城北法律事務所 ニュース No.65(2012.1.1)

目次

離婚問題
〜親権者の争いがある場合

弁護士 武田志穂

配偶者と離婚する場合、未成年の子がいる場合はその親権者を定める必要があります。子の親権を両親が争っている事件だと、それなりに当事者間での争いも激しいものとなります。

協議で親権者を決めることができなかった場合は、家庭裁判所に調停を申し立てることになりますが、その場合家裁の調査官が親権者の決定に関与してくることとなります。

当事者は自らの子どもの監護の状況や日常の子どもとの関わり方などを調査官に報告書をまとめ、報告します。 調査官は家庭訪問をして居住環境や子どもを観察したり、子どもの通学する小中学校などの調査をし、両親のいずれが親権者として適当かを、報告書にまとめることとなります。

裁判所は、調査官の報告書に従って親権者を決定することがほとんどです。

親権者を決定する上で大事なのは、あくまで子どもにとっていずれの親に養育されるほうがより幸せかという観点です。子どもを引き取って養育したいという意志の強さは参考にはされるでしょうが、単なる一事情にすぎません。その点を充分理解した上で、調停などに臨まれるとよいでしょう。


明渡し問題
賃借人が賃料を払ってくれない、どうしたら?

弁護士 深山 麻美子

賃借人がもう何か月も賃料を払わず、これ以上滞納が続くなら解除したいという場合、まず、内容証明郵便で支払期限を定めて滞納賃料を支払うように催告し、支払期限内に支払わない場合は改めて通知をしないで賃貸借契約を解除する旨の意思表示をしましょう。

支払期限を過ぎても支払わず、任意の明渡しもしない時は、賃貸借契約解除を理由に明渡しの裁判をします。もし裁判で和解が成立し、和解に従って任意に明渡しが行われれば、明渡しの執行手続きをしないで問題が解決できます。

しかし、和解が成立せず判決に至ったり、和解が成立したのに任意に明渡さないような場合、いよいよ強制執行手続きを行うことになります。強制執行は、執行官が強制的に賃借人とその荷物を出し、明渡しを完了させるのですが、さすがに強制執行を受けることを嫌ってか、執行前に任意に明渡すケースも見られます。

明渡の裁判・執行には相応の費用が必要ですが、民事手続きの中では進行スピードが速く、また解決の確実性というメリットもありますので、具体的に費用対効果を比較検討して考えられるとよいでしょう。


借地での建替
承諾料を払えば可能です

弁護士 田見高秀

現在の土地を借地し木造2階建の自宅を建て30年。相談者から「建て替えをしたいのだが、契約書に建物の増・改築には地主の承諾が必要となっている。どうしたら良いか」と相談がありました。

借地上の建物につき契約書で建物の増・改築には地主の承諾がいると特約があるときは、承諾なしに建物建替工事を行ってしまうと契約違反として地主から借地契約解除される危険があります。といって、地主が承諾をしてくれない限り建替は不可能となると借地人は困ります。

そこで地主と協議しても協議が整わないとき、地方裁判所で増改築につき地主の承諾に代わる許可を得る裁判という手段があります(旧借地法8条の2第2項、借地借家法17条2項)。借地人から建替をしたいとの申立を受けた裁判所は、建築基準法に適合して建築確認が得られる建物かどうかを審査し、地主に払う建替承諾料の相当額を定めて(鑑定をしますが鑑定料の負担はない)、増改築承諾の決定をしてくれます。

借地人は、裁判所が決めた承諾料を支払って建て替えることができます。


ある少年事件から
失敗してもやり直すことの大切さ

弁護士 津田二郎

昨年6月に被疑者国選として当時19歳の少年A君の事件を受任した。
少年事件で弁護士は、「弁護人」にあたる役割のほか、少年の後見人的役割も期待されており、「付添人」という立場で少年に接することになる。

少年事件は一般的に受任してから審判までの期間は極めて短期間で、できることにも限りがある。残念なことに、少年事件の一般的傾向からか、これまでA君についた付添人は充分にはA君と対話ができなかったようだった。

A君は異例にも受任から審判まで3か月かかった。私はA君との面談では厳しいことも言って涙させたし、毎回課題を与えてA君に必死に考えさせることを重視した。ご両親にもこれまでの対応を反省してもらい、調査官、審判官とも複数回面談して、A君やご両親の変化を訴えた。A君は中等少年院送致となったが、審判後、A君は「これまでとは違う。きっと頑張る」と誓ってくれた。

付添人活動によって少年の将来が変わると感じた事件だ。私は29歳で司法試験に合格した。A君は失敗はしたけれども、私よりずっと早く社会貢献できる可能性があるのだ。その可能性を追求し応援したい。