城北法律事務所 ニュース No.81(2020.1.1)

〈法律相談〉離婚に伴う財産分与 ~財産を分けなければならないのか

弁護士 深山 麻美子

Q【質問1】折り合いが悪かった妻が実家に戻ってしまい、かれこれ3年になります。
子供もいないし、お互い離婚には合意していますが、妻から財産を分けて欲しいと言われています。妻に分与すべき財産としてはどのようなものがありますか?また、どのくらいの割合で分与するのでしょうか?

A【回答】婚姻期間中に、夫婦が協力して作った財産は財産分与の対象となります。
例えば、自宅などの不動産、預貯金、保険、退職金、株式などです。
また分与割合は2分の1とするのが一般的です。

Q【質問2】婚姻後、私が親から相続したり、叔父から贈与された財産も分与対象になりますか?

A 相続した財産や、贈与された財産は、夫婦が協力して作った財産ではありませんので、財産分与の対象にはなりません。

Q【質問3】妻と別居後、株式を購入しましたが、これも分与しなければなりませんか?

A 別居後は夫婦の協力関係が無くなるのが一般的ですので、別居後に新たに得た財産は分与の対象とはならないのが通例です。

Q【質問4】私は婚姻前から現在までずっと同じ保険に入っていますが、保険はどのように分けるのですか?解約しなければなりませんか?

A 保険は、別居時点での解約返戻金額を基準に分与するのが一般的ですので、必ずしも解約する必要はありません。
なお、婚姻前から保険に加入していた場合、婚姻前の保険料の支払に対応する部分を財産分与の対象から外すことも考えられます。

Q【質問5】定年は数年先ですが、まだ支払われていない退職金をどう分与するのですか?

A 別居時に自己都合退職した場合の退職金(見込額)、が分与の対象になります。
例えば、退職金見込額が600万円、勤続年数20年、うち婚姻期間(同居期間)が15年とすると、600万円×15/20=450万円が、財産分与の対象となります。

Q【質問6】妻は、婚姻後専業主婦でしたが、ときどきパートに出たりして、妻名義の預金があります。私の方からも財産分与を求めることはできますか?

A 妻名義であれ、夫名義であれ、婚姻中(別居時まで)に、夫婦の協力で作った財産は、財産分与の対象となります。

Q【質問7】自宅は私の単独名義で、ローンも私のみが負っています。
今、仮に売却した場合、ローンが500万円ほど残りますが、妻に250万円の債務を分けるのですか?

A 判例は、他に分ける財産がなく、ローンの債務だけが残る場合は、専業主婦あるいは収入に乏しい妻に債務を分与することはできないとしています。ただ、不動産とローンの問題は悩ましい点が多く、ケースバイケースですので、一度弁護士にご相談下さい。