城北法律事務所 ニュース No.84(2021.8.1)

目次

マンション管理のご相談はいかがでしょうか

弁護士 湯山 花苗

1. マンション管理士に合格しました!

2020年度のマンション管理士試験に合格し、登録しました。出産して6週間後に試験日を迎えたため、ヘトヘトになりながらの受験でした。今思えば、よく出願したなぁ…(笑)不動産に関する紛争は弁護士の得意とする分野ですが、とりわけ東京近郊ではマンションが多くあるにもかかわらず、マンションに特化した法律相談の窓口が少ないことに疑問を感じていました。管理組合や理事会とのトラブルであったり、修繕や建替えの是非に関する区分所有者間での利害対立であったり、法的整理が複雑であるにもかかわらず弁護士がコミットできていないように思っていました。そこで、少しでもマンション管理に関するご相談にお役に立てるよう、東京弁護士会の専門部会(マンション管理法律研究部)に入って、マンション管理に関する重要判例や、最新判例の研究をしています。

2. 管理費等滞納に対する法的措置

相談は、理事会に対する不信感であったり、管理会社に対する不満であったり、区分所有者に対する迷惑行為への対処であったりと、多岐にわたります。なかでも、管理費及び修繕積立金等の滞納を続ける区分所有者への法的対応に関する相談は、債権回収という点で弁護士に相談を依頼するケースが多い分野です。管理費等の滞納が発生すると、管理に要する費用が資金不足となり、期待した管理レベルを維持することができなくなり、ひいては資産価値低下にもつながりますので、早めに動く必要があります。典型例で言えば、支払督促や管理費等請求訴訟を提起して債務名義を得て、滞納者の有する財産に対して強制執行を行う方法が考えられますが、区分所有法では、第7条で、債務者の区分所有権等及び建物に備え付けた動産の上に先取特権を有することを定めています。管理組合は、滞納管理費を被担保債権として滞納者のマンションにつき競売を申し立て、換価された売却代金から管理費を回収したり、マンションが第三者に賃貸されている場合には賃料債権に物上代位することもできます。この先取特権は、債務名義が不要である点で、債務名義に基づく強制執行に比して簡便ですが、抵当権等の担保権や租税債権には劣後することから、不動産担保競売を申し立てた場合に、無剰余取消し(民事執行法63条2項)の可能性があることは、債務名義による競売申立と同様です。この点、区分所有法第59条による区分所有権等の競売請求は無余剰取消しの適用がないのですが、管理費等の滞納が共同生活上の障害が著しいと評価できる場合にのみ認められるため、滞納期間が短かったり、滞納額が少ない場合は認められません。

3. 相談すべきか悩んだら…

このように、管理費等の滞納問題ひとつとっても、事情によってとり得る法的措置が様々です。東京弁護士会のマンション管理相談窓口で相談担当をする弁護士は、マンション管理士試験か業務管理主任者試験の合格者だけで構成されています。私も相談員の一人です。マンションに関するお悩み事がございましたら、一度は無料で相談できますので、ぜひご活用ください。