城北法律事務所 ニュース No.71(2015.1.1)

憲法カフェ
おいしいお茶と憲法と

弁護士 野口景子

◆憲法クイズ

突然ですが、クイズです。「憲法は、国民が守る法律である。」さあ、この文章には間違いがあります。お分かりになりますか?
これが、最近、私がよく出題するクイズです。

◆憲法カフェが盛況です! 

私たちの生活の一番基本的なルール「憲法」。何だか堅苦しいとお考えの方も多いのではないでしょうか。

でも、女性ファッション誌「VERY(2014年3月号)」や「LEE(2014年12月号)」で憲法座談会などが取り上げられるほど、今、憲法はブームです。

そんな憲法を、「ちょっとお茶でも」という気軽さで知るために各地で催されているのが「憲法カフェ」です。

2013年1月、弁護士登録15年以下の弁護士らで結成された「明日の自由を守る若手弁護士の会(通称「あすわか」)」では、お茶を飲みながら憲法についておしゃべりをする「憲法カフェ」を提案しています。現在、全国の団体や飲食店から、毎日のように憲法カフェの講師依頼が飛び込んできます。

お話しするテーマは会場によってさまざまで、特定秘密保護法や集団的自衛権など、ニュースを騒がせている話題はもちろん、「そもそも憲法って何?」「私たちって憲法を守らなくちゃいけないんでしょ?」といった、憲法の「そもそも論」をお話しすることも数多くあります。

◆クイズの答え ~憲法って何?~

ちなみに、冒頭のクイズ、間違いは2つあります。

1つ目は、憲法は「国民が守る」という点。憲法は、主権者である私たちが国の暴走を防ぐために作ったルール。憲法を守るのは国、憲法に守られるのが国民です。

実は、もう一つ、間違いがあります。憲法が「法律である」とする点です。憲法は、刑法や道路交通法のような法律ではなく、法律より上位の(つまり法律よりエラい)、国の基本原則を定めたルールです。このため、国会が作った法律も、国や行政の行為も、憲法に違反している場合には無効になります。もしも、時の為政者が暴走しても歯止めになってくれる。それが憲法なのです。

◆ぜひ憲法カフェにご参加ください

このような普段はあまり意識しないことを、憲法カフェではクイズや「あすわか」発行の紙芝居を使うなど工夫しながら、お話ししています。

城北法律事務所では、私はもちろん、田村弁護士や種田弁護士などが「あすわか」に所属し、憲法カフェや憲法講座で、たくさんの方と交流しています。

「最近話題の『改憲』や『集団的自衛権』について知りたいけど、なかなか機会がない」という方、「ママ友同士で話をしてみたいけど、堅苦しいのは嫌!」という方、お気軽にお問い合わせください。ぜひ、ご一緒に、楽しく(そして美味しく)、憲法について語り合いましょう。


沖縄県知事選挙
沖縄に海兵隊がいらないこれだけの理由

弁護士 田場暁生

日本全体の0・6%の面積しかない沖縄に米軍専用施設(基地)の74・7%が集中しています。しかし、安倍政権は、米軍海兵隊が使用している普天間飛行場の「移設先」として県内名護市辺野古沖への新基地建設を強行しようとしています。沖縄では、昨年11月の県知事選で、新基地建設反対の翁長氏が基地建設容認の現職知事に10万票の大差をつけて当選しました。12月の総選挙では、全小選挙区で基地建設反対派の候補が当選しました。

基地の存在は沖縄経済に不可欠なのでしょうか? 沖縄に海兵隊がいないと日本の安全は守れないのでしょうか? いずれも「NO」です。

基地経済が占める割合は、復帰時の1972年の15・5%から2011年には4・9%まで減っています。復帰後本土との格差是正が相当程度図られ、現在ではむしろ、過重な米軍基地の存在が道路整備や計画的な都市づくり、産業用地の確保等地域の振興開発を図る上で大きな制約となっています。また、在沖海兵隊は6ヶ月のローテーションで米本国から沖縄に派遣され、佐世保のヘリ空母を含む艦隊に乗船してアジア太平洋をパトロールしています。海兵隊は常時沖縄にいるわけではなく、軍事的にはグアムにいてもオーストラリアにいても支障はないのです。

安倍首相や政府与党は「抑止力維持のために辺野古の基地が必要だ」といいますが、軍事的観点からみてナンセンスです。冷戦時代の米ソ関係と異なり、米中は経済的な結びつきなどきわめて密接な関係にあります。アメリカが米中間の紛争に海兵隊を投入することはまず考えられません。米軍事戦略も変化(リスク軽減のために兵力の分散)している中、沖縄の海兵隊は中国の短距離ミサイルの射程内に入っており、中国に近すぎて抑止力とはなり得ないのです。

森本敏元防衛大臣は「海兵隊は軍事的には沖縄でなくても良いが政治的には沖縄が最適」と言いました。他の地域だと反対されるのでだめだが沖縄なら反対があっても基地を押しつけてよい、ということです。

これは明確な差別です。この間沖縄の選挙で示されたのは「差別を続けるなら闘うよ」との民意です。

私は昨年、ワシントンDCのロースクールへの留学経験などをきっかけに、仲間と「New Diplomacy Initiative(新外交イニシアティブ・ND)」という団体を設立しました。NDは、沖縄米軍基地問題、TPP、原発、領土問題、歴史問題などの安全保障・外交問題について、今まで外交に反映されなかった声を届けるために、国内外で情報収集・政策提言や米国会議員などに直接の働きかけをします(ジャーナリストの鳥越俊太郎氏や元内閣官房副長官補の柳澤協二氏などが理事)。この間、名護市長訪米の企画・運営などもしており、新しい沖縄県知事とも様々な協力をしていきたいと思っています。この新しい日米関係を作る取り組みに関心をお持ちの方、ぜひNDをご支援ください(ウェブサイトは「新外交」で検索)。