日暮らしになり、立ち直るのが遅くなってしまい生活再建できなくなってしまいます。
義援金や仮払金を自立資金に使用する必要があることの計画書を出して申請すれば手元保有が認められるというのが、既に5月2日付厚生労働省社会・援護局保護課長通知で出ているのに、それに反する硬直的な運用が行われており、監視と是正が必要です。
震災と子どもの問題
子どもを 被ばくから救おう
弁護士 大八木葉子
大人はもちろん子どもたちは、大地震や津波自体の恐怖、避難を余儀なくされ友人たちのいる地元を離れたこと、親族や友人などを失ったことなどで心に大きな傷を受けています。心のケアをはかることが必要です。
また、7月中旬の新聞記事では、震災から4ヶ月が経過しても被災地の学校給食が復旧にほど遠い状況にある旨特集されていました。
福島原発に関しては、避難先で「放射能を浴びた」と言われて嫌な思いをしたり、避難したくても種々の事情で避難することができず、放射能汚染を受けながらの生活を続けなければならないことなどの問題もあります。
先日、東京弁護士会の研究会で放射能汚染問題と食の安全のあり方について専門家の方の話を伺いました。放射能汚染は、大人以上に胎児、子どもに影響が大きいことからその一部を簡単にご紹介したいと思います。
まず、放射線には、α線、β線、γ線があります。このうち、α線とβ線は主に内部被曝、γ線が主に外部被曝をおこしますが、ICRP(国際放射線防護委員会)は、後者のγ線による外部被曝のみを重視しています。日本政府の考え方も同様です。しかし、ICRPや日本政府が軽視する低線量内部被曝には実は重大な問題があるということです。
チェルノブイリ原発事故後のオーストリア人の被曝経路調査結果では、外部被曝が15%、内部被曝が85%だったそうです。ECRR(欧州放射線リスク委員会)は、外部被曝のみならず、飲食と呼吸で取り込む放射性核種による低線量の内部被曝も重視しています。
私たちは、放射能汚染について学び、大人自身はもちろんですが、特に子どもを不要な被曝から救う必要があります。