城北法律事務所 ニュース No.82(2020.8.1) 創立55周年記念号


2006年 入所

平松 真二郎 ひらまつ しんじろう

自粛の強要が広がる中で感じること

新型コロナ禍が広がる中、4月下旬、無観客ライブをネット配信したダイニングバーに営業自粛を求める張り紙がされ、5月には豊島区職員が、営業する飲食店を「営業するな! 火付けるぞ」と脅迫した事件が摘発されました。全国的にも、県外ナンバーの車を煽る、壊すといった嫌がらせがされ、新型コロナ感染者の身元を特定して匿名で攻撃するなどの行為が繰り返されています。いま「自粛警察」「マスク警察」といった言葉があふれています。これは、強大な社会的同調圧力を背景にした自発的ではない外出、営業休止の強要とも言うべき事態です。かつて、日本では、強い社会的同調圧力が国民精神総動員に利用され、戦争に積極的な協力をしない人に対して「非国民」「国賊」という非難を浴びせることに利用されてきました。それを是とする国民性が排外主義と結びつき、関東大震災の際には「自警団」の名のもとで朝鮮人虐殺の非道にもつながりました。21世紀の日本社会でも、これに似た現象が「自粛警察」の名のもとで起こっているように感じます。


2007年 入所

加藤 幸 かとう さち

未来を見つめて

城北法律事務所の歴史の中で変わらないもの、それは憲法を守る、市民の生活を守るという理念です。私も憲法を守りたいという思いで弁護士になってから14年間、憲法を活かす為の様々な活動に関わってきました。残念ながら、憲法を改悪しようとする動きは続いており、経済や教育の格差も広がっていますが、悲観してはいられません。まだまだこれから。城北法律事務所が60周年、80周年そして100周年を迎えた時の社会がより良いものとなるよう、今後も一層精進していきたいと思います。


2009年 入所

茨木 智子 いばらき さとこ

湯呑の思い出

入所した頃は、毎日が慌ただしく断片的な記憶ばかりで、時期も順序もおぼろげです。ただ、鮮明に覚えているのは、湯呑のことです。

弊所では、来客時のために、所員それぞれに専用の湯呑がありました。お茶を用意する棚に、様々な色形の湯呑が伏せて置かれていて「どれが誰のかわからなくなったりしませんか?」と尋ねると「全部、裏にお名前が書いてあるし、もう覚えてしまいました」と返ってきました。

入所直後は来客用の湯呑で打合せに同席していました。ある日、呼ばれて行くと二つの湯呑がありました。やわらかい色合いのものとどっしりした黒いもの。「新しく女性が入ると聞いた時、仕舞っておいたこの可愛いのがいいかなと思って用意したのですが、こちらのようなシンプルさを良しとする方もいますし、どちらでもお好きなほうを選んでください」と。

人のあたたかさは受け継がれていくものだと思いますが、相手のことを考える、色々な意見をそのまま受け止める、それができる場所を作り支えてくださった方々に感謝します。