城北法律事務所 ニュース No.74(2016.8.1)

原発
原発ゼロをもとめる大きな流れ

弁護士 菊池 紘

3月11日の福島第1原発事故から5年余り。未だ10万人近くの人びとが、故郷を追われ遠く避難を余儀なくされている。しかし政府はエネルギー基本計画で原発を「重要なベースロード電源」とし、川内原発1、2号機を再稼働し、高浜原発3、4号機を動かそうとしている。

こうしたなかで、無責任きわまりない再稼働に警鐘を鳴らす司法判断が重ねられてきている。福井地裁は大飯原発の運転差し止めを認め、さらに高浜原発3、4号機の運転停止を命じた。この決定は大阪高裁で覆されたが、今度は大津地裁が同じ高浜原発3、4号機について運転差し止めを命じ、即座に運転は中止された。これらの裁判所は、新規制基準は緩やかに過ぎ、それに適合しても安全性は確保されるといえないとし、あるいは津波対策や避難計画についても疑問が残るとし、運転の停止を求めている。国民の生命と平穏な生活を守るために踏み込んだ判断である。裁判所の判断は、原発の人類とは共存できない危険性を見すえたもので、これには多くの人びとの共感がひろがっている。

他方で、福島第1の爆発により大きな被害を被った人びとによる、国と東電の責任を追及し原状回復と完全な賠償を求める裁判も、来年には判決を迎えようとしている。前橋地裁、千葉地裁の判決、そして4000人の人びとの「生業を返せ!地域を返せ!」との声に答える福島地裁判決が続く。ここで東電とともに国の責任が認められるなら、これを転機として原発のない社会へ道を開く新しい可能性が切り開かれよう。


26号線
ハッピーロード 大山商店街を守ろう!②

弁護士 湯山花苗

前回の事務所ニュースでもご報告しましたが、特定補助26号線整備事業によって、ハッピーロード大山商店街が分断される危機となっています。

私たちは弁護団を結成し,地域の人たちを原告として,2015年8月21日、国を被告として、「都市計画事業の認可処分を取消す」ことを求めて提訴しました。そして、この運動は広がりをみせ、2016年2月17日には第二次提訴を行いました。

訴訟で法的瑕疵を明らかにし、地域の人たちと一緒に街づくりができるように、東京都も訴訟に加えて進めています。国は、道路建設が違法かどうかという内容面のみならず、そもそも地域住民の人たちに訴える資格がないとして、訴訟を即時終了させるよう求めてきました。地域住民が、街づくりについて利害関係があることは間違いなく、道路ができるか否かは、道路建設計画地上に居住している人はもちろん、その近隣周辺で暮らす人にとっても、商店街で商いをしている人にとっても関心事であることは自明です。この点につき、私たちは、国の主張に対し、判例や学者の論文等で反論しました。

道路建設計画を知らされずに、最近店を始めた人もいます。裁判を通じて、情報提供もしていきたいと思っています。まだまだ裁判は続きます。ご支援ください。

よろしくお願いします。


B型肝炎
国会の衆参両議院で請願採択!
ウイルス性肝炎患者の運動が前進しています

弁護士 小沢年樹

衆議院・参議院で国会請願が採択されました

平成28年通常国会の最終日である6月1日、私たち全国B型肝炎訴訟原告団のほか、日本肝臓病患者団体協議会、薬害肝炎全国原告団の患者3団体が取り組んだ国会請願署名が衆議院・参議院の両院で採択されました。請願項目は、①肝硬変・肝がん患者に対する医療費助成②B型肝炎を根治する新薬の開発促進③肝炎ウイルス検査と陽性者に対するフォローアップ(検査・通院を促すこと)の推進です。

全国で20数万の署名を集め、全ての与野党会派から合計310名の国会議員に紹介議員となっていただいて、今回の国会請願を成功させることができました。署名にご協力いただいた皆さま、本当にありがとうございました。

B型肝炎の患者運動が発展しています

これまで、差別や偏見も原因となって患者としての運動に取り組むことが困難だったB型肝炎患者たちが、予防接種注射器打ち回しの責任を問うB型肝炎訴訟を通じて、社会や政治に働きかける活動に参加しています。

また、患者同士の交流会や専門医による医療講演会などを各地で開き、お互いに励まし助け合い、患者として正面から病気に向き合うことで、いきいきとした人生を歩みはじめた方が大勢いらっしゃいます。私たちは、さまざまな病気を抱えた患者さんたちを含む全ての人が生活しやすい社会をめざして、これからも運動をすすめていこうと考えています。


公式確認から60年
ノーモア・ミナマタのたたかいは中盤の佳境へ

弁護士 津田二郎

今年は、1956年5月に水俣病が「公式発見」されてから60年。現在も、2012年7月末に水俣病特措法に基づく申請受付が締め切られ、救済されないまま切り捨てられる水俣病被害者の救済を求めるたたかいが続いています。

恒久対策を求めて国・チッソを相手に2014年に提訴した東京訴訟は、第4陣原告まで合計67人に、2013年に提訴した熊本訴訟では、第10陣原告まで合計1224人になりました(ほかに大阪地裁で原告84人、新潟地裁で原告115人が係属中)。

争点は、原告らが水俣病被害にあったのかに尽きます。

被告らは、原告の感覚障害は存在しないといわんばかり。

私たちは、原告の水俣病被害を立証するため、水俣病が発生している「曝露地域」とそうでない「非曝露地域」の住民の健康診断結果をもって、曝露地域に住んでいて四肢末梢優位の感覚障害があれば、そこで生じている健康被害は水俣病といえることが高い確率で推測できるという「疫学」の考え方に基づき主張しています。論戦は続きますが、ひとつの山場を迎えました。

また水俣病公式確認60年実行委員会は、水俣病の全貌解明のため、不知火海沿岸、阿賀野川流域住民(出身者を含む)の健康調査及び環境調査を行い、今後の水俣病対策に生かすことを求める署名運動を、年内取りまとめを目標に始めました。ご協力いただける方は私宛までご連絡ください。