城北法律事務所 ニュース No.81(2020.1.1)

〈法律相談〉個人で飲食店を経営 借金返済で首が回らず夜逃げしかない ~事業者の債務整理の問題について

弁護士 津田 二郎

Q【質問1】個人で飲食店を経営しています。お客様からの評判がよく、店内の設備が古くなったので、1年前に事業資金を借り入れリニューアルしました。ただ、当初の見込みが甘く、客足は変わらないのに、返済が難しくなりました。もう夜逃げしかないと思い詰めています。

A【回答】それはお辛いですね。でも夜逃げは最悪の方法です。借金は法的に処理しないとずっとついて回りますから、いざやり直そうという時の障害にもなります。ご家族の生活にも影響を与えるので、決してお勧めできません。借金の問題で命をとられるわけではないので、冷静に対応してください。

Q【質問2】金融機関のほかに多くの友人・知人からも借り入れをしているので、申し訳なく感じています。

A 貸し手側にとっても、夜逃げされるよりも事業を続けて少しずつでも返済した方が得ですから、返済を繰り延べしても事業が継続できるのであれば貸し手にとってもそれが合理的です。そういう観点で検討してはいかがでしょうか。

Q【質問3】実は、それ以外にも闇金融にも手を出しています。

A それは取り立てが怖かったでしょう。そういう場合にこそ弁護士に依頼して対応させるべきです。弁護士が介入することによって平和的に解決した例は幾らでもあります。場合によっては闇金融への返済そのものをしないで解決することもあり得ます。

Q【質問4】弁護士に相談すると何をしてもらえるのですか。

A まず弁護士は受任通知を債権者に発送します。債権者は、受任通知を受け取ると債務者に対して取り立てができなくなります。また債務の処理方針が決まるまでの間返済も止められます。こうして一時的に取り立てや返済を止めている間に、落ちついて返済計画を練り直し、弁護士が債権者に交渉します。直接債権者とやりとりしなくてよくなるので、精神的にずっと楽になります。もちろん闇金融などへの対応もお任せください。

Q【質問5】債権者が返済計画の変更に応じなかったら破産しなければなりませんか。

A 確かに返済のめどが全く立たなかったら破産も検討しなければならないでしょうが、法的に債務から解放されるので、夜逃げするよりも再スタートが切りやすくなります。客足がよく一定の収入が見込めるなら個人再生の利用も考えられます。さらにどなたかにスポンサーになることを依頼して店の事業を買い取ってもらい、その代金を返済原資にするなども考えられます。一人で抱えていては心細くて打開策が思いつかない場合でも、誰かに相談できれば、思いかげない解決案が見つかることもあります。いずれにせよ、弁護士に相談して一緒に打開策を考えるのがよいと思います。