城北法律事務所 ニュース No.80(2019.8.1)
目次
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- 1 憲法9条と戦争のリアル
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- 1 個人の尊厳をふまえ多様性を求める
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- 1 法改正 「働き方改革」
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- 1 新手の詐欺にご用心 ~受任事件から
- 2 架空請求詐欺
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- 1 <法律相談>交通事故被害について
- 2 <法律相談>会社が残業代を支払ってくれない どうしたら…
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- 1 弁護士に聞きたい どうして弁護士になったの?
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- 1 <事件報告>群馬大学医学部附属病院事件~再発防止のための取り組み~
- 2 <事件報告>HPVワクチン薬害訴訟
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- 1 <事件報告>B型肝炎訴訟について
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- 1 <事件報告>特定整備路線(道路問題)
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- 1 「警視庁機動隊の沖縄派遣は違法住民訴訟」が結審します
- 2 子育て
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- 1 10周年を迎えた池袋派遣村の活動報告
- 2 城北法律事務所憲法企画
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- 1 所員からのひとこと 暑中お見舞い申し上げます 2019夏
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- 1 入所のご挨拶
- 2 移籍のお知らせ
<事件報告>群馬大学医学部附属病院事件~再発防止のための取り組み~
群馬大学医学部附属病院の第二外科・消化器外科・肝胆膵グループ(当時)において、腹腔鏡下肝切除術、開腹手術等を受けた35名以上の患者が術後に死亡した事件。マスコミ等でも広く報道されたのでご存じの方も多いと思います。私は「群馬大学病院被害対策弁護団」(団長:安東宏三弁護士、事務局長:梶浦明裕弁護士)の一員として、一部のご遺族(遺族会)とともに真相究明、謝罪要求、再発防止のための取り組み等を続けています。
群馬大学病院はご遺族に対して真摯に説明・謝罪し、再発防止のための諸施策に取り組み始めました。その一部には、ご遺族が提案した方策(説明時の録音等)も取り入れられています。
こうした組織の改革が進むなか、実際に診療行為を担当した執刀医と上司の診療科長は、診療行為の不備は認めず、第三者的立場の専門家(日本外科学会)の評価も受け入れていませんでした。そして現在も医師として診療行為に従事しているらしいです。
しかし、執刀医や診療科長が、自らの診療行為の至らない点を反省しないでそのまま医師としての活動を続けたらどうでしょうか?また同じことを起こしてしまうかも知れません。医療事故被害者の大きな願いの一つに“再発防止”が挙げられますが、当の医師本人が問題点を受け止め、反省しなければ、再発防止は困難です。
そこで、遺族会と弁護団は、厚生労働省に対し、執刀医と診療科長について行政処分(戒告、医業停止等)を求めつつ、これを世間にも広く訴えるための署名活動に取り組みました(署名活動は街頭でも行いましたが、この時に思ったこと、感じたことはまた後日、ニュースで書きたいと思います)。集まった署名は6000筆を超え、これを本年5月22日、厚生労働省に提出しました。
ところで、執刀医や診療科長は刑事責任を問われてはいませんが、これまでに出された医師の行政処分のほとんどは医師本人が刑事裁判で有罪とされた場合で、刑事責任を問われていない医師に対しての行政処分は前例に乏しい状況です。しかし、刑事責任が問われてから行政処分を出すのであれば、行政処分の独自の意義は乏しくなってしまいます
群馬大学病院事件の被害の重大性、診療行為の悪質性、社会的影響の大きさからすれば、行政処分を出さない理由はありません。遺族会と弁護団は行政処分を求める要望書を三度、厚生労働省に提出していますが、これに対し厚生労働省はどう対応するのか。行政処分の意義と厚生労働省の職責・見識が問われているこの事態を注意深く見守っていただきたいと思います。
<事件報告>HPVワクチン薬害訴訟
子宮頸がんを予防するとして開発された HPVワクチンの承認から10年が経過し、その間に、接種後、全身の痛みや運動障害、記憶障害、学習障害など様々な症状に苦しみ、中学や高校にも通学できず、先の見えない闘病生活を続ける何人もの少女の訴えが届いてきました。
2016年7月、東京、名古屋、大阪、福岡の4つの裁判所に100名を越える少女らが国(厚生労働省)と製薬メーカー2社(グラクソスミス・クライン社とMSD社)を被告とする裁判を起こしました。
ワクチンは、病気の治療のためにやむを得ず打つものではありません。健康な少女達が、この先病気にならないようにと、そして、世の中に病気が広がることがないようにと、国(区市町村)や学校からの勧めを受けて接種するものです。ですから、ワクチン接種後にこれまで無かった症状に苦しむようなことが生じたら、仕方が無いよね、で済ますことは出来ません。予防接種に対しては救済制度が作られていますが、救済の間口は狭く、救済の内容は決して充分とはいえません。
ワクチン接種後に生じた症状は、これを幅広くワクチン接種による副反応と捉え、病気が蔓延することを防止することで社会のためにもなるとしてワクチン接種を勧めた国と自治体が救済に全力を尽くし、又、このワクチン販売で多大な利益をあげる企業も、その責任を果すべきは当然ではないでしょうか。
わたしは、そんな思いから弁護団に参加し、副代表として、少しガタがきた身体にむち打って奮闘しています。
原告らの訴えは思春期にある少女らに共通して認められ、ワクチンのせいではないとの声もあります。しかし、国がワクチンの積極的な接種勧奨を中止してから6年が経ち臨床現場からは新たな被害の訴えは聞こえてこなくなりました。
被害を訴えているのは日本だけではありません。昨年3月東京で開かれた国際シンポジウムには日本を含む5カ国の被害者団体が参加、どの国からもワクチン接種後に同様の症状の訴えがあり、被害救済に向けて裁判などを進めていることが報告されました。ワクチンが原因だったと考え、被害の救済と治療方法の開発に全力を尽くすべきです。
裁判は、これからです。東京地方裁判所では、9月11日14時から11回目の裁判が開かれます。HPVワクチン被害東京支援ネットワークという、この裁判を支える人達のつながりも出来てます。各地で、被害者の訴えを聞く学習会なども開かれています。ぜひ関心をもって、そして、可能なら支援の輪に加って下さい。
薬の副作用はゼロにはなりません。でも、避けることが出来た副作用を発生させ、その被害を放置する薬害はなくしたいとおもいます。繰り返される薬害の根絶を願って、今年は8月22~23日に20回目の薬害根絶デーが行われます。
これからも活動を続けます。