城北法律事務所 ニュース No.80(2019.8.1)

新手の詐欺にご用心 ~受任事件から

弁護士 小薗江 博之

最近、投資用マンション販売詐欺の相談が増えています。「不動産投資に興味はありませんか?」と、ワンルーム分譲マンション購入の勧誘を受けたことはありますか。勧誘時に、節税効果、資産形成、安定収入、相続税対策などが投資のメリットとして説明されます。しかし投資のメリットデメリットを検討する前に、注意することがあります。

■ 購入を考えるとき、まず第1に価格が適正かどうかの検討が不可欠です。相談事例では、時価1500万円のマンションを2400万円で業者から売りつけられた例がありました。これはれっきとした詐欺です。そこまでひどくなくても、普通の人が購入しないマンションを勧められたと言う事例はたくさんあります。

■ 第2に、最近新聞にも出ましたが、購入しやすくさせるために、マンションに住まないのに住宅ローンが利用できると騙す事例があります。金融機関は、投資用であれば、低利の住宅ローンを利用することはできません。後に投資用であると金融機関にわかれば、全額すぐに返還せよと請求されても仕方ありません。

■ 第3に、サブリース契約の有無です。不動産販売会社が管理し、家賃保証をするのですが、家賃保証は、実は金額を途中で変更される可能性が高いのです。またマンションを売却するとき、管理費として家賃半年分を業者に支払います。この点の説明がされることはあまりありません。

不要な住宅リフォームやシロアリ対策、除湿剤の売りつけ等高齢者住宅を狙った詐欺も多発しています。

ほとんどの悪質リフォーム業者は、「屋根」「床下」「排水管」「外壁」といった、居住者が、気がつきにくいところを無料で点検する口実で近づいてきます。そして過度にお客の不安を煽る、大げさな表現をします。

適切な工事をおこなうリフォーム会社は不安を煽る言葉は使いません。お客の意向を伺ったあとで、必要と思われるリフォームプランを提案しています。

飛び込みでの契約にはクーリングオフが適用されますが、悪質業者は3日以内に支払をすれば100万円減額すると言うなど、工事の即決を迫り、支払いをさせます。
疑問に思った時は、弁護士にご相談ください。


架空請求詐欺

弁護士 野口 景子

ここ2年ほど、依頼者などから急にご相談いただくのが「架空請求詐欺」です。犯行グループが何者かわからず、裁判やクーリングオフなどの事後救済を利用するのが難しく、近年被害が急増しています。

架空請求詐欺の手法はさまざまです。「訴状が提出された」「連絡がなければ給料を差し押さえる」と法務省を名乗った葉書が送られてきたり、「本日中に連絡がなければ法的手続に移行する」と通販業者を名乗ったSMS(ショートメッセージサービス)が送られてきます。最近では、「地方裁判所」を名乗って封書が送られてきたというケースもあります。身に覚えのない請求でも、葉書やSMSに記載された電話番号に連絡をとってしまいそうになりますが、絶対に連絡してはいけません。電話をすると「サービス利用料を今日中に払って」とか「弁護士に依頼するのに必要」とさらに騙され、お金を払わされてしまいます。架空請求詐欺に対しては、「無視」「連絡しない」が鉄則です。

身に覚えのない請求でも不安になったら、公的機関、例えば消費生活センター(局番なし188)に電話相談するのが一番です。葉書やSMSの送り主とされている会社のコールセンターに電話して確認したり、知り合いの弁護士に一度電話してみるのもおすすめです。

スミッシング

巧妙化しているのがスミッシングと呼ばれるSMSを利用して個人情報を騙し取る犯罪です。

実在する通販業者や宅配業者などを名乗り、「未収料金がある」「支払方法の登録が必要」などと理由を付けてSMSを送信してきます。指定されたホームページにアクセスすると、パスワードなどの個人情報の入力や、個人情報を抜き取るためのアプリのダウンロードへ誘導されていきます。盗まれた個人情報は他の犯罪に悪用されたり、暗証番号やクレジットカードの番号などが流出してしまう事態となります。

対処方法は架空請求詐欺と同じです。SMSに記載されたホームページへのアクセスは厳禁です。