城北法律事務所 ニュース No.73(2016.1.1)
目次
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- 1 安保法制の違憲性明白な憲法違反である
- 2 国会の議論の整理引き続き"戦争法制"廃止の運動を
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- 1 戦争法廃止へ野党は共闘をたたかいはこれから!
- 2 連続憲法企画のご紹介「戦争法廃止へ 今憲法9条を学ぶ連続企画」にご参加ください
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- 1 池袋駅前でアピール今年も街頭宣伝を続けます
- 2 今こそ表現の自由を! ―見守り弁護団国会前の過剰警備への対応
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- 1 50周年記念レセプションこれからも地域に根ざして
- 2 あきらめずにたたかいます国会前でお会いしましょう
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- 1 中国残留孤児お父さんは日本人? -東京高裁で逆転勝訴!
- 2 成年後見制度利用促進法任意後見制度の活用
- 3 ウイルス性肝炎患者の救済を求めて-運動が前進し、さまざまな制度がかちとられています-
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- 1 遺言について(2015年9月16日セミナーより)遺言書を作ることにはさまざまなメリットがあります
- 2 遺産相続(2015年11月18日セミナーより)遺産相続にトラブルはつきもの早めに弁護士に相談を
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- 1 東日本大震災から6年目へ~ 一人の被災者も取り残さない復興政策を ~
- 2 まさか同期が選挙に出るなんて私もがんばっていこうと思う
- 3 原発被害者~指定区域外避難者首都圏に避難した原発被害者の裁判
- 4 マイナンバー法のリスク一度にすべての情報が漏れる危険性
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- 1 ブラック地主・家主対策弁護団を設立しました
- 2 R26号線ハッピーロード大山商店街を守ろう!
- 3 ひとこと
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- 1 沖縄とは共にない~問われているのは日本の民主主義~
- 2 大川原栄弁護士退所あいさつ
- 3 千代崎せつ子42年間お世話になりました
中国残留孤児
お父さんは日本人? -東京高裁で逆転勝訴!
弁護士 松田耕平
中国残留邦人のAさん(1946年生まれ、現在69歳)は父親が誰であるかを知りません。戸籍を見ると、父親欄が空欄となっています。「おそらく日本人らしい」という程度です。事実を知る母親は、誰が父親であるかを明かさないまま亡くなってしまいました。
2007年、全国各地で相次いだ中国残留孤児国家賠償請求訴訟を契機として中国残留邦人などの支援法が作られました。
中国残留邦人であるAさんも支援を受けるために申請しましたが、戸籍上、父親が不明であることを理由に申請が却下されました。このような扱いは不当であるとして国を相手に裁判を起こしました。
しかし、誰であるかを知る人は皆亡くなってしまっています。決め手となる証拠のないなか、「父親の氏名や住所などは分からないが、”日本人であること”は間違いない」と主張立証を尽くしてきました。
一審・東京地方裁判所はこれを認めませんでしたが、2015年11月、二審・東京高等裁判所は東京地方裁判所の判断を覆し、日本人である可能性が高いとしてAさんの請求を認めました。
戦争によって運命を翻弄された人は数多くいますが、Aさんもその一人です。裁判で勝った今も、未だに父親が誰であるかは分からないままです。父親が分からないというAさんの心中は察するに余りあります。でも、「日本人である可能性が高い」と判断した今回の裁判がAさんの人生にとって少しでも前向きな材料になったら……と願ってやみません。
成年後見制度利用促進法
任意後見制度の活用
弁護士 小薗江博之
2014年12月末日における、成年後見制度利用者数は合計で18万4670人であり、そのうち任意後見は2119人(成年後見14万9021人、保佐2万5189人、補助8341人)にとどまっています。
任意後見は、本人が判断能力を有する時点で、将来自分が能力を失ったときの財産管理、身上監護をする者を予め決めておく制度で、自己決定権の延長制度といえます。
2006年の国際連合「障害者権利条約」12条では「障害者は生活のあらゆる場合において他の者との平等を基調とした法的能力を享受する」とされており、日本で認知症高齢者が推計で500万人に迫っている現状では、自分の将来のためにもっと活用されてよい制度です。
判断能力が低下してからだと、相続人候補者が一人でも反対すると、希望する身内の方を後見人に選任することができなくなります。
私の例では、年末に1件任意後見契約を締結しました。
ただ現在の後見制度は、被後見人と認定された者は、最近まで選挙権が制限されていたように、解決されなければならない問題点も残っているのが実情です。条約に抵触する制限も少なくありません。
この点、成年後見制度利用促進法が制定される予定で、より利用しやすくなることが期待されています。
高齢者の財産を、悪徳な詐欺集団から守るために、福祉型信託制度の新設も望まれます。
制度について、詳しい説明をご希望の方は、ぜひ当法律事務所にお問い合わせください。
ウイルス性肝炎患者の救済を求めて
-運動が前進し、さまざまな制度がかちとられています-
弁護士 小沢年樹
【障害認定基準が緩和されます】
平成22年度から、重度の肝硬変患者は障害認定を受けて自治体の医療費助成を受けられる制度がスタートしましたが、認定基準が厳しすぎて亡くなる直前程度の重症者でなければ認定されないのが実態でした。私たち予防接種B型肝炎訴訟原告団や、薬害C型肝炎訴訟原告団、日本肝臓病患者団体協議会の3団体が続けてきた署名や地方自治体意見書などの運動が実り、昨年には肝炎患者の実態に即した認定基準の見直し作業が進み、平成28年度からはあらたな認定基準に基づく運用が始まります。肝硬変患者のより広い救済につながることが期待されます。
【定期検査費用が助成されます】
現在、「抗ウイルス療法」という投薬治療には医療費助成があり、特にC型肝炎には一昨年から画期的な治療薬が実用化されていますが、この治療法が利用できない患者には何の助成もありませんでした。しかし、私たちの運動によって平成26年度から始まった定期検査費用助成が平成28年度からは対象者が大幅に拡充され、これまで医療費助成を受けられなかった肝炎患者でも安心して年2回の定期検査を受けられるようになります。詳しくは、各都県のホームページなどをご参照ください。
【国会請願採択・肝炎議連など】
平成27年通常国会では、私たち3団体を中心に取り組んだ国会請願署名が参議院で採択され、与党を中心とする肝炎議連も立ち上がりました。全国ではほとんどの都道府県を含む900以上の自治体で、肝硬変・肝がんの医療費助成をすすめる意見書が採択されています。ウイルス性肝炎に対するより包括的な医療費助成制度の実現をめざし、全国からオールジャパンの力を結集してがんばっていきます。