城北法律事務所 ニュース No.84(2021.8.1)

目次

普通賃貸借契約から定期賃貸借契約への変更要求を断れるか
~大家さんから定期賃貸借契約への変更を迫られています~

弁護士 深山 麻美子

Q【質問】 かれこれ20年以上、更新を繰り返して、アパートの一室を借り続けています。今年更新を迎えるのですが、大家さんから、定期賃貸借契約に変更してくれ、他の賃借人はみな応じてくれている、と迫られています。そもそも定期賃貸借契約は、今までの賃貸借契約とどう違うのでしょうか?

A【回答】 今までの賃貸借契約(=普通賃貸借契約)と、定期賃貸借契約の決定的な違いは、定期賃貸借契約は、更新がなく、賃貸借契約期間が満了したら、契約が確定的に終了してしまう点です。

Q 今までの賃貸借契約も、3年という契約期間が決められています。

A 今までの賃貸借契約は、契約期間が決まっていても、大家さんが、遅くとも期間満了6か月前までに更新拒絶の通知をし、かつ正当事由がなければ、更新拒絶は認められません。この場合、従前の契約と同一の条件で契約を更新したとみなされます。これを法定更新といいます。

Q 正当事由はどういう場合に認められるのですか。

A 正当事由は、大家さん側と借主側の、それぞれの諸事情・利用の必要性等を勘案して判断されますが、借主側の事情・必要性が重いと判断され、正当事由が否定されるケースが多いとされています。

Q 定期賃貸借契約でも、契約が更新されることはないのですか。

A 定期賃貸借契約は、そもそも更新がない契約です。ただ、大家さんと賃借人双方が合意すれば、改めて再契約をすることはでき、その場合は引き続きアパートに住み続けることはできます。しかし、大家さんが任意に合意してくれない場合、契約満了とともにアパートを立ち退かなければなりません。

Q 3年の契約期間が満了したら、大家さんが再契約に応じてくれない限り、アパートを立ち退かなければならなくなるのは困ります。今までどおり更新できる賃貸借契約を続けたいのですが、大家さんから定期賃貸借契約にするように求められたら、応じなければならないのでしょうか。

A さきほど述べたとおり、大家さんが今後は定期賃貸借契約しか結ばない、今までの契約は更新しない、といってきても、今までの契約は、遅くとも期間満了6か月前に更新拒絶を通知し、かつ正当事由がない限り、従前と同一条件で法定更新されます。ですから、定期賃貸借契約変更に応じなければならない、ということはありません。

Q 大家さんとは、あまりもめたくないのですが…。

A 定期賃貸借契約は、更新がなく、期間が満了すれば確定的に契約終了になってしまう点で、賃借人にとって大きく不利になります。その点を考慮して、従前の契約より、賃料を減額したり、契約期間を延ばすなどの利益調整をしているケースもあります。いずれにせよ、定期賃貸借契約への変更に応じるかどうかは、慎重に考えて下さい。