城北法律事務所 ニュース No.68(2013.8.1)

離婚に関する法律相談
後々のためにも弁護士を代理人に

弁護士 武田志穂

夫婦3組に1組は離婚する時代となり、離婚は珍しいことではなくなりました。

ご存じの方も多いかと思いますが、離婚には①協議離婚、②調停離婚、③裁判離婚の3つの方法があります。

裁判所を関与させることなく、話し合いで解決できる①協議離婚が望ましい形かもしれません。ただ、離婚を急ぐあまり、本来請求できる財産分与を請求しなかったり、子どもの養育費についてきちんと定めずあとで困る方も多いように見受けられます。事前に法律家にご相談いただくことをお勧めします。なお、離婚の際、子を引き取った妻が夫と早く離婚したいがために、「子の養育費は一切請求しない」などと念書を書いてしまい、後で後悔してご相談にいらっしゃる方も見受けられます。そのような念書を書いてしまったような場合でも、約束自体無効とできる場合もありますので、諦めずに法律家に相談していただくことをお勧めします。

次に調停離婚ですが、日本では調停前置主義(裁判の前に調停を経なければいけないという制度)が採られているため、調停を経ずしていきなり離婚裁判を提起することは基本的にはできません。

調停は弁護士をつけずにご自分だけで出席することもできますが、子どもの親権を巡って相手とシビアな対立が予測されるケース、預貯金や不動産などの資産があり財産分与について厳密な算定が必要なケースなどでは、弁護士を代理人として立てたほうがよいと思われます。

調停がまとまらなかった場合(不調といいます)、裁判離婚となりますが、調停がまとまらないケースはほとんどがシビアな対立のあるケースであり、ほとんどの場合尋問も行われます。裁判離婚の場合は、弁護士を代理人につけることをお勧めします。


相続に関する法律相談
遺言書の作成でトラブル防止

弁護士 深山麻美子

Q 長男の私は両親と同居して家業も手伝い、自宅の修理代も出し、妻も両親の世話や介護に苦労しています。他方弟達は日頃何もしていません。私と妻の貢献を考慮して、両親の相続の時に、何の貢献もない弟達より多く受け取ることはできますか?

A 共同相続人の中で、親の家業を手伝ったり、金銭的援助をしたり、看護・介護等をして、親の財産の維持や増加に『特別の』寄与をした者には、その寄与相当額を法定相続分にプラスして配分する寄与分という制度があります。

ただ、『特別の』寄与と言えるには、親が第三者を雇って行わせるべき仕事を、子が無償かつ一定期間継続して行っていたり、病院や施設入所相当な状態の親を、子が無償かつ一定期間継続して自宅介護・看護していたことが必要です。金銭的援助も、小遣い程度では『特別の』寄与とは言えません。

ですから、あなたが別の仕事に就いていて、店番を代わるとか、休日に手伝う程度の場合、労務に見合った対価(給料等)を受領している場合は、「親子の情誼上」の行為で、『特別の』寄与とはなかなか評価されません。

また、共同相続人ではない妻の寄与は、寄与分としては認められないのが原則です(ただし、妻が履行補助者として、あなたの寄与と認められるケースもあります)。

小遣い程度を越えた額の自宅の修理代は、特別の寄与と評価され得ますが、領収証などの裏付け証拠を残しておくことが重要です。
このように寄与分が認められるにはいくつかハードルがあります。将来の無用な争いを避けるためにも、あなたの貢献に配慮した遺言書をご両親に作成してもらっておくのも有効な手段の一つです。


賃貸借に関する法律相談
値上げと契約期間切れ

弁護士 茨木智子

Q.家賃の値上げ    
借りている部屋の更新が近づき、大家さんから家賃を値上げしたいと言われました。値上げされると生活が苦しく、引っ越さなければいけないかと悩んでいます。

A. 家賃は大家さんが一方的に値上げできるものではなく、これに応じる義務はありません。大家さんに対して、これまでどおりの家賃を支払い、住み続ける意思をはっきりと伝えましょう。

もし、大家さんの側に値上げについての正当な理由があれば、裁判所での話し合い(賃料増額調停)を申し立ててくるでしょう。調停では、家賃が今の経済情勢と見合っているか、値上げすべきかどうかを、第三者(調停委員)を交えて話し合います。

しかし、多くの場合、大家さんは調停までしようとは考えていません。できれば値上げしたいなと思って話を持ちかけているだけです。ていねいに対応しながら、断るべき部分ははっきりと断ることが大事です。

Q.契約期間が切れた  
大家さんと更新の話し合いがつかず、契約期間が切れてしまいました。出て行かないといけないでしょうか?

A. 出て行く必要はありません。借主の居住権は法律で保護されています。契約期間が単に過ぎても、そのまま住み続けていれば、前と同じ条件で契約が更新された扱いになります。これを法定更新と呼びます。

この場合、契約はまだ続いていることになりますので、これまでと同じように住むことができます。家賃は前と同じ額を同じように支払ってください。もし大家さんが受け取ってくれない場合は供託することができます。

更新の話し合いや明け渡しについてわからないことがありましたら、ぜひお気軽にご相談ください。