城北法律事務所 ニュース No.82(2020.8.1) 創立55周年記念号
目次
弁護士紹介(3)
1999年 入所
田見 高秀 たみ たかひで
憲法12条、社会を変える力
50周年記念パンフレットを見返すと、憲法25条の生存権について触れていました。年金切下げや生活保護費切下げなど、国民の生存を守ることが自らの責務なのだという憲法遵守の意識が国に欠如してきているのではないかという懸念を抱いてのことでした。あれから5年経ちましたが、市民の自粛に見合うだけの補償がないコロナ関連の政策を見ても、国の意識に変化はないと思わざるを得ません。
しかし、こうした国の姿勢に対する市民の抗議の声が大きくなっていることは希望です。政府のお気に入りの検事だけ役職定年延長を認める特例を設けようとした検察庁法改正案には幅広い立場から多数の反対の声が寄せられ、法案成立を断念させました。まさに、私たちが生まれながらにして持っている自由と権利は、私たちの「不断の努力」によって保持しなければならないとする憲法12条を体現した出来事でした。
憲法が活かされより輝きを増すよう、事務所60周年に向けて私たちの事務所も歩んでいきたいと思います。
2000年 入所
大山 勇一 おおやま ゆういち
未解決の貧困問題
お金のなかった学生時代は、食事会のたびに大量に残される食事がもったいなくて、少々冷ややかな目で見られつつも、持参のタッパーに入れて持ち帰って夜食にしていました。しかし、それも昔の話。日本は世界で一番食べものを捨てる国だそうですが、一方で餓死したり、病院に行けずに衰弱死したりする方が後を絶ちません。一人のいのちもゆるがせにできないとの思いで作られた「生活と健康を守る会」という団体が全国にあり、私は住まいのある地域で会長を務め、行政との交渉も行なっています。衰弱死し数日経って発見された方に対して「こんなに早く発見されたのだから、この人は幸せだった」と述べる行政職員も中にはいるとのこと。貧困世帯があまりに多くなって感覚が麻痺しているのかもしれません。5年前のパンフには、「池袋派遣村なんでも相談会」で生活困窮者への支援活動について紹介しました。5年経って事態はむしろ悪化しています。コロナ禍の問題も加わり、貧困と格差是正への取り組みがより一層求められています。
2002年 入所
武田 志穂 たけだ しほ
コロナ禍の残すもの
私が弁護士登録をし城北法律事務所に入所したのが2002年10月。同時期に東京地方裁判所に提訴された薬害肝炎訴訟に参加しましたが、事務所が55周年を迎えた今年に至るまで薬害肝炎事件の活動を継続しているとは想像していませんでした。
今年はコロナ禍の影響を多くの皆様が受けたことと思います。当事務所の弁護士も多くがリモートワークを取り入れたり、事務員も在宅勤務を一部取り入れるなど、働き方を考えるきっかけとなったと思います。多くの人が減収等で大変な状況に置かれたのではないかと思いますが、コロナ禍がそのような負の遺産だけではなく、働き方の多様化・健全化やIT化の促進などの成果も残す結果となることを願ってやみません。