城北法律事務所 ニュース No.83(2021.1.1)

<事件報告>建設アスベスト訴訟 勝訴判決を積み重ね… 最高裁で国の責任が確定!あとは建材メーカー!!

弁護士 松田 耕平

これまで何度もご報告してきましたが、今回もまた建設アスベスト訴訟についてです。2020年8月に東京高裁、9月に東京地裁でそれぞれ判決がありましたが、いずれも国と建材企業の責任を認める勝訴判決でした。これで国には14連勝、建材企業にも8度目の勝利です。国との関係では、一人親方や零細事業主に対しても責任を負うか否かが主たる争点となっていましたが、どちらの判決も明確に国の責任を認めました。建材企業との関係では、当時、どの程度の市場占有率(マーケット・シェア)を有していたかがポイントとなりますが、20%以上のシェアを有する建材企業の製品は、被災者(建設作業従事者)に到達した可能性が高いとして責任を認めました。

「あやまれ! つぐなえ! なくせ! アスベスト被害!!」をスローガンとする建設アスベスト訴訟も、最初の提訴から数えると13年目を迎えます。この間の勝訴判決の積み重ねで、国と建材企業に責任があることは明らかとなってきたので、「もういい加減、国も建材企業も争うことをやめ、速やかに責任を認め、謝罪と賠償をするべきでは?」と思うのですが、国も建材企業もまだまだ責任を争い続けていました。「まだ最高裁がある! 結果はまだ分からない!!」と、僅かな希望に望みを託しているのかも知れません。

しかし! 2020年12月15日、最高裁は、東京訴訟について国の上告を棄却する決定を出しました。これで、国のアスベスト規制が著しく不合理であったとして責任を認めた東京訴訟の東京高裁判決(2018年3月14日言渡)が確定しました。この高裁判決は、いわゆる「一人親方」に対する国の責任も認めているので、この点も確定したことになります。建設作業従事者に対する国の責任を認めた初めての、しかも画期的な最高裁判決ですので、今後、全国的に大きな影響を与えると思います。

他方、建材メーカーの責任については、最高裁はまだ判断をしていません。2021年2月25日に当事者双方から意見(弁論)を聞くことが予定されており、それから数ヶ月後に判断を示すと目されています。13年の月日を重ねての集大成となる判決ですから、原告の皆さんにとって最大・最高の内容となることを切に願うばかりです。

もっとも、最高裁判決が出てもこれで全てが決着するわけではありません。原告の皆さんの願いは、このような裁判手続きによらずに簡易・迅速に補償を受けることを可能とする「基金制度」の創設です。ある意味、勝訴判決を得ること以上にハードルの高い課題ではありますが、最大・最高の最高裁判決を梃子に、世論も味方につけて、一気呵成に国と建材企業に対して迫りたいと考えています。引き続きご支援よろしくお願いいたします。