城北法律事務所 ニュース No.80(2019.8.1)

<事件報告>特定整備路線(道路問題)

弁護士 湯山 花苗

1 特定整備路線補助26号線とは?

東京都は、2015年2月24日、国土交通省から70年以上前に都市計画決定のあった道路事業の認可を取得しました。この70年以上前の都市計画決定とは、終戦から1年も経たない1946(昭和21)年4月25日に戦災復興院が決定したもので、品川区東大井1丁目を起点とし、板橋区氷川町を終点とする延長が2万2350メートルの都市計画道路で、「特定整備路線補助26号線」と通称されています。全国でも有名な商店街の1つである「ハッピーロード大山商店街」を分断するものです。大山地区については、これまで住民と板橋区が協議して、「大山まちづくり総合計画」を策定するなど、住民との合意の上でまちづくりを進めてきましたが、本件事業認可は、住民との協議ではなく、再開発を優先し、道路整備ありきで、住民や地域環境を置き去りにして唐突に進められたもので、まちづくりの在り方としてあってはならない進め方です。そこで、地域住民らが原告となり、都市計画道路の事業認可を取消すことを求め提訴しました。

2 特定整備路線補助86号線とは?

同じ問題は、北区赤羽でも起きました。北区赤羽西五丁目から赤羽西一丁目に至る延長約1150メートル、計画幅員約20メートルの道路を通す内容の事業認可がなされたため(「特定整備路線補助86号線」と称されています。)、地域住民らが原告となり、この事業認可の取消を求め提訴しました。当然のことながら、赤羽地域も戦災復興の必要性はなく、すでに住環境が整備され、交通網も十分です。この道路は、自然観察公園、スポーツの森公園、静勝寺を通る計画ですが、土地の高低差や地層の点からすれば、道路建設時及び建設後の安全性は保たれるのか、地下水が漏れ出すことはないのかなど、問題が山積しています。さらに裁判では、今ある緑豊かな環境を破壊して大きな道路をつくる意味は何かについても、問いただしているところです。

3 現在の情勢と今後の進行

国や東京都は、道路は防災の観点から必要であると繰り返し主張していますが、この防災の観点として掲げられている延焼遮断帯構想には、専門家からも疑問が呈されており、結局は、再開発優先、道路建設ありきでなされた本件事業認可の口実でしかないと考えています。実際に、補助26号線が通ることを前提として、板橋区は大山駅前にバスロータリーを作る計画(駅前広場)を打ち出したことで、道路建設地以外の土地の立退問題まで生じさせています。突如として沸いたこの駅前広場の計画も、住民の賛同が得られていないまま進められようとしており、このような行政の横暴な行為を止めるためにも、道路計画をストップさせなくてはなりません。

今後裁判では、専門家証人や原告らに直接裁判所で話をしてもらい、道路建設ありきで、地域の実情を無視し、住民の意見を反映されずになされた事業認可の違法性を厳しく追及していきます。
引続き、ご支援をお願いいたします。