城北法律事務所 ニュース No.80(2019.8.1)

<事件報告>B型肝炎訴訟について

弁護士 武田 志穂

国内のB型肝炎(ウイルス性肝炎)の持続感染者は、110~140万人存在すると推計されています。このうち、昭和23年から昭和63年までの間に受けた集団予防接種等の際に、注射器(注射針または注射筒)が連続使用されたことが原因でB型肝炎ウイルスに持続感染した方は最大で40万人以上とされています。昭和23年頃までには、注射器の連続使用により肝炎が感染することが判明していたにもかかわらず、国が注射器の連続使用を禁止せず放置したため、感染が広がってしまったのです。

幼少期に受けた集団予防接種等で、注射器が連続使用されたことによってB型肝炎ウイルスに持続感染したとされる方が原告となり、国に対して損害賠償を求めて訴えを起こしたのがB型肝炎訴訟です。平成元年に札幌地方裁判所で提訴され、平成18年には国の責任を認める最高裁判決が下されました。しかしその後も国が被害者の救済を怠ったため、各地でB型肝炎訴訟が提訴され、その結果平成23年には全国B型肝炎訴訟原告団・弁護団と国との間に基本合意が成立し、翌年平成24年に特定B型肝炎ウィルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法 (以下救済法と言います)が制定されました。

救済法に基づき給付金を受給するためには裁判が必要ですが、救済法は時限立法(一定期間のみ有効な法律)であり、2022(令和4)年1月12日までに提訴しなければ、その後は給付金を受給することはできません。もしご自身がB型肝炎であり、昭和23年以降の集団予防接種で感染した可能性がある場合は、お早めに弁護士に相談されることをお勧めいたします。

現在B型肝炎訴訟の原告団は、薬害肝炎訴訟の原告団や日肝協(日本肝臓病患者団体協議会 )とも連携し、肝炎治療の拡充のための活動や、予防接種による肝炎被害に関する啓蒙活動など、様々な活動を積極的に行っています。薬害肝炎訴訟やB型肝炎訴訟の解決により、国が肝炎に関する助成制度等を制定しましたが、周知が徹底されていなかったり、わかりにくく利用しにくいものもあるため、各都道府県に対応したパンフレットなども作成し、各地の医療機関等を回り患者への配布を依頼しています。また、全国各地の看護学校や大学で、薬害被害を伝えるための講義も行っています。

肝炎は国民病であり、国策の誤りにより広まってしまった病気です。B型肝炎は、現時点でまだ完治することはなかなか難しい病気です。医薬品の開発等により、多くの方々が完治できるようになる将来を願っています。