城北法律事務所 ニュース No.84(2021.8.1)
目次
- Page 2
- 1 改正憲法改正手続法が成立~公正・公平な国民投票実施にはまだ大きな問題が残る~
- Page 3
- 1 立ち上がって声を上げる人々‥‥大震災と福島第一事故からの10年
- Page 4
- 1 マンション管理のご相談はいかがでしょうか
- Page 5
- 1 入管法改正案廃案難民認定申請者への適正手続きの保障こそ必要
- Page 6
- 1 ご注意「働き方改革」2023年4月から中小業者も1か月60時間超の時間外労働の割増率が50%に
- Page 7
- 1 <事件報告>訴訟の現場をゆく ~第2回・赤羽編~
- Page 8
- 1 <事件報告>建設アスベスト訴訟~13年の激闘の末、最高裁で勝訴!政策転換へ!!~判決をてこに国の被害補償制度を創設 一方課題も~
- Page 9
- 1 <事件報告>全国B型肝炎訴訟で最高裁逆転判決~最初の発症から一定期間が経過した被害者の権利救済に道~
- Page 10
- 1 <事件報告>無拠出の障害年金の逸失利益性障害者が交通事故で死亡「もらえたはずの障害年金は損害にならない」でよいのか
- Page 11
- 1 弁護士に聞きたいどうして弁護士になったの?
- Page 12
- 1 <法律相談>会社が倒産しても経営者(保証人)は破産しなくてもすむ場合があります~『経営者保証ガイドライン』の利用について~
- Page 13
- 1 普通賃貸借契約から定期賃貸借契約への変更要求を断れるか~大家さんから定期賃貸借契約への変更を迫られています~
- Page 14
- 1 所員からのひとこと
普通賃貸借契約から定期賃貸借契約への変更要求を断れるか
~大家さんから定期賃貸借契約への変更を迫られています~
弁護士 深山 麻美子
Q【質問】 かれこれ20年以上、更新を繰り返して、アパートの一室を借り続けています。今年更新を迎えるのですが、大家さんから、定期賃貸借契約に変更してくれ、他の賃借人はみな応じてくれている、と迫られています。そもそも定期賃貸借契約は、今までの賃貸借契約とどう違うのでしょうか?
A【回答】 今までの賃貸借契約(=普通賃貸借契約)と、定期賃貸借契約の決定的な違いは、定期賃貸借契約は、更新がなく、賃貸借契約期間が満了したら、契約が確定的に終了してしまう点です。
Q 今までの賃貸借契約も、3年という契約期間が決められています。
A 今までの賃貸借契約は、契約期間が決まっていても、大家さんが、遅くとも期間満了6か月前までに更新拒絶の通知をし、かつ正当事由がなければ、更新拒絶は認められません。この場合、従前の契約と同一の条件で契約を更新したとみなされます。これを法定更新といいます。
Q 正当事由はどういう場合に認められるのですか。
A 正当事由は、大家さん側と借主側の、それぞれの諸事情・利用の必要性等を勘案して判断されますが、借主側の事情・必要性が重いと判断され、正当事由が否定されるケースが多いとされています。
Q 定期賃貸借契約でも、契約が更新されることはないのですか。
A 定期賃貸借契約は、そもそも更新がない契約です。ただ、大家さんと賃借人双方が合意すれば、改めて再契約をすることはでき、その場合は引き続きアパートに住み続けることはできます。しかし、大家さんが任意に合意してくれない場合、契約満了とともにアパートを立ち退かなければなりません。
Q 3年の契約期間が満了したら、大家さんが再契約に応じてくれない限り、アパートを立ち退かなければならなくなるのは困ります。今までどおり更新できる賃貸借契約を続けたいのですが、大家さんから定期賃貸借契約にするように求められたら、応じなければならないのでしょうか。
A さきほど述べたとおり、大家さんが今後は定期賃貸借契約しか結ばない、今までの契約は更新しない、といってきても、今までの契約は、遅くとも期間満了6か月前に更新拒絶を通知し、かつ正当事由がない限り、従前と同一条件で法定更新されます。ですから、定期賃貸借契約変更に応じなければならない、ということはありません。
Q 大家さんとは、あまりもめたくないのですが…。
A 定期賃貸借契約は、更新がなく、期間が満了すれば確定的に契約終了になってしまう点で、賃借人にとって大きく不利になります。その点を考慮して、従前の契約より、賃料を減額したり、契約期間を延ばすなどの利益調整をしているケースもあります。いずれにせよ、定期賃貸借契約への変更に応じるかどうかは、慎重に考えて下さい。